題名 | そこのみにて光輝く |
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原作 | 佐藤泰志 |
監督 | 呉美保 |
出演 | 綾野剛(達夫、無職)、菅田将暉(拓児、パチンコ屋で達夫と知り合う)、池脇千鶴(千夏、拓児の姉)、伊佐山ひろ子(拓児の母、色ボケ?)、田村泰二郎(拓児の父、脳梗塞で寝たきり)、高橋和也(中島、千夏の愛人)、火野正平(松本、達夫の昔の仕事仲間)、奥野瑛太、あがた森魚、他 |
公式サイト | 映画『そこのみにて光輝く』公式サイト |
制作 | 日本(2014年4月19日公開) |
時間 | 120分 |
劇場 | TOHOシネマズ 川崎 |
内容
達夫は以前の仕事で自分の不注意から仲間を死なせてしまい、仕事を辞め、パチンコ・散歩・酒と無為な毎日を送っている。ふとしたきっかけで知り合った拓児に連れられて家へ行き、そこで千夏と出会う。千夏は寝たきりの父、父の世話に明け暮れる母、暴力事件を起こし仮釈放中の弟を養うため、昼間は週3回工場で働き、夜は場末の風俗店(チョンの間のような店か?)で身を売っていた。
中島は、暴力的に千夏の身体を求めるばかり(というより、千夏が自分を愛していないことが丸わかりなため苛立って、それを千夏にぶつけている?)だが、狭い地元でいろいろと人脈を持ち、保釈中の弟の保護司もお願いしているため、別れられない。
そんな二人が惹かれ合い、求めあって結ばれる。結婚を意識した達夫は、負の連鎖を断ち切ろうと、千夏に一緒にこの町を出ようと誘うが……
雑感
絵に描いたような底辺層の暮らしを送る千夏一家。達夫はただ自堕落なだけで、まだやり直せそうな感じだが、心に深い傷を負っており、簡単には立ち直れそうもないことが示唆される。このような二人が寄り添い合い、傷を舐め合い、少しでもましなステージに行こうとあがいても、簡単にはステップアップできないというさまが描かれる。典型的な日本映画という感じ。
綾野剛はいかにも自堕落な感じで、こいつどうしようもないなと見ているだけで思わされる。その「なりきり」感が凄い。一方、池脇千鶴に関しては、当初はミスキャストではないかと思っていた。人の見た目は、生まれ持ったものもあるだろうが、生活も反映される。すさんだ生活を送っていれば、見た目もそうなるものだ。
ところがバラック小屋に住んでいても千夏は美しい。肌は光っているし、スタイルもいい。服を着れば着たで、高級な服ではないが、さっぱりしていてセンスがいい。これはないだろうと。池脇も、もう少し蓮っ葉な感じを演じないと、リアリティがないぞとずっと思いつつ見ていた。
が、どうやらこれは当初から狙っていたことではないかと最後まで観て思った。掃き溜めに鶴というが、こんな、周りが全部灰色でしかないような世界の中で、千夏だけが光り輝いているのだ。こんな複雑な生活の中でもなお美しくいられる女を演じられるのは、池脇千鶴しかいないかも知れない。
ちなみに、普通池脇がこのような「体当たり」な演技をすると、男性週刊誌などがことさらに取り上げたりするものである。が、少なくとも僕の知る限り、そのような記事は目にしていない。地味な作品なので、制作側が「その部分」を宣伝に使ってもおかしくなかったが、そういう売り方をしていない。その点は好感が持てる。
リンク
- 『そこのみにて光輝く』(映画)(2014)ー人、土地、光の総合芸術、小物使いも完璧な映画(マンガデシネ、2014/03/24)
- 『そこのみにて光輝く』 底のみにて見える光(映画のブログ、2014/05/22)