この夏、あなたは不思議なピアノに涙する〜アニメ「ピアノの森」

題名ピアノの森
監督小島正幸
原作一色まこと
出演(声)上戸彩(一ノ瀬海)、神木隆之介(雨宮修平)、宮迫博之(阿字野壮介)、福田麻由子(丸山誉子)、他。
制作日本(2007年7月21日公開)

general

さっそく公開初日に観てきた。とても良かった。「この夏、あなたは不思議なピアノに涙する」。不思議ではなかったけれど、涙しました。

音楽

音楽がすごくいい。これが聴きたくて行ったようなものなのだが、期待を上回る良さだった。音源がいいのはもちろんだが、うまく音が途切れないように聞かせる演出がよくできていたと思う。劇場の迫力ある音響設備の威力も大きい。自宅でCDを聴くのとは全然違うもの……

強いて不満があるとすれば、コンクールの場面で、その他大勢の参加者の演奏も結構うまかったこと。もうちょっと下手でないと、雨宮君や誉子の演奏を聴いて「おや?」と思わない。これは、ま、仕方ないか……

音楽室で、カイのリクエストにしたがって阿字野先生が次々にピアノを弾いてくれたのが、何だかすごく嬉しかった。腕を怪我している割には見事な演奏で(笑)。

脚本

脚本が思ったより良かった。「映画化」で恐らく成否を決めるのは、テーマをどうするか、それに沿って何を残して何を落とすか、だ。今回のテーマは、「雨宮君とカイとの友情物語」なのだろう。そのはすごくうまく描かれていた。

転校してきていきなりいじめに遭いそうになったところを助けてくれたカイ。ともにピアノを弾くことで仲良くなったり、ピアノに対する考え方が違うことで反発したり、阿字野をめぐって嫉妬したり……いろいろあるが、これまでピアノに関しては(少なくとも同年代で)自分はかなりのものだと思っていた雨宮君は、初めてすごいと思える人に出会い、親がピアニストだから仕方なく練習をやらされていたのを、初めて真剣に目的意識を持ってピアノに向かうようになる。

ラストシーンの「もし僕が君に出会っていなかったら、僕はきっと、ピアノが嫌いになっていた」のセリフがすべてを物語っている。このセリフをここに配置するのか、である。チクショー泣いちまうじゃないか。

原作を知っていると、思い入れのあるエピソードがばっさりとカットされていて、不満が残る。しかし、あれもこれも詰め込むとテーマが散漫になってしまうからこれで正解なのだ。

個人的には、阿字野の、

かつて事故でピアニスト生命と愛する女を失った時、何故ワタシは死ねなかったのかと自分自身を呪ったこともあったが……きっと……コイツを輝く世界に送り出すために生き残ったのかも知れない

という呟きは入れて欲しかったが、それを入れるとカイと阿字野の師弟物語になってしまい、テーマがぶれるから省いたんだろう。

アニメーション

アニメに関しては……多くを期待しても仕方がないと思う。カイの顔が原作とかなり違う、登場人物の顔が統一感がない(特にレイちゃんの顔がころころ変わった)、ピアノの絵が下手(カイが練習したアップライトはピアノに見えない、コンクールのグランドも鍵盤の大きさが変)など、言い出したらきりがないけど、悪いけど「あんなもん」だろう。

声優も、イメージに合う人もいれば合わない人もいる、それも致し方ないところだ。万人に納得いくキャストなんてあり得ないのだから。個人的にはカイ、キンピラ、レイちゃん、白石が全然合っていないと思った。上戸彩は、合っていないというより、正直言えばあまり巧くないと思う。しかし、人気女優を配することも営業的に必要なんだろう。

conclusion

一番残念だったのは、本日封切りだったにも関わらず、映画館がガラガラだったことだ。そりゃ、ポケモンやハリポタに人が集まるのも仕方がないし、地味な映画だとは思うが、いくらなんでもちょっと寂しいなあ。

劇中に「インバイ」という言葉は出てこない。カイが犯されるシーンもない。ちゃんと子供が見ても大丈夫なようになっている。面白そうだけど、原作を見て、子供には見せられないのでは……と躊躇している方がいたら、そんな心配はいらないから、ぜひ観に来てほしいと思う。

ピアノの森 [スタンダード・エディション] [DVD]

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