NHK版と比較検証のつもりで、映画版を再度視聴。
- まあ、なんだかんだいってよくできている。昨年公開された邦画としてはトップクラスの出来だろう。お薦めである。
- 初めて映画を見た時は特に違和感を持たなかったが、その後原作を読み、先日NHK版を見た上で改めて映画を見ると、望月のエピソードが省かれていることがストーリーに微妙な歪みを生じさせているように思う。
- ひとつは、悠木の部下だった望月亮太が事故で死んだ時に、悠木のせいではないと言ったのが佐山で、それで悠木と佐山の関係がまず示され、記者雑感を落とした事件はその上に成り立っていること。これがないと、翌日の佐山の記事がトップから二面に下げられて等々力(遠藤憲一)を怒鳴りつける悠木(堤真一)に佐山(堺雅人)が「悠さん、もうやめましょう」と止めに入るのもわかりにくい。
- もうひとつ、後半、望月彩子の投書を紙面に載せたことで左遷されたこと。映画では事故原因の後追い記事をトップにしたことが社長(山崎努)の怒りを買ったとされるが、それはクビを賭けるほどのものなのか。悠木にしてみれば、部下の手柄を握りつぶしてしまったことに対する責任を取るつもりだったのかも知れないけど。
- しかし、辞表を叩きつけた悠木に社長がオロオロして、辞めろとは言っていない、反省すればすぐに本社にも戻してやる……などとすがりつく姿は痛快だし、その悠木を追いかけた佐山がスクープ写真を見せ、「明日の一面で使ってください」という場面はカッコいい。これは望月のエピソードを省いたことによって生まれたものだ。これはこれでよかったのではないか。
- 劇場で見た時も思ったが、「大久保・連赤」をはじめ、独特の業界用語、社内用語が説明抜きで(しかも早口で)飛び交うため、話がわかりにくい。それに、堤真一、堺雅人とも案外滑舌が悪く、はっきり聞こえないことが多々ある。このあたりはもう少しわかりやすくする工夫がほしかった。二回見させるための(あるいはDVDを買わせるための)作戦だと言ってしまえば、それまでだが。
- 映画では悠木の妻が出てこない(一度だけ、喧嘩をする場面でシルエットが映った)。どうも離婚したと思われるが、理由がはっきりしない。息子の純が幼いうちは何度か会っていたものの、だんだんこじれたのは別れた妻が子供を連れてスイスへ引っ越したせいばかりではないようだが、はっきりとは描かれない。そのくせ、安西の息子・燐太郎(小澤征悦)とは付き合っている。燐太郎との登山の場面をあれほど執拗に描くなら、その背景説明もほしかった。
- とはいえ、登山の場面の迫力は映画ならではといえる。いったいどうやって撮影したんだろう?
- 本作における「クライマーズ・ハイ」の意味が、やはりわからなかった。
過去記事
- クライマーズ・ハイ(2008/07/12)
- テレビドラマのクライマーズ・ハイ(2009/04/06)