窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

ルーズベルトの素顔は不倫野郎だった。「私が愛した大統領」

題名私が愛した大統領(原題:Hyde Park on Hudson)
監督ロジャー・ミッシェル
出演ビル・マーレイフランクリン・ルーズベルト(FDR)、第32代大統領)、エリザベス・ウィルソン(サラ・ルーズベルト、フランクリンの母)、オリヴィア・ウィリアムズ(エレノア・ルーズベルト、フランクリンの妻)、ローラ・リニー(デイジー、フランクリンの従妹)、エリザベス・マーヴェル(ミッシー、秘書)、サミュエル・ウェストジョージ6世)、オリヴィア・コールマン(エリザベス王妃)、他
公式サイト【公式サイト】『私が愛した大統領』│ 9月13日(金)、TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほかにて全国ロードショー
制作イギリス(2013年9月13日日本公開)
劇場TOHOシネマズ ららぽーと横浜

内容紹介

フランクリン・デラノ・ルーズベルトは重度の身障者でありながら、強いリーダシップで合衆国史上唯一の四選された大統領として歴史に名を刻んでいる(かつては初代のジョージ・ワシントンが三選を固辞したことから二選までというのが慣例だった。現在は憲法により二期までと定められている)。世界恐慌に対してニュー・ディール政策によって景気回復をはかっている。

本作では1939年6月のジョージ6世とエリザベス妃の訪米に焦点を絞って描かれる。英国王の訪米はこれが史上初めてである。訪米の目的は、近くナチス・ドイツとの開戦が不可避であろう英国が、合衆国の支援を取り付けるためであった。吃音のコンプレックスを持つ英国王に対し、自らの身体的ハンディキャップを示し父が子に対するようにジョージ6世を励ます。

この3ヶ月後、開戦の際のスピーチでジョージ6世が国民の心をつかむさまは「英国王のスピーチ」に描かれた。本作は、いわばその前日譚である。

雑感

デイジーは孤独な大統領の無聊を慰めるために呼ばれたが、「緊張をほぐし、安らぎを与えてくれる唯一の人」だと言われてやがて恋に落ちる。1939年の時点でフランクリン57歳、デイジー48歳だからお互いにいい歳のくせに、また古典的な手口で落ちたものだ。年齢に関係なく、いつ誰と誰が恋に落ちてもいいのだけど、この時フランクリンは、既婚者であるのはもちろん、他にも愛人がおり、かつ、口説き文句が全く同じだったのが笑える。

大統領はその行動を逐一管理され、プライベートはないに等しい状況だと思うが、よくもそこまで精力的にことを運んだものである。当時は今と違い、マスコミ関係も女性関係は詮索しないという不文律があったようである。しかし、当の本人はどうであったか。妻のエレノアが愛人の存在を知っていたのか、また関心を持っていたのかはわからない。政治的同志ではあるが、夫婦関係はとうに冷え切っているということになっていた。が、旧愛人は、大統領がデイジーを呼び寄せた時、「狙っているな」とわかったし、デイジーもほどなくして自分とは別の愛人の存在を知る。それでもその後も長く関係が続いたというのだから驚きだ。

ちなみに、デイジーは実在の人物で、彼女の死後発見された日記をもとに本作が描かれたそうである。

作中では、フランクリンがどうしようもないマザコンであることも描かれる。本来ホワイトハウスに住むべき大統領が、母の家(私邸)に住んでいること自体、例外的だろう。訪米した英国王夫妻もこの家に泊めた。そうした抑圧が、複数の愛人を必要にさせてしまったのか。

英国王のスピーチ」の前日譚ともいえる内容、というのは観て初めてわかったことだが。「英国王のスピーチ」を観ておいて良かったとしみじみ思った。

配役

知っている役者が誰もいなかった。イギリス映画じゃ無理もない。

英語タイトル

Hyde Parkルーズベルトの(母の)私邸があった場所。
(2013/09/21 記)