つまらなくはないけど、衝撃作というほどでもないかな。
題名 | 共喰い |
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監督 | 青山真治 |
原作 | 田中慎弥 |
出演 | 菅田将暉(遠馬)、木下美咲(千種、遠馬の彼女)、光石研(円、遠馬の父)、田中裕子(仁子、遠馬の母)、篠原友希子(琴子、円の内縁の妻)、他 |
公式サイト | 映画『共喰い』オフィシャルサイト |
制作 | 日本(2013年9月7日公開) |
劇場 | 名古屋ミッドランドスクエア |
内容紹介
仁子(じんこ)は空襲の被害に遭って左腕を失い、不自由な手で魚屋を営んでいる。結婚などは縁がないと思っていたが、年下の円(まどか)と知り合い、連れ添うことになった。円は気立ては良く、女に不自由しないタイプで、仕事もそれなりにしたが、性欲も強く、セックスの時に女を殴りつけずにはいられない性分だった。それも顔にあざができるまでひたすら殴る……そうしないと快感が得られないらしい。
遠馬(とおま)を身ごもった時は優しく、決して殴ったりしなかったため、性癖が治まったかにみえたが、出産した途端に再び暴力が始まった。仁子は二人目を身ごもっていたが、家を出る決心をし、以後、魚屋で一人暮らしを続ける。
年頃になった遠馬に彼女ができる。ひたすら彼女との性行為に溺れる遠馬は、父親を激しく嫌悪していたが、一方で、父親の血を引く自分がいつか彼女に暴力をふるうことを恐れていた。ある時、激高した遠馬は千種(ちぐさ)に手をあげてしまう……
雑感
まあ、よくできた作品なんだろう。冒頭の状況説明的なシーンは退屈だったが、途中で話が動き始めてからはそれなりに面白く見た。気が滅入る話だが、そこには触れないことにする。
なんでこんなに「昭和」を舞台にした作品が多いんだろう。最近見た作品では「夏の終わり」も「少年H」もそうだ。制作はアメリカだが「終戦のエンペラー」も、観てないけど「風立ちぬ」も。「夏の終わり」以外は戦争をテーマにしたものだから別枠で捉えるべきかも知れないが。
「三丁目の夕日」や「バブルへGO」など、古き良き昭和を振り返ることが一種のブームだった時はあった。今はブームではなく、一つのジャンルとして定着している感がある。僕が幼い頃、つまり昭和のど真ん中のころ、江戸時代を舞台にした時代劇というのはたいへん人気があった(今でもあるけど)。平成の世になって20年以上経つ現在、昭和というのは時代劇なんだろうか。
時代劇があってもよいし、未来を舞台にしたSFドラマがあってもよい。しかし本来、映画も小説も、いかに現代社会を切り取るかが大きな役目のような気がするのだが。「昭和の時代がよく描けている」「小道具ひとつとっても当時のものが正確に反映されている」時代劇よりも、現代の風俗や世相を巧みに反映させた作品が観たいと思う。「謎解きはディナーのあとで」だって、あれはやっぱり一種のSFなんだと思うし。
配役
- 田中裕子、年をとったなー(髪が真っ白なせいか?)。でもやっぱりどこか可愛かったなー。
- 光石研はチョイ役のスターというイメージがあったが、こんな重要な役をよく演じた。円は反吐が出るくらい嫌な奴だが、嫌な奴を嫌に演じるのは難しいと思う。
(2013/09/20 記)
過去記事
- 水谷豊・伊藤蘭夫妻の主演「少年H」(2013/08/10)
- 感動した……「終戦のエンペラー」(2013/08/16)
- 瀬戸内寂聴の私小説「夏の終わり」(2013/08/31)