以前から探していたのだが、ようやく見つけたのでDVDを見た。東野圭吾の原作を広末涼子主演で映画化された「秘密」である。
題名 | 秘密 |
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監督 | 滝田洋二郎 |
原作 | 東野圭吾 |
出演 | 広末涼子(杉田藻奈美・直子)、小林薫(杉田平介)、岸本加世子(杉田直子)、大杉漣(梶川幸広、事故を起こした運転手)、金子賢(梶川文也、幸広の子)、石田ゆり子(橋本多恵子、藻奈美の担任教師)、伊藤英明(相馬春樹、藻奈美の高校の先輩)、國村隼(藤崎、被害者の家族)、斉藤暁(弁護士)、東野圭吾(大学の教師)、柴田理恵(吉本和子)、篠原ともえ(木村邦子、藻奈美の友人)、他 |
制作 | 日本(1999年9月25日公開) |
粗筋
杉田平介の妻・直子と一人娘・藻奈美が、母子二人で旅行中に事故に遭い、藻奈美は一命を取り留めるが直子は死亡。と思ったが、回復した藻奈美の意識は直子のものだった。藻奈美の身体に宿る直子は、平介と二人だけの時以外は藻奈美として振舞うことにし、奇妙な生活が始まる……
感想
シチュエーション自体が泣けてくる。映像には映像の迫力があって、夫婦はやっぱり肌の触れ合いが大事なのかなあ、などということを真剣に考えてしまう。
直子にとっては、平介以外の人の前では自分を出すことができず、自分の人格とか人生がものすごく抑圧されている。藻奈美として振る舞っている時も、過去のことは全部忘れたふりをしなければいけない。おまけに、藻奈美(の意識)を殺してしまったのは自分ではないかという罪悪感が常に付きまとう。
平介は、妻が生きていてくれたのは嬉しいが、それは藻奈美の死を認めることだし、藻奈美として見れば、それは直子を否定することになる。最初は嬉しかっただろうが、本当は、どちらかがあっさり死んでいた方が苦しみは少なかっただろう。
さて、映画化に際して……
原作の藻奈美はもっと幼かったが、これは役者が演じる限り致し方ないところ。藻奈美の結婚相手が事故を起こした運転手の息子に変わっていて驚いたが、まあ、それほど大きな問題ではないからいいや。ラスト、直子が藻奈美を演じていたんじゃないか、と原作では平介が一方的に気づくだけだが、映画では直子に確認を取り、直子も否定しない。これは異論もあろうが、これはこれでいいのではないかと思った。
5年も藻奈美として振る舞っていれば、直子の意識も藻奈美に同化していただろう。というより、直子の性格と藻奈美の肉体をもつ新しい人格が生まれていただろう。平介も、直子がいない生活を受け入れていただろうから。
ただ、平介が泣き崩れるシーンがなかったんで……本当はそこで一気に盛り上がるはずだったのにな。
それより、岸本加世子の演じる直子の性格設定は問題だったのではないだろうか。もともと岸本加世子だと、広末の母親というには少し若すぎる(映画公開時で小林薫47歳、岸本加世子37歳、広末涼子19歳。夫婦で10歳差、母子で18歳差)のに加えて、異様に子供っぽい。深夜バスの中、周りの乗客が眠っているのに藻奈美と一緒になって大声を出したり、ぬいぐるみを取り合ったり。広末が演じることを考慮しての布石なんだとしたらバカにした話だ。
そういうわけで、この映画の最大のポイントである、藻奈美役の役者が見た目は同じで直子になったり藻奈美になったりする「演じ分け」だが、平介のことを「平ちゃん」と呼ぶのか「おとうさん」と呼ぶのかの違いくらいで、率直なところ、そう大きな変化はなかった。
文庫本のあとがきで、広末が、映画の後、動作や喋り方がやたらオバサンぽくなっちゃって……と書いていたので、広末の演じる直子がどんなにオバサンぽいのか期待していたのだが、そこはやっぱり広末でした、ってところかな。
平介が直子を何度も何度も失うところが悲しく、切ないのだが、直子(の肉体)が息を引き取った瞬間に藻奈美が直子の意識で目覚めたため、第一回目の別れがなかった。それではちょっと盛り上がらない。
また、二人暮しをしている間、平介と直子(の意識)の間で、死んだ者(つまり、直子の肉体と藻奈美の意識)に対する追悼や哀惜の念を表明する場面が全くなかった。生きている人間もつらいだろうが、死んだ人間はもっと無念なはず。それがなかったため、平介と直子の生活は単なるコメディになってしまったし、藻奈美の意識が戻ってきた時も唐突に感じた。
ついでに、高校時代の藻奈美の級友として篠原ともえが出てきたが、彼女もこの時点で20歳。あまり高校生らしく見えなかった。
まあ、広末ありきの映画だったのかも知れないが、キャスティングに関しては一考の余地があったと思う。ヒロインは美人じゃなくていいから、演技派の女優にやってほしかったなあ。
「容疑者Xの献身」で東野ブームが巻き起こっている現在、本作をリメイクしてみてはどうだろう。平介役は堤真一さんにやってもらいたい。もちろん、最後は派手に泣き崩れてほしい。
配役
東野氏はセリフもあったが板についていた。もっとちゃんとした役をやらせてみても面白いのではないだろうか。
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