確かに怖い。「鳥」

「午前十時の映画祭」。映画館で観られてしあわせ。

題名鳥(原題:The Birds)
原作ダフネ・デュ・モーリア
監督アルフレッド・ヒッチコック
出演ティッピ・ヘドレン(メラニー・ダニエルズ、新聞社の社主の娘)、ロッド・テイラー(ミッチ・ブレナー、弁護士)、ジェシカ・タンディ(リディア・ブレナー、ミッチの母)、ヴェロニカ・カートライト(キャシー・ブレナー、ミッチの妹)、スザンヌ・プレシェット(アニー・ヘイワース、小学校の教師)、他
制作USA(1963年7月20日公開)
劇場立川シネマシティ

粗筋

鳥の専門店でミッチにやり込められたことで興味を抱いたメラニーは、ミッチが欲しがっていたラブ・バード(インコ)を入手すると彼の家にプレゼントとして届けようとする。が、週末はボデガ湾に行っていて不在と知り、自動車を飛ばしてボデガ湾の家まで訪ねてしまう。

こちらにくるついでがあったからと言い張るメラニーをミッチは引きとめて食事に招待し、帰れなくなったメラニーはミッチの妹・キャシーの担任であるアニーの家に泊めてもらう。翌日はキャシーの誕生日で、パーティーに招待されて出席するが……

ボデガ湾のミッチの家にラブ・バードを届けて帰ろうとしたところを、一羽のカモメに襲われて頭を怪我。これは軽傷だったが、夕食に招待されてミッチの家に行くと、煙突から大量の雀が家の中に入ってきて暴れまわる、という事件に遭遇。煙突から雀が家の中に入ってくるのは明らかに異常だが、この時も雀は明確に人間を襲ったわけではなく、ミッチ、メラニー、キャシー、リディア(ミッチの母)らはとりあえず無事。

翌日、誕生日の屋外パーティーでカラスの群れが襲ってくる。餌が目的か、パーティーを邪魔するのが目的か。慌てて屋内に避難したものの、巻き込まれて子供が怪我。

リディアは、ダンにもらった餌を鶏が食べなくなったことを問い質そうと、ダンの家を訪問。すると部屋には目玉を抉られ、血まみれの男の死体があり、鳥の死骸もあった。警察は強盗殺人事件と見て捜査を開始するが、自分が二度も鳥に襲われたリディアは、もちろん鳥の仕業だと考え、怯えて寝込む。

キャシーのことが心配で小学校まで様子を見に行ったメラニーは、校庭に異様な数の鳥が集まっている様子を見て愕然とし、授業中にも関わらず中に入って行き、アニーに危機を訴える。メラニーの言うこと受け入れたアニーは授業を打ち切り、避難訓練と称して全員を早退させるが、途中で子供が襲われ怪我をする。

メラニードライブインに立ち寄って新聞社の社長である父親に電話して事情を訴えるが、なかなか事態を信じてもらえない。ドライブインの客にも笑われる始末だが、そうしている間に鳥が集まってきて、向いのガソリンスタンドの店員を襲い、ドライブインも襲ってくる。窓を閉めても窓ガラスを割って強行突破してくるのだ。このあたりから、鳥は明らかに人間を狙い始める。アニーも鳥に襲われて死亡。

ミッチ、メラニー、キャシー、リディアはミッチの家に避難し、窓ガラスに板を打ち付け、ドアの前に家具を並べるなどして対策を講じるが、大量の鳥の攻撃を防ぎきれず、メラニーが全身に大けがを負う。このままでは命に関わると判断したミッチは、決死の覚悟で家を出て自動車に乗り、サンフランシスコへ向かう……

感想

これが「鳥」だったかー、ついに見たよ、というのがまず第一声。映画に詳しくない(特に古典に疎い)自分でも、さすがにヒッチコックの「鳥」、という作品の存在は知っていて、鳥がたくさん出てきて怖い話だ、という程度の予備知識はあった。

確かに鳥の数がどんどん増えて行くのは不気味だし、なぜ人間を襲うようになるのかの理由が最後まで明かされず、対抗策も見つからず一方的にやられるだけ、というのも怖さに拍車をかけるが、しかし、本当の怖さは鳥ではない、と思う。鳥だけではない、と言った方が正確か。

コーヒーショップでミッチとメラニーが話をしていると、とつぜんリディアがそこへやってきて、この方どなた? と言うのが怖い。こんな怖いオバサンがいるか? 仕事の相手だったら失礼だし、もしデートだったら……余計に母親が出て行ってはいけない場面だろう。

アニーはかつてミッチと付き合っていたことがあるが、リディアとうまくいかず別れたという。まあこんな姑とうまくやっていけるとはとても思えないが、それでもミッチが好きだから近所に住んでいる、というのも結構怖い話だ。アニーの気持ちを知っていながら、この状態を平気で受け入れているミッチも、相当に恐い。

怖いといえば、キャシーの年齢がヘンである。作中では年齢は明確に語られていなかったと思うが、役者の年齢でいうと、1962年の時点でロッド・テイラー32歳、ヴェロニカ・カートライトは13歳、ジェシカ・タンディは53歳。40歳で第二子を産んでも、兄弟の年齢差が19年あっても悪いとは言わないが、明らかに不自然だろう。もしかして、キャシーはミッチの妹なのではなく、アニーとの間に成した娘ではないのだろうか? アニーを嫁として認めなかったリディアが、孫ではなく自分が産んだ子として育てるというのはあり得ない話ではない。だからアニーはそばを離れられないし、その状態をミッチもリディアも受け入れるしかないのではないか……

その他、町の人たちがメラニーに対し、「お前がこの町に来てから異変が起きた。お前のせいだ!」と罵倒を浴びせるのも怖い。田舎町にはありがちな話だが、自ら傷つきながらも子供たちを守るために奮闘しているというのに。

ガソリンスタンドが爆発し、恐らく何人も死んだと思われるが、あれも悪いのは、ガソリンスタンドに乗りつけてきて、自動車から降りる時に煙草を吸い出し、かつ、マッチをポンとその辺りに捨てた奴である。鳥が襲ったためにガソリンが流れてきていて、それに火がついたのだけど、そもそもガソリンは気化しやすい。ガソリンスタンドなんかで煙草を吸うとか、ましてマッチのポイ捨てなんぞ鳥がいなくたって自殺行為である。こういうのも怖い話だ。

とにかく、怖さの要素が輻輳していて単純ではないから、観終わったあとで思い返してもぞっとする話に仕上がったのだろう。

古い作品とはいっても「レベッカ」の23年あと。カラーフィルムだし、電話も記憶にある黒電話で、「レベッカ」や「サンセット大通り」よりずっとあとの時代であることを意識する。しかし、ファッションに関してはやはり違う。ティッピ・ヘドレンは若くてきれいだけど、「オバサン」に見えてしまう。