映画「容疑者Xの献身」における四色問題

性懲りもなくこの映画の話を続ける。

学生時代に湯川が石神に初めて会った時のこと。四色問題に取り組む石神に湯川が声をかけると、石神が「四色問題を知っているのか」と話しかける。

これはいささかがっかりさせられた。四色問題は1852年に提起され*1、1976年に解決を見た。解決に120年以上もかかった数学史上に名高い難問だが、問題自体は非常にわかりやすく、小学生でも理解できるために、数学者や数学マニアにとどまらず、非常に多くのアマチュアや好事家がこの問題に興味を持ち、その証明(もしくは反例探し)に奔走したことでも有名である。

はばかりながら、僕も中学生の時にこの問題に取り組んだことがある。四色で塗り分けられることを証明するのは難しそうだから、四色では塗り分けられない地図を作ってみよう、それならできるかも知れないと思ったのだ。しばらくして、国の数が数万以下の地図は既に証明されていることや、仮に四色で塗り分けられない地図があったとして、いかなる方法をもってしても塗り分けられないことは、それはそれで証明が必要であることがわかり、とても無理だと諦めたのだが。

仮にも理系の人間であれば、しかも帝都大学にくるような知的レベルの高い学生であれば、四色問題は知っていてむしろ当然である。冒頭の石神のセリフは、リアルではなかった。

ちなみに、石神が「よんしょく問題」ということにも違和感を持った。これは「ししょく問題」ではないのか?*2

それから、石神が「自首」して留置場入りとなったとき、壁や天井のしみを点に見立て、それらの点を結んで(頭の中で)地図を描き、四色問題に取り組むシーンがある。彼はもともとコンピュータは使わない主義だから、留置場の中でもこれまでと変わらず研究は続けられると……石神が考える、哀しいシーンである。

四色問題は、地図の塗り分け問題だとすると素人にもわかりやすいが、本当はグラフ問題である。というか、グラフ問題としてとらえないと話が進まない。従って地図を双対グラフに書き換えて検討を進めるはずで、石神があのような図を思い描いていたはずはない……のであるが、双対グラフだと視聴者がわからないから、敢えて地図にしたんでしょうね。

四色問題―その誕生から解決まで (1978年) (ブルーバックス)

四色問題―その誕生から解決まで (1978年) (ブルーバックス)

*1:東野圭吾の原作では、始まりが1879年となっている。確かに四色問題の研究が本格的に始まったのは1879年ではあるが、提起となれば1852年まで遡った方がいいと思う。四色問題の解決者であるアッペル・ハーケンの解説記事も、ここから始まっているそうである。

*2:ブルーバックスの「四色問題」(一松信著)を紐解いてみたところ、一松先生も「よんしょく問題」と発音されていたそうだ。なるほど。一応、正式には「ししょく」らしいが。