窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

あのエマ・ワトソンが悪質な窃盗団の役!「ブリングリング」

題名ブリングリング(The Bling Ring)
原作「Vanity Fair」誌の記事「容疑者たちはルブタンを履いていた」
監督ソフィア・コッポラ
出演エマ・ワトソン(ニッキー)、タイッサ・ファーミガ(サム、ニッキーの妹)、レスリー・マン(ローリー、ニッキーの母)、イズラエル・ブルサール(マーク)、ケイティ・チャン(レベッカ)、クレア・ジュリアン(クロエ)、キルスティン・ダンスト(本人役)、他
公式サイト映画『ブリングリング』公式サイト
制作USA・フランス・イギリス・日本・ドイツ(2013年12月14日日本公開)
時間90分
劇場新宿シネマカリテ

内容紹介

マークは不登校児で、やっと三流高校に転入するが初日からキモイのなんのと言われて周囲から相手にされない。そんな中、レベッカだけは普通に話しかけてくれたことから、マークはレベッカに強く惹かれるようになる。が、このレベッカには盗癖があった。それもなまじのレベルではない。道端に停まっている自動車に鍵がかかっているかどうか確かめ、かかっていない自動車はドアを開けて中に置いてあるバッグなどを丸ごと持ってきてしまう。さらにマークに、クラスに旅行中の家はないか訊き、いるというと、その家に押し入ることを提案する……。

2008年から2009年にかけてアメリカで騒がれた実在の盗賊団「ブリングリング」をモデルにしたセミ・ドキュメンタリー。彼らはハリウッドセレブの邸宅に次々と侵入し、荒らしまわるが、驚くべきは彼らが全員ハタチ前後の若者であること、現金のほか衣服や下着、靴、バッグ、宝石や時計、さらに麻薬や拳銃なども持ち去ったこと(実際の事件では日本円にして3億円相当とか)、盗んだ物はほとんど換金せず、身に着けて高級クラブへ繰り出し、(窃盗を)自慢していたこと、さらには盗んだ金品やそれで着飾った姿をFacebookに投稿していたこと。もちろん全員捕まり、実刑判決を受けるのだが――

雑感

エマ・ワトソンが出るというので、例によってそれ以外は何の事前知識なく観たのだが、仰天した。

彼女らが全く何の罪悪感もなくこれだけの大それた犯罪を繰り返していることも驚きだし、バレたらつかまる、つかまったら一生が台無しになるという不安を微塵も感じていなさそうな点にも驚いた。マークだけはどちらも感じていたようだが、欲に負けたというより、唯一の友人であるレベッカを失うのが怖くて言いなりになっていたように見えた。

当初、現金はともかく服や靴、宝石や絵画などを盗んでも換金できないだろうにどうするつもりだろうと思ったのだが、彼女らはそうした服や靴そのものがほしかったのだ。まあ若い女の子の気持ちとしては、お金よりも、有名人が身に着けていたブランドものの服や靴、宝石類そのものの方が価値があっただろう。

しかし、現金だけをそっと持っていくのなら、それがいいとは言わないけど、被害は最少で済む。被害に遭った人たちの資産からすれば、1億や2億を失っても取り返しが効くだろうから。しかし衣服、靴、時計、アクセサリーなどの類は、多くがとりかえしが効かないものだ。盗まれなかったものでも、勝手に触られ、いじられたとわかれば気味が悪いだろう。そういう意味ではブングリングの罪は深い。

一方、多くの収入があり、あれほどの資産を持っているのに、セキュリティの手薄さには驚くばかりだ。常駐の管理人を置くとか、警備会社と契約するとか、高いフェンスで囲うとか、いくらでも方法はあるだろうに、彼らハリウッド・セレブは性善説を信奉していたのか。セコムはロサンゼルスへ進出したら大成功しそうだ。

ブリングリングの連中は、全員家族と暮らしていたのに(まだ家族の保護が必要な年齢なのだ)、家族が誰一人気づかなかったのが一番恐ろしいことかも知れない。普通は、思春期の男の子がエロ本を巧みに隠しても母親は見つけ出すものである。あれだけ大量の服やら靴やらを部屋に隠しておいて、それを気付かない親も呑気なものである。また夜な夜な高級クラブへ繰り出し、ドラッグに興じる彼らに何も言わないのもおかしな話だ。そういう家庭だからこそ、彼女らのような人間が育ってしまうのか。

クラブでキルスティン・ダンストを目撃し、「キルスティン・ダンストよ!」と呟くシーンは、僕も(呟かれるより前に)キルスティン・ダンストだとわかったが、彼女らが窃盗に入るパリス・ヒルトンオーランド・ブルームリンジー・ローハンレイチェル・ビルソンなどが実在の人物かどうかわからなかった。というか、普通は名前を変えるだろうと思っていた。が、全員実在の人物で、実際にブリングリングの被害に遭った人たちだとあとで知って、これも驚いた。映画のブリングリンブがお気に入りで8回も侵入するパリス・ヒルトンは、この映画に興味を持ち、撮影場所として何と自宅を提供したのだという。リアルに盗みが行なわれた現場で映画の撮影も行われたのだ!

ちなみに、ルブタンというのが靴のブランドであることを、本作を観て知った。つい先ごろ公開されていた映画「Fire by ルブタン」というのは、セレブ向けのストリップショーかと思い込んでいたのだが、ブランドメーカーによるファッションショーなのね。勉強になった。

ところで、映画の冒頭と最後にニッキーのインタビューが流れる。彼女は最後まで事件への関与を否定し、「そう思われるのは不本意」「これも神に与えられた試練」「将来は国の指導者になりたい」などと世迷いごとをほざく。裁判で実刑判決が下されたあともそう言い続けるのだが、彼女は何を目指しているんだろうか?

監督

ソフィア・コッポラフランシス・コッポラの娘。現在42歳。「ロスト・イン・トランスレーション」(2003、監督・脚本・製作担当)ではアカデミー脚本賞を受賞している。俳優業も行なっており、「ゴッドファーザー Part III」(1990)ではゴールデンラズベリー賞のワースト助演女優賞とワースト新人賞を受賞。

今日の英語

  1. I was scary for me."(私としては怖かった)←ニッキーのインタビューで。どの口が言うか。