窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

中年のラブストーリー「愛さえあれば」

題名愛さえあれば(原題:Den skaldede frisor、Love is all you need)
監督スサンネ・ビア
出演モリー・ブリキスト・エゲリンド(アストリッド、新婦)、セバスチャン・イェセン(パトリック、新郎)、トリーネ・ディアホルム(イーダ、新婦の母)、キム・ボドニア(ライフ、新婦の父)、ピアース・ブロスナン(フィリップ、新郎の父)、パプリカ・スティーン(ベネディクテ、新郎の叔母)、他
公式サイト映画『愛さえあれば』公式サイト
制作デンマーク(2013年5月17日日本公開)
劇場TOHOシネマズ シャンテ

粗筋

イーダはつらい乳癌の治療を終え、自分もつらいが夫が支えてくれていると信じて帰宅すると、なんと夫は若い女と情事の真っ最中。病院に行っている最中に自宅でコトを行なう非常識さ、現場を目撃したショックで混乱するイーダに、ライフは謝罪するどころか、病気になって君もつらかったろうが俺もつらかったんだなどと開き直る始末。

翌週はイタリアのソレントで娘の結婚式があるため、自分たちの問題で娘に迷惑をかけてはいけないと、ライフに対する不満を封印してイタリアに向かうが、両親が一緒ではなく別行動であることを当然周囲は訝しむ。さらにライフは愛人を同行し、この愛人は「ライフの婚約者です」と自己紹介する始末。アストリッドは「離婚するなんて聞いてない!」と取り乱すが、イーダも離婚は初耳であった。

フィリップは妻を亡くしてから仕事一筋に生きており、息子の結婚式だというのに、飛行機に乗る前も、降りてからも携帯電話が鳴りやまないワーカホリックである。また電話の内容は部下をこき使う猛烈上司であることも窺える。この伏線はのちに(予想通りの方向で)回収される。

携帯電話がひっきりなしといっても、「おとなのけんか」におけるアラン・カウワンに比べると、単に妥協しない人という程度で、非人間的な印象は受けない。部下からは慕われているだろうなと納得できる点は大いに異なる。物語の主旨からすれば、もう少し非人間的であっても良かったのかも知れないが……

人非人のライフは、娘からは文句を言われ、息子から殴られ、俺の立場がないとふてくされる。

フィリップの義妹であるベネディクテは、喋り出すと止まらず、人の気持ちなど斟酌していられないだけの人かと思ったが、娘に対し「あなたのおかげで私はパーティーを楽しめない」と不満をぶつけたり、亡き姉の夫であるフィリップに色目を使ったりと、これまた人非人ぶりをさらけ出す。

若いアストリッドとパトリックは、ソレントに家族を呼んで手作りの結婚式で門出を祝うはずだったが、どうも歯車が噛み合わない。表面上は仲良く凄し、アストリッドが別の男とダンスを踊るとパトリックは猛烈に焼き餅を焼いたりするのだが、自分はアストリッドの身体に触れようとしない。そしてついに結婚式当日、結婚は取りやめる旨の報告をする。

ちなみにこの時ライフの若い愛人は、「この後の予定は? パーティーはどうなるの?」と呑気に質問するなど、人非人ぶりが炸裂。

このイタリア滞在中にフィリップはある決意をするのだった……

雑感

それぞれに心に傷を抱える、ある意味で人非人な人たちが一堂に会して起きる珍騒動に焦点を絞った方が面白かったのではないかという気がする。実際、それがメインだったのだろうけど、一応表向きはイーダとフィリップの大人のラブストーリーだ。

妻を亡くしたフィリップと夫に虐げられるイーダが惹かれ合うのはある意味わかるが、結婚となると簡単にはいかない。イーダはいともあっさりフィリップの元に駆け付けるが、病気はどうなった?(何かあった時にすぐに病院に行かれるところに住んでいなくていいのか?)美容師の仕事は? 財産は? 若い人は何も考えず、二人の明日に飛び込んでいくことができるかも知れないが、中年はそうはいかないのだ。そこを描かないと大人のラブストーリーにはならないのだが。

あれほど鬼畜な行為をしたライフが、花束を用意してイーダに謝罪し、彼女とは別れた、もう一度やり直したいと言い寄るのは、虫のいい話だが、理由が不明。家族から嫌われているライフの姿を見て、愛人に愛想をつかされたか?

アストリッドとパトリックが破綻した理由も不明。結婚を控えた若い二人が一緒に寝ているのに、アストリッドの肌に触れようとしないパトリックの様子は確かに当初から描かれていたが……単なるマリッジブルーでは説明がつかない。ゲイに目覚めた、ということなのか? 

配役

  • ピアース・ブロスナンは見覚えがあると思ったら、「マンマ・ミーア」に登場していた。
  • ライフの愛人役については公式サイトには記載なし。

英語タイトル

本当の原題はデンマーク語なんだろうが、「Love is all you need」も英語タイトルとして使われているのだろう。これはビートルズの「All you need is love(愛こそはすべて)」のbe同士の前後を入れ替えた文章。多分このもじりは意図的なのだろうと思う。

今日の英語

  1. What do you do for living?(仕事は何を?)

フィリップのイーダへの質問。結果的にイーダは「美容師」と答えるが、この質問は必ずしも仕事のことだけを訊いているわけじゃない?