立て、立つんだジョー「あしたのジョー」

これは観たかった。観られて良かった。

題名あしたのジョー
監督曽利文彦
脚本篠崎絵里子
原作高森朝雄ちばてつや
出演山下智久矢吹丈)、伊勢谷友介力石徹)、香里奈白木葉子)、香川照之丹下段平)、勝矢(マンモス西)、虎牙光揮ウルフ金串)、津川雅彦(白木幹之介)、モロ師岡(食堂の親父)、西田尚美(食堂の女将)、杉本哲太(安藤洋司、ヤクザ)、倍賞美津子(花村マリ)、他
公式サイト映画『あしたのジョー』公式サイト
制作日本(2011年2月11日公開)
劇場新百合ヶ丘ワーナー・マイカル・シネマズ

雑感

なにしろあの歴史的名作の実写映画化である。誰がどんな風に作ったところで、どこからか文句を言われるに決まっているのである。そういう難しいものに取り組んだ関係者には称賛の意を表したい。

当然、僕に言いたいことは山ほどある。が、「自分が100%満足することはあり得ない」前提で考えれば、それなりに面白かった方である。「あれこれ文句を言うのも楽しみのうち」と考えれば、十分なレベルだったと言える。*1

話がダイジェストのようにどんどん流れていくが、観ている人はみんなストーリーを知っていて、さわりの部分だけを観たいのだから、これでいいんだろうな。原作をよく知らない若い人がついてこられたかどうかは疑問だが。

山下、伊勢谷両氏のあの肉体は素晴らしかった。特に伊勢谷の減量後の肉体はすさまじく、これだけで映画を観た価値があった。あの肉体は、CGではなくリアルなものだそうである。力石(役の伊勢谷)は、漫画の中だけでなく、本当にああいう減量をしたのだ。

試合風景はまあまあリアルっぽかったが、クロスカウンターを決める瞬間だけはスローになって漫画的な動作になるのがおかしかった。本当の試合のように一瞬で決めてしまえばよかったのに、と思う。それでは何が起きたのかわからないが、どうせ観る人は何が起きるのかちゃんと分かっているんだから。

段平のおっちゃんの顔は、漫画では違和感はないが、あれはあくまで漫画なのだとしみじみ実感。今回の香川照之のメイクはまさに漫画の段平にそっくりなのだが、それは実写映画の中で非常に浮いていた。

ドヤの子どもたちは、原作ではそれぞれ愛嬌があって可愛いが、それはちばてつやの筆力なのだと改めて感じた。映画では確かに昭和40年代の貧しい子どもたち風で、その点はよく嵌まっていたのだが、全然かわいくない。汚くて、痩せていて、かわいいわけがないのだ。

話を短くまとめるためにあちこち原作に手を入れているのはいいとして、白木葉子がドヤの出身で、そのためにドヤを嫌い、ドヤを失くして一帯を一大スポーツセンターにする、というのは荒唐無稽過ぎる。改変した意味が不明だが、まあ、誰もそんなところには目を留めていなかっただろう。

力石を世界ランカー、力石と対戦前の丈を日本ランカーにしたのは良い改変。原作を読んだ時の違和感のひとつが、対戦当時の彼らのランクの低さにある。今と違って娯楽の少ない時代だった、ボクシングに人気があったとはいえ、全日本ランキングにも名のない、8回戦にあがったばかりの若者同士の対決が、どうして世間であんなに注目されたのか不思議だったのだ。

キャストは、誰が演じても難しいだろうが、個人的には伊勢谷友介がよく力石を演じていた。津川雅彦は演じなくても白木幹之介そのもの。山下智久も、香川照之も、勝矢も悪くなかったが、香里奈だけは残念だった。当初はうまい配役だと思ったのだが、実際に映画をみてがっかり。上品さとか高貴さといったものが感じられない、単なる「ちょっと美人な今風のおねーちゃん」だったからだ。「ガリレオ」のエピソードゼロでは、もう少しお嬢さま風だったのだが……

あしたのジョー プレミアム・エディション(2枚組) [DVD]

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過去記事

リンク

*1:以前、デビルマンの実写映画を観た時は、「誰が観たって満足することはあり得ない」「文句を言う気力も起きない」というヒドイ代物だった。