何が気に入らなかったのか

1月31日、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」と「アメリカン・ハッスル」を2作同時に観て、どちらもあまり感心しなかったと書いた。

つらつら考えていたのだが、結局、二作とも「どうやって顧客を得るのか」という、ビジネス一番根本のところを描いていなかったことが不満だったのだと思う。

普通のビジネスでは、支払った金額に見合う何らかのメリットが得られるはず。すべての人がそれを喜ぶとは限らないが、気に入れば二度、三度と続けて買ってくれるだろうし、周囲の人に「あの製品はいいからお前も買えば?」などと言ってくれる可能性もある。むしろこうした口コミが人気に火をつけるきっかけになることは珍しくない。だからといって、それで日々注文書が山ほど舞い込んで左団扇になるかというと、そうは問屋が卸さない現実は、誰もが知っている通りである。

本作の場合、目の前の人を「落とす」ための詐欺的な「技術」に関係者が長けていた、というのがある。たとえば若き日のジョーダンが、「こんなの売れないよ」と皆がいうクズ株を、口八丁で大量に売りつけてしまうシーンが描かれる。これは確かに際立った点であろう。しかし、そもそもの大前提として、そのような「営業先」をどうやって見つけるのだろうか? 

同じ人が二度顧客になることはない。まして周囲の人を紹介してくれることはあり得ない。ジョーダンが会社を立ち上げてからは、上位1%の大富豪のみを相手にするとターゲティングしていた。そういうセレブのリストを手に入れたのかも知れない。セレブといえども欲の皮の突っ張っている人は少なくないだろうから、一度は騙されるかも知れない。けれども、騙されたとわかれば文句を言ってくるだろう。普通はそういう顧客が一人いたらクレーム対応に追われ、仕事にならなくなる。仮にトラブル処理班が別にいたとしても、何人かが立て続けに騙されれば、ナントカいう投資会社から電話がかかってきても相手にするな、という悪評が広まり、相手にされなくなるのではないか。

アメリカン・ハッスル」は個人営業なので、そうそう次々と鴨が引っかからなくてもやってはいけたのだろうが、シドニーと組んでからは次々と「客」を見つけてくる描写がある。1〜2件はともかく、4件も5件もこんなことをやっていたら、すぐに誰からも相手にされなくなってしまうと思うのだが。ましてこちらの場合、「本業」は堅実なクリーニング屋である。ひとたび社会的な信用を失えば、本業も崩壊してしまう。それだけのリスクを抱えていながら、どういう手を打っているのか説明がなかった。

この部分をきちんと描かないことには、クライム・ドラマとして成り立たないのではないかと、自分としては感じたわけである。

ちなみに今週号の「モーニング」に連載されている漫画「ギャングース*1の中に、「詐欺の現場において、薬物中毒者はご法度中のご法度」という説明が出てくる。そうだろうと思う。「ウルフ・オブ・ウォールストリート」でバレたら即手が後ろに回ることをしている連中が、あれほど薬物に溺れているのは全く理解できない。初めから破滅したかっただけなのか。

*1:ギャングース」:肥谷圭介鈴木大介による本格クライム(犯罪)漫画。ドラマとしての面白さより、犯罪者の実態をかなり綿密に調べており、その説明が興味深い。