窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

またまたすごい映画「麦子さんと」

公開2日目。混んでた。前半は大笑い。後半は涙声。

題名麦子さんと
監督吉田恵輔
出演堀北真希(小岩麦子、書店アルバイト)、松田龍平(小岩憲男、麦子の兄)、余貴美子赤池彩子、麦子・憲男の母)、温水洋一(井本まなぶ、タクシー運転手/彩子の旧友)、麻生祐未(ミチル、墓地事務員/彩子の旧友)、ガダルカナル・タカ(麻生春男、民宿経営)、ふせえり(麻生夏枝、春男の妻)、岡山天音(麻生千蔵、春男のドラ息子)、田代さやか(憲男の彼女?)、他
公式サイト映画「麦子さんと」公式サイト
制作日本(2013年12月21日公開)
時間95分
劇場テアトル新宿

内容紹介

父が死に、母が家を出て行ったあと、麦子と憲男は支え合って生きてきた……が、突然、いなくなったはずの母・彩子が「一緒に暮らそう」と戻ってくる。いろいろ優しくしてくれる彩子に「あんたのこと、母親だなんて思ったことないから」と冷たくいい放つ麦子だが、実は彩子は末期の肝臓がんを患っており、あっさり死んでしまう。

四十九日のあと、彩子のお骨を埋葬すべく、彩子の生まれ故郷を訪れると、彩子が地元のアイドルだったことを知る……

雑感

ずっと会えなかった母に、いろいろ思うところはあるものの、それなりに整理をつけて生きてきたのに、突然戻ってきたため、うまく距離感が保てない。言いたいことはたくさんあるはずなのにうまく言葉にできず、そんな矢先にあっさり死んでしまう。それから彩子の地元の知り合いから話を聞いて、自分の知らなかった「彩子」像を構築する作業が始まる。

偶然だろうが、これは「永遠の0」と同じ手法である。これによって自分の知らない母に出会うことになる。

彩子が家を出て行った理由は最後まで明かされない。しかし戻って来れなかったことはミチルの言から想像させられる。彩子も、憲男や麦子に会いたくてたまらなかったに違いない。ただいろいろなしがらみから会いにくることがはばかられた。麦子にしてみれば、そんなことはどうでもいいから会いに来いよ! ということになるだろうが、大人には大人の事情があるのだ。

井本のストーカーぶりがいい。笑える。そんな彼が麦子に説教をするシーンはカッコよかった。納骨の時の麦子の独白はちょっと長い。この時の彼女の気持ちは既に十分わかっているから、もう少しあっさりでよかったはず。しかししんみりさせておいて、その後の警官とのコントで笑わせるのは見事。

挿入歌「赤いスイートピー」が実に効果的に使われている。改めて聞いてみると、名曲だし、80年代を代表する曲だなあ、と思うのは80年代をともに過ごした世代だからだろうか(松田聖子とは同い年)。

全体として非常にバランスよく仕上がっている佳作だと思う。今のところ関東では3か所でしか上映されておらず、うち渋谷HUMAXではレイトショーのみ、TOHOシネマズ六本木ではナイトショーのみとなると、実質テアトル新宿のみになってしまう。もっと多くの人に見てもらいたい作品だが、来年1月4日以降は一気に上映館は拡大される予定である。

配役

  • 堀北真希は、いろいろな雑誌のグラビア等で登場する機会も多く、写真は頻繁に目にしているのだが、動く堀北真希はTVドラマ「ガリレオ」でのゲスト出演、「ALWAYS三丁目の夕日'64」しか見たことがない。こうしてみるとかなり魅力的な女優である。
  • 松田龍平は「舟を編む」で国内の映画賞を総なめの勢いだが、本作でもいい味を出している。兄として偉そうに振る舞ってはいるけど、実はかなり情けない。情けないし、その自覚もあるけど、妹を大事に思う気持ちはある。松田龍平はこれからも注目だ。
  • 余貴美子は、「武士の献立」でも感じたが、このような口うるさいオバサン役をやらせると抜群にうまい。だから逆に余貴美子を見るとイライラするのだけど、それは余貴美子のせいではない。
  • ふせえりは、「武士の献立」の侍女のような毅然とした役より、本作のような、できそこないの息子を持つ母親、のような役が嵌まると思う。
  • 温水洋一は本作のような変態役が実に嵌まる。昨年の大河ドラマ厳島神社の神主役をやった時は、いつギャグをいうのかわくわくドキドキして、結局真面目なままで通した。真面目な役もできるんだとは思ったが、物足りなかった。