2005年11月13日放映、TRICK初のテレビスペシャル版。連続ドラマTRICK3の最終話の放映が2003年12月だから、約2年ぶりの新作ということになる。テレビドラマ版は2回で1話構成だが、どれも間延びする部分が多々あり、凝縮して1回1話で良いのではないかとたびたび思ったが、これは冗長さを感じさせる部分はなく、最後まで面白く見られた。名取裕子の演技力かと思う。
出演(ゲスト)
雑感
ストーリーとしては、別段、いつもとさして変わりはない。緑川祥子という占い師のインチキを暴こうと、福澤慶、新島同志、大隈早大、そして上田次郎という学者が乗りこんで行くが、福澤、新島、大隈は死んで(殺されて)しまう。実は10年前にこの3人は祥子の父親を殺害してその業績を盗み、自分たちの業績として学会発表していた。その恨みを晴らすために大芝居を仕組んでこの3人を殺すことにしたのだった。山田奈緒子にそのトリックを暴かれると、それを認め、自ら命を絶つ。
冒頭で、緑川祥子を紹介するTV番組は、いわば劇中劇なのだが、司会にテリー伊藤を起用したことで本物のバラエティらしさがよく出ており、そこだけ雰囲気が変わって楽しめた。奈緒子の決め台詞は「おまえのやったことはすべてエブリシングお見通しだ!」と新しいパターンが出た。
本編とは関係ないが……。
奈緒子の母親(里見)が始めた新しい(怪しげな)商売は、生まれてくる子どもの性を決めるというもので、男の子がほしい夫婦には男の子の札を、女の子がほしい夫婦には女の子の札を一枚一万円で売る。必ず当たるが万が一外れたら15,000円を払い戻すという。これが当たって大儲け、というものだった。上田が喝破したところでは、男女が生まれる比率はほぼ同じ、つまり50%。当たれば1万円もらい、外れたら5000円払うのなら、数をこなせば利益がでるのは当たり前。当たれば里見のおかげだと感謝して口コミで評判が広がるし、外れてもお札のお金を返してくれるだけでなく、5000円上乗せしてくれるなんて、良心的だと、悪くいう人はいない。結果、いい評判だけが広まる……
それはどうだろうな、と思う。生まれてくる子どもの男女の産み分けはいまだ決定的なものはないが、だからこそ「神頼み」までして「男の子が(女の子が)ほしい」という人は切実な思いがあるはず。どちらでもいい、という人はお札に一万円も払ったりしないと思うのだ。5000円戻ってこようがそんなお金はどうでもよく、「山田先生が大丈夫だといったのに、できなかった! あの人に神通力なんかない!」という思いは、留めておけないのではないか。一応山田の書には霊験が宿るということになっており、彼女が看板書きやらなんやらで高いお金が取れるのもすべてはそれがあるから。霊験がない、ということになればおまんまの食い上げになってしまうから、五分五分どころか、七分三分で誘導できても(もしそれが可能ならすごいことなのだが)、ダメだった時の恨みの大きさを考えると、それでもリスクは高いと思う。ま、真面目に追求することではないか。