窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

役者さんの演技力が見事!「白ゆき姫殺人事件」

面白かった。こういう映画が観たかった。

題名白ゆき姫殺人事件
原作湊かなえ
監督中村義洋
出演■TV局関連/綾野剛(赤星雄治、映像制作会社「TAG」ディレクター)、染谷将太(長谷川、映像制作会社「TAG」編集マン)、生瀬勝久(ワイドショー「カベミミッ!」司会者)、朝倉あき(ワイドショー「カベミミッ!」女子アナ)、他
■日の出化粧品/菜々緒(三木典子、被害者)、井上真央(城野美姫、容疑者)、蓮佛美沙子(狩野里沙子、赤星雄治の元カノ)、小野恵令奈(満島栄美/みっちゃん)、宮地真緒(間山、退職予定)、金子ノブアキ(篠山聡史、係長)、草野イニ(同僚、駅に向かう城野を目撃)、他
■被害者の関係者/ダンカン(城野光三郎、父)、秋野暢子(城野皐月、母)、谷村美月(前谷みのり、大学時代の友人)、白石糸(さえ、大学時代の友人)、野村佑香(島田彩、高校時代の同級生/江藤の呪いの話をする)、川面千晶(尾崎真知子、高校時代の同級生)、大東駿介(江藤慎吾、中学時代の同級生)、貫地谷しほり(谷村夕子、小学校時代の同級生)、山下容莉枝(八塚絹子、地元住民)、他
■その他/TSUKEMEN(芹沢ブラザーズ)、他
公式サイト映画『白ゆき姫殺人事件』オフィシャルサイト 2014年3月29日公開!
制作日本(2014年3月29日公開)
時間126分
劇場TOHOシネマズ 川崎

内容紹介

若い女性がメッタ刺しにされた上、火をつけられて殺されるという事件が発生。被害者は三木典子。人気化粧品会社・日の出化粧品のOLで、誰もが羨む美人だった。同じ職場に勤める元カノ・狩野里沙子から事件の概要を聞いた赤星雄治は、事件の直前から行方不明になっている同僚の城野美姫に疑いを抱き、彼女の関係者の証言を集める――

雑感

こういうバカな話が観たかった。いやバカというのは失礼なのかな。褒め言葉のつもりだけど……

普通に考えたら、こんな理由で人を殺すなんてあり得ないでしょ。その後の行動もあり得ない。また、犯人があの人なら遺留品などから警察はあっさり犯人を特定できたはずで、一週間経っても手掛かりなしはあり得ない。架空のドラマだからこそこういうことが成り立つわけで、その「あり得なさ」がエンターテイメントなんだと思うし、それを一言で表現するうまい言葉が思いつかなくて、「バカ」と言ってみたのだが。

「かつてない重層的なサスペンス」等のアオリがついているが、同じ事件なのに証言する人によって中身が全然違う、じゃあ事実はなんだったの? というのは芥川龍之介の「藪の内」以来の定番で、ありふれた手法だ。そこにバラエティとツイッターを登場させて、「視聴率稼ぎのためにセンセーショナルに話を振る」ことと「事実無根の話が事実であるかのように拡散されていく」ことを絡めたのは現代的でうまいと思うけど、それだけの話。

ミステリーとしてもいささか平凡で、僕は割と早いうちから犯人が誰だかわかった。これといったひねりはないから、ミステリーをちょっと見慣れている人にとってはそう難しくはなかったと思う。

じゃあ何が魅力的なのか? といえば、これはもう役者さんたちの演技に尽きる。

ひとつひとつのエピソードが、いろいろな人の証言の中で繰り返し再現されるのだが、同じようなシーンなんだけど微妙にセリフの中身や、ニュアンスが異なる。その「異なり具合」がきちんと演じ分けられないと面白さが半減してしまうところだが、よくもまあ美形でありながら演技派役者を揃えたものだと思う。

特に感心したのは菜々緒で、みんなが憧れる美人風、人のものはなんでもほしがる底意地の悪い風、要領の悪いドジっ子風など、いろいろな「顔」を見事に演じ分けていた。ファッションモデルで映画はこれが初出演。その割に……といっては失礼なんだろうが、実に芸達者なところを見せてくれた。

井上真央谷村美月貫地谷しほりらの安定した演技力は今さら触れるまでもないので省くとして、もう一人(いや一組)感心したのが野村佑香と川面千晶だ。彼女らの演じる島田彩と尾崎真知子は、たまたま連絡がついたからということなんだろうが、城野のことをよく知っているわけでもないのにしゃしゃり出てきて、特に島田は自分が直接見たわけでもなんでもない噂話を得意になって語るなど、イヤな奴なんだがいかにもよくいそうな人で、しかもいかにも「こういう風に喋るよね」というように本当に自然な感じで喋っていて、一瞬だけの役だけど、いい仕事をしていたなと思う。

綾野剛のいかにも軽薄な感じとか、染谷将太の腹の中はいろいろありそうだけど口に出さない陰険な感じとか、それぞれがいい味を出していた。こういう積み重ねがあって広がりのあるドラマが成立したのだと思う。

配役

  • 菜々緒の役者デビューは「主に泣いてます」の紺野泉役。なるほど、誰から見ても美人と言われる美人役が得意なわけだ。背が高く目鼻立ちがはっきりしているから、美人ぽく見えるのは事実だろう。
  • 誰もが美人と認める三木典子に対し、地味で不美人な城野美姫を演じたのは井上真央。しかし井上真央といえば、世の中のすべての女性の中で、個人的にはベスト3には確実に入ると確信する美人だ。それがまあ、実に地味でブスい女になっているから不思議だ。

公式サイト

先日「神様のカルテ2」の公式サイトはよくできていると書いたが、この公式サイトはその上を行く。芹沢ブラザーズも入れて全22人のキャストを、顔写真つきで紹介し、役柄や相関関係、主要な人物は証言の内容まで記載してくれているのだ。だから野村佑香と川面千晶の名前を知ることもできたのだが。

このぐらいのことは普通にやってほしいと思うけど、現実は極めて珍しい。ここに最大限の賛辞を送っておく。惜しむらくは、城野美姫の小学生時代、中学生時代を演じた子役の名前も記載してくれると、もっとよかったけど。

雑感(ネタバレあり)

  • 「白雪姫殺人事件」ではなく「白ゆき姫殺人事件」となっているところが事件のキーになるのでは、と予想していたのだが、全く何の関係もなかった。なんで「ゆき」をわざわざひらがなにしたんだろ?
  • 谷村夕子はなんで赤星雄治のハンドルを知っていたんだろう。ツイッターで「訴える」とつびやいていたのが彼女だった?
  • 江藤慎吾クンの事件の真相は不明のまま。江藤クンは「ブレーキが細工されていた」と主張しているから、それを信ずるなら犯人がいることになるが……
  • 芹沢ブラザーズの雅也のケガの原因が不明。もし城野が突き飛ばしたのだとしたら、突き飛ばしたわけではなくても、城野がしつこく身体を触ってくるからそれを避けようとして足を滑らせたのだとしたら、城野にも法律的、道義的責任が生じる。犯人と間違われて災難でしたね、では終わらないが……
  • 三木典子と雅也の関係が不明。雅也の方は付き合っているつもりはなくても、仮にも最前列のチケットを用意してくれる程度の付き合いはあったということか? それとも自分で勝手に入手したチケットを、雅也からもらったと騙ったのか?