窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

こういう映画が観たかった「許されざる者」

封切と同時に観たかったのだが、種々の事情で果たせず、結局今になってしまった。が、観られて良かった。こういう映画が観たかった。

題名許されざる者
監督・脚本李相日
原作ワーナー・ブラザーズ製作「許されざる者」(Unforgiven、1992年)
出演渡辺謙(釜田十兵衛)、柄本明(馬場金吾)、柳楽優弥(沢田五郎)、忽那汐里(なつめ、遊女)、小池栄子(お梶、遊女)、近藤芳正(秋山喜八、女郎屋兼酒屋の主人)、國村隼(北大路正春、長州出身の元・志士)、滝藤賢一(姫路弥三郎、小説家)、小澤征悦(堀田佐之助、元仙台藩士の開拓民。なつめを傷つける)、三浦貴大(堀田卯之助、佐之助の弟)、佐藤浩市(大石一蔵、警察署長)、他
公式サイト映画『許されざる者』公式サイト
制作日本(2013年9月13日公開)
劇場イオンシネマ新百合ヶ丘

内容紹介

クリント・イーストウッド監督・主演による西部劇(1992年)でアカデミー作品賞受賞作品を日本の時代劇(といっても時代は明治)にリメイクしたもの。というのは作品を観た後知ったのだが。

釜田十兵衛、馬場金吾は旧幕府軍の生き残り。極貧生活を送っている十兵衛は、金吾から賞金首の話を聞き、生活の足しにと乗ることにする。沢田五郎はアイヌの血を引く若者で、賞金とちっぽけな正義感から十兵衛らに合流する。

北海道のとある開拓村では、なつめが笑い者にしたと怒った堀田佐之助が刃物で顔を切り刻むという残忍な行為を実行。さいわい命はとりとめたものの、犯人に対する大石一蔵や秋山喜八らの寛大な処置(女郎だからと言って人間扱いしない態度)に腹を立てたお梶らは、賞金を懸けることにした……

雑感

リメイクだとは知らなかったが、リメイクであることを感じさせないほど、自然なドラマになっていた。西部劇を北海道開拓村になぞらえるのはあり得る話だが、時代を明治初頭にしたのはうまい。旧幕府軍の生き残りに対する差別、長州藩士でも中央政府にいる者と地方へ飛ばされた人間との差別、アイヌへの差別は西部劇におけるインディアンの扱いと同じかも知れないが、さらに女郎への差別が絡む。多重差別の構造が物語に奥行きを与えている。

話の作り方がうまい。「え、なんで? アレはどうなったの?」と思わせる絵を見せておいて、次のシーンで疑問を解決させるパターンがいくつかあり、運び方がうまいと思った。

気になったのは「賞金首」で、警察の処罰を受けて禊の済んだはずの人間に対して、どうして賞金なんか懸けられるのか? と不思議だったが、案の定これは許されることではなく、人を殺せば殺人であり、堀田佐之助らを殺しにきた人間を警察は徹底的に叩く。そしてお梶らに対しては、騒ぎを扇動したとして厳しい態度に出る。それならわかる。要するにゴルゴ13を雇うようなものだ。私的な報復のために私財を投じます、ただし捕まればあなたも罪に問われます……と(なぜお梶らが堀田佐之助・卯之助に賞金首を懸けたことが広まったのかは不思議だが)。

十兵衛はもう無駄な殺生をしたくないから、大石らから不当な暴力行為を受けても抵抗せず、やられっぱなしでいる。が、袂を分かった馬場金吾が警察の拷問を受けて殺されたことを知り、怒り心頭のあまり、たった一人で警察を壊滅に追い込む。我慢に我慢を重ねていた十兵衛が超人的な、いや、超・超人的な活躍で制圧するシーンは、ベタな展開ではあるがカタルシスを感じる部分である。

大江戸捜査網」などのように、大勢を皆殺しにしながら自身は傷ひとつ負わないというようなファンタジーはなくて、十兵衛は重傷を負う。その後行方不明になるのは、死の暗示か?(生きていれば、可愛がっていた子たちのところへ戻らないわけがない)

配役

  • 柳楽優弥は初めて、と思ったが、「ガリレオXX 内海薫最後の事件 愚弄ぶ(もてあそぶ)」に出演していた。
  • 小澤征悦三浦貴大は、あとでクレジットを見るまでわからなかったな。

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