こんな怖かったのは初めて「アポロ18」

アポロは実際には月に行っておらず、ハリウッドの片隅で撮影されたものだなどという「NASA陰謀論」は昔からあって、これもその一環かと思った。確かにそういう側面もあったが、もっとシンプルなホラー映画だった。とにかく怖かった。観終わって家に帰って来てからも、まだ心臓がバクバクしていた。今もこの記事を書くために公式サイトを観直していたら、またあの「怖さ」が脳裏に蘇ってきた。映画を観てこんな怖い思いをしたのは、初めてなのではないだろうか?

題名アポロ18(原題:Apollo 18)
監督ゴンサロ・ロペス=ギャレゴ
脚本ブライアン・ミラー
出演ウォーレン・クリスティー(ベンジャミン・アンダーソン、着陸操縦士)、ロイド・オーウェン(ネイサン・ウォーカー、隊長)、ライアン・ロビンス(ジョン・グレイ、司令船操縦士)、他
公式サイト2012年4月14日(土) 渋谷TOEI他 ロードショー 映画『アポロ18』公式サイト
制作USA(2012年4月14日公開)
劇場渋谷TOEI

背景

人類が月に着陸したのは、今のところ、アポロ11号、12号、14号、15号、16号、17号の6回のみ。ソ連アメリカと激しく宇宙開発競争をしていたが、月へ有人宇宙船を送ることはなかった。もちろん月以外の天体に行ったことはないので、地球外天体への有人の到達自体がこの6回だけということになる。アポロ17号は1972年のこと。以来40年も月に行かなくなったのはなぜか? アポロ計画自体も20号まで予定されていたのに18〜20号は中止になっている。理由は予算削減のためといわれるが、ではなぜ予算がカットされたのか?

粗筋

最近、ネットの片隅から、何十年もNASAが隠蔽してきた、月面探査の映像が見つかった。それを無修正・無編集で公開する……といって始まる映像は以下のようなものだった。表向き中止とされていたアポロ18号は、実は国防総省ペンタゴン)主導で実行されていたが、それは完全な極秘とされ、乗務員(ネイサン、ベン、ジョン)らは家族にも伝えられず、研修で日本へ行くという名目で地球を離れることになる。当然、テレビ中継もなし。

離着陸などは難なく行なわれるが、月面で活動中、足跡らしきものを発見する。驚いて調査すると、ソ連製の宇宙船の残骸と大量の血、人間の死体を発見する。全く知らされていなかったがソ連も月に到達していたらしい。しかし何かのトラブルが起きて悲惨な結果となったのだ……。アポロ18にも不可解なことが起きる。足跡は人間以外のものもあるように見えるし、真夜中のノイズ、しまっておいたはずの石が床に転がっていたり、屋外に設置したはずの機材が転倒していたり、国旗が壊されていたり……。何かがいる!?

感想

月には人類に災厄をもたらすかも知れない凶悪な生命体がいる(らしい)、ということをペンタゴンは知っていたが、宇宙飛行士にはそのことを一切知らせず、被害に遭って取り憑かれたと判断するや、帰還を放棄させるといった態度も恐ろしいと思うが、そうした部分より、確かに誰もいないはずの、いては困るはずの場所に、だれか……いる? と思わせる演出が巧みで、最高に恐ろしかった。

また、問題の生命体を一度もちゃんと映さず、影のようなもののままにしておいたこともうまかったと思う。

ソ連も月へ宇宙船を飛ばしていたことを、ペンタゴンの一部の人間だけが知っていて一般には知らされていなかった、というのはわかるとしても、NASAの知らない月の「真実」とやらをペンタゴンが知っているのは不自然だし、NASAの誰かが知っていたとしたら、それが宇宙飛行士に伝わらないのも不思議である。

たとえ人類に災いを招きかねないとしても、月に高等生物がいたとなれば、そのニュースは世界中に受け入れられるに相違なく、隠蔽する意図が不明だし、そもそも、アポロ18は何をしに月に行ったのか。まあ全体的に粗の多い作品ではある。しかし、そうした粗を凌駕するものがあった。

いかにも月面ぽい雰囲気、いかにもドキュメンタリっぽい質の悪い映像など、そうした点は割と細かくよくできていた。87分とあっさりした作りになっているのもいい効果を出していた。

死期の迫ったことを悟ったベンが、音楽を聴くために持ってきたレコーダーに間違って子供の声が録音されているのを発見し、その子の「Daddy, I love you」の部分を何度も何度も何度も何度も何度も繰り返し聴くシーンが切ない。