窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

さよなら銀座シネパトス「インターミッション」

銀座シネパトスが今月末で閉館だそうだ。それで、ちょっと無理して「インターミッション」を観にいくことにした。

樋口尚文氏の初監督作品である。初とは意外だった。樋口氏はよく銀座シネパトスでトークショーなどを行なっており何度かお顔を拝見している。しかしそれは映画評論家としてであって、監督はこれが初めてなのだった。

題名インターミッション
監督樋口尚文
出演秋吉久美子(支配人)、染谷将太(クミコの夫、画家)、佐伯日菜子(モギリのおねえさん)、奥野瑛太(映写技師)、大野しげひさひし美ゆり子畑中葉子小山明子夏樹陽子(アキコの元付き人)、玄里(ヒョンリ、小料理「三原」の店員)、竹中直人(映画監督、代表作は「笑う原爆」)、大島葉子(ハコ)、大瀬康一、古谷敏利重剛(鉄砲玉)、寺島咲(盲目)、佐野史郎勝野雅奈恵(幽霊)、与座重理久(エリク、売れない俳優)、水野久美(被曝者)、杉野希妃(キキ、クミの孫)、香川京子上野なつひ(エイタの恋人)、小野寺グレン光(ナツヒの新しい恋人)、中丸新将(パパ)、中丸シオン(パパの娘)、森下悠里(パパの恋人)、森下くるみ中川安奈(重病患者)、森脇麦、岡山天音(ムギの友人)、水原ゆう紀(占い師)、樋口真嗣(ヒグ・ボマー)、他
公式サイト奇跡の映画 インターミッション | 2013年2月23日ロードショー
制作日本(2013年2月23日公開)
劇場銀座シネパトス

内容紹介

閉館となる銀座シネパトスを舞台にして、上映時間の間の休憩時間(インターミッション)に来場した客がお喋りした内容をつなぎ合わせたもの。

雑感

このような作品のよしあしを論じても始まらない。映画館を舞台にした作品で、当の映画館の客席に座ってそれを眺めている臨場感は、恐らく人生で一度きりの体験であろう。

この映画館の存在を知ったのは、映画といえばシネコンに行くことしか頭になかった2009年の秋、「ひし美ゆり子列伝」と称してひし美さんが若き日に出演した映画作品のうちのいくつかを上映する、というニュースに接した時だ。年末の忙しい時に、5日ごとに新しい作品がかかるとあっては、全部を観に行くことは叶わなかったが、「鏡の中の野心」「忘八武士道」「新仁義なき戦い 組長の首」を観ることができたのは僥倖だった。同時に銀座シネパトスという名画座の存在を知り、以後、通うことになる。

クミコの使っていた電卓が、会社で僕が使っているのと同じものだったので、親近感を覚えた。

その他大勢の役者のクレジットの中に「おおひなたごう」の名があった。週刊モーニングで「ラティーノ」という異色面白漫画を掲載している漫画家……と同一人物だと思うのだが、真相はいかに。

映画でクミコとショータの年齢は明らかにはされていないが、演じている役者と同じと仮定すると、58歳と20歳で38歳離れていることになる。その二人が睦み合う場面は一種のギャグで、そうした面白さを狙って意図的にこうした役割設定にしたのだろうが、実は秋吉さんの実の夫は26歳年下であることを今回初めて知った(小野寺グレン光氏、これが映画初出演)。秋吉さんにとっては年の離れた夫というのは作中の話だけではなく、現実でもあるのだった。

トークショー

終了後に奥野瑛太氏と樋口尚文氏のトークショーがあった。写真撮影可、SNSなどでどんどん宣伝してくださいとのことで、写真を撮り、twitterに流す。

瑛太さんの発言で印象に残っているのは、「撮影技師の役を一度やってみたかった。映画館へ足を運ぶ人が減っているという話もあるが、映画館で働いている人にも生活があるし、お客さんが入らなければ僕らも困るし、……だから映画館のスタッフ役をやってみたかったんで、今回は本当に嬉しい」。嬉しいと思って役を演じている人を見ているのは楽しい。

樋口監督の話はいくつか。

  • なくなる前に、銀座シネパトスを映像に残そう! という思いで作った映画。
  • 銀座シネパトスは、地下鉄が通ると揺れるんですよね。こんな映画館は他にない。
  • 今回は無理してDVDも早々に販売にこぎつけ、売店で買えるようになっています。映画を観た人に記念に買っていただく。家に帰ってDVDを見ると、劇場で観るのとの差がはっきりすると思うんですね。それで、もう一回劇場で観たくなって足を運んでくれたらいいな、と……。(普通は、DVDがリリースされたら劇場へ行く人は減ると考える。この逆の発想は面白い。でも確かに、DVDをレンタルして見て、ああこれは劇場で観たい! と思うことはある)


こうして見ると奥野瑛太さんはまさに技師にしか見えない。右は本物の映写技師さん。

残りわずかな日数だが、これを目にした方、間に合えばぜひ一度足を運ぶことをお薦めする。

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