粗筋
ついに籠城戦が始まった。田中土佐、神保内蔵助は自刃。西郷頼母の家族も自刃。出撃した白虎隊も全員自刃。これまで何ヶ月もかけて付き合ってきた主要な会津の人間が大勢死んだ。
八重は「おなごに何ができる!」と騒ぐ男たちを説得し、場内で鉄砲隊を率いて新政府軍を迎撃。大将である大山弥助の足を射抜く! 年寄と子供しかおらず簡単に落ちると思った城の意外な抵抗に合い、戸惑う……
竹子(死のうとする雪に)「死ぬのは1人なりとも敵を倒してからにしなさいませ! 修理様の仇、討たなくてもよいのですか!」
千恵「会津は罪もないのに罰を受け、無念を呑み込んで、敵に恭順した。それでもまだ足りなくて、敵は会津を滅ぼしに来た。そんな非道な力には死んでも屈しねえ。このこと、命を捨てて示すのが西郷家の役目だ」
八重「今、この時にそった昔ながらの考えでなじょしますか。これは男だけの戦いではねえなし。都から傷だらけになって帰って来た皆様を見だ時から、帰って来なかった家族を待ち続けたあの時から、男も女子もねえ。これは会津すべての戦いだ。私を戦に加えっせ! 私の腕はお役に立つ! それを使わねえなら、戦いを放棄したと同じ事! 私は山本覚馬の妹だ。鉄砲の事なら誰にも負げねえ。敵にお城は渡さぬ! 仲間がやられるの、黙って見るつもりはねえ! 私達の大事な故郷・会津はこの手で守る!」
感想
神回との評判が高い。ひとつの山場を迎えていることは間違いないし、脚本がうまくできていうことも否定するつもりはない。しかしいくつか不満な点もあって、「神」回とは言わないでおく。
神保内蔵助や佐川官兵衛らを向こうに回して放った八重のセリフには心を打たれた、八重かっこイイーという声もあるのだが、父親にすら反対されたのだから、城に勝手に行けば重臣たちから猛反対されるか無視されるのは当然のこと。一人でも立ち向かうつもりだったのかも知れないが、武器弾薬も兵糧もなく一人で鉄砲を撃ったところでさしたる効果がないことはわかりきっている。こうなる前に根回しをしておくべきだった。
会社の売上げが厳しく、役員の首が飛ぶか飛ばないかというくらい切迫した状態でもなお、有能な女子社員を有効に活用しようとしない会社なんて今でもザラにある。こうした時の男たちの気持ちは、どうせ女なんか使い物にならない、と本心から思っている人もいるかも知れないけど、一方で本当は有能なのがわかっていて、彼女らに活躍されると立場がない、と本気で心配する人もいて、むしろこういう人の方が多いと思う。
だから、上記でも引用した八重の演説は、真実ではあるのだが、説得という意味では効果があったかどうか疑問に感じてしまうのである。勇猛で知られる佐川官兵衛が、年端もいかない女の子に、面と向かって「鉄砲の腕は私の方が上だ!」と言われたら、じゃあ任せようとは言えないのではないか。
川崎尚之助が「やっぱり来ましたね」と八重に声をかけるシーンがある。さすが尚之助さまはわかってる……とこれもまた賞賛の声が高いが、やっぱりじゃないだろう、と僕は思ったのである。八重の腕を一番知るのは尚之助であり、しかも藩士としてしかるべき人と話ができる立場なんだから、彼が八重を兵として使うべきだ、鉄砲隊を率いるのには彼女が最適だと話を通しておけばよかったのにと思う。それを、権八にダメだと言われた時も何も言わず、八重が自力で城に上がってきたら「やっぱり」とはちょっと……
でも、もしかして今の八重が、覚馬の妹であり三郎の姉であることばかり強調して、尚之助の妻であることを忘れているようだから拗ねているのかと思ったのだが、再びラブラブなところを見られそうで、その点はよかった。
会津戦争の結末は知っているので、八重にはぜひゴルゴ13並みの活躍を期待したい。せめてそのくらい、留飲を下げる場面がないとね。
リンク
- 第26話 八重、決選のとき(すだち記録帳、2013/06/30)
- 『八重の桜』 第26話「八重、決選のとき」(moonshine、2013/07/01)
- 八重の桜 第26話 「八重、決選のとき」(渡る世間は愚痴ばかり、2013/06/17)