フランス初の女性の宮廷料理人は2年で挫折「大統領の料理人」

題名大統領の料理人(原題:Les saveurs du Palais)
監督クリスチャン・バンサン
出演カトリーヌ・フロ(オルタンス・ラボリ)、ジャン・ドルメソン(大統領)、他
公式サイト映画『大統領の料理人』公式サイト
制作フランス(2013年9月7日日本公開)
劇場シネスイッチ銀座

内容紹介

オルタンス・ラボリは片田舎で小さなレストランを営んでいたが、突然ミッテラン大統領から指名され、大統領のプライベートシェフを務めることになった。宮中料理人はこれまで男性だけの世界。初の女性料理人に周囲の目は冷たく、非協力的な中、なんとか大統領においしいと思ってもらえる料理を作りたいと努力し、やがて大統領と料理を通じて交流できるようにまでなる。しかし、宮中の水はオルタンスには合わず、ついに2年で我慢できなくなり、辞めることになった。

その後、南極のフランス基地で料理人の職を得、一年間男たちに囲まれ住み込みで働くことに。ここでは彼女の性格と仕事ぶりが周囲に受け入れられ、慕われるのだった。

映画では、宮廷での出来事と南極基地での出来事が交互に描かれるが、「二度と思い出したくない」という宮廷での生活がどのようなものだったかが明かされる……

解説

オルタンスのモデルとなったのはダニエル・デルプシュという実在の人物で、

  • フランスの伝統ある郷土料理を教える料理学校を設立すると同時に、自宅で小さなレストランを経営
  • 1988年から2年間はミッテランのプライベートシェフとして仕えた(初の女性の宮廷料理人)
  • その後は南極調査隊のシェフとして南極にも赴いた
  • その後はニュージーランドでトリュフの生産に従事

など映画でもその通りに描かれた。大統領の指名でエリゼ宮を訪れた時、「家庭料理しかできません」と答えたのに対し「それこそ大統領が求めるもの」と言われたエピソードも事実らしい。また、ダニエル・デルプシュによれば「子供たちが映画を観て、カトリーヌ・フロはママそっくりだと言っていた」とのことである。料理する時の仕草などがそっくりだったらしい。

雑感

「その一皿がフランスを変えた」というキャッチコピーだが、これはミスリードだ。少なくとも本作を観る限り、オルタンスの料理は多少目新しかったかも知れないが、辞めたら元に戻ってしまったのだから。彼女が辞めた後ミッテランがどのような反応を示したのか興味があるが、それは劇中では明かされなかった。

というわけで予想とはかなり違う内容だったのだが、これはこれで面白かった。彼女の猪突猛進ぶりは小気味よく、出てくる料理はおいしそう。エリゼ宮では(大統領以外の人から)受け入れられなかったが、南極基地ではその性格と仕事ぶりがみんなから支持されたし。1時間半とコンパクトにまとめた点も良かった。

エリゼ宮での顛末に関しては、必ずしもオルタンスに同情はできない。主厨房の連中も、大統領のため、フランス国家のためなのだから、もう少し暖かく迎えてやってもよかったとは思うが、オルタンスも攻撃的で溶け込む努力をしていない。どんなに極上の料理だろうが、予算枠があるのは当然で、それを無視して食材を調達すれば注意されるのは当たり前。医師から、大統領の身体のためとして使う食材を制限する指示があっても、「過度な食餌療法はそれ自体が病気」といって取り合わない。また、冷蔵庫を貸してほしいと助手を通じて依頼するも、助手が(気圧されたのか)交渉もせず「ダメだと言われました」と帰ってきた後、「冷蔵庫も貸してくれないなんてなんてケツの穴が小さいの!?」と怒鳴り込みに行くに至っては、相手にしてみれば冤罪もいいところだろう。要は「合わなかった」ということだ。

劇場

シネスイッチにくるのは初めてだと思っていたが、2年前「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」を観たのもこの劇場だった。
(2013/09/23 記)

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