窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

今年のハイライト/「軍師官兵衛」第29話「天下の秘策」

前回に引き続き、今年の大河で一二を争う面白さ。

粗筋

恵瓊を通じて毛利との和睦を進める。清水宗治が腹を切ることで決着。その後秀吉軍は軍を引き上げ、京へ向かうが、黒田軍はしんがりを務める。もし毛利が追撃してきたら黒田は全滅である。毛利が軍勢を引き上げることを確認し、黒田軍も引き上げる。

長政は又兵衛と再会。

家康は無事に伊賀越えし三河へ帰る。幼女は連れていなかった(二年前の大河を見た人は、ここは気になるところだろうと思う)。

雑感

官兵衛が恵瓊に信長の死を漏らしたのは、恵瓊を味方に引き込むためだった。これからの世は秀吉を中心に回ることになるから、参謀として、二人で新しい世を仕切って行こう、というわけだ。だから恵瓊にはこっそりと真実を教えるが、小早川隆景毛利輝元らには知らせるな、というのだからずいぶんリスクの高いやり方だが、恵瓊はうまくそのたくらみに乗ってくれた。賛成できるやり方ではないが、なるほどな、とは思わせてくれた。

清水宗治切腹を敵味方が見守るシーンは緊迫感があったし、その直後に小早川隆景のもとに明智光秀から書状が届き、真実を知った隆景が怒り狂うところや、さらにその後、信長の死を知った吉川元春が、講和を反古にして秀吉を追撃しよう、と持ちかけた時に、「清水宗治の死を無駄にするつもりか」と一喝するシーンは震えた。

黒田軍が、毛利軍の軍備解除を見届けるシーンもよかった。もし吉川元春の主張が通って彼らが追撃してきたら、黒田軍は全滅、秀吉本軍も痛手を蒙り、とても光秀と戦うどころではなかっただろうから、結末を知っているとはいえ、ハラハラさせられた。作戦を提案した手前、しんがりを申し出たのだろうが、失敗した時は命がないわけで、そう思うとすごい場面だ。

しかし、以前にも書いたが、毛利軍が全然強そうでないので、というか初めから戦う気が全くなさそうなので、緊迫したはずの場面に水を差している。高松城は最前線であり、毛利本軍ではない。清水宗治としては、ここで秀吉軍を撥ね返せればよし、撥ね返せなくても、少しでも戦を引き延ばして、毛利本軍に戦準備をする時間の余裕を与えられれば役割が果たせる。もし毛利から援軍がくれば生き延びる道もできる。ということだったと思うのだが、なぜか小早川隆景吉川元春も近くにいながら秀吉軍と戦おうとしない。

秀吉軍(織田軍)とまともに戦っても勝ち目がない、と持っているなら、無駄に戦を長引かせれば犠牲が増えるだけ。だったら、さっさと和睦を結ぶほかない。

吉川元春が、せめて一矢なりと報いなければ武士の面目が立たぬ、などと今頃になって意気がるくらいなら、さっさと攻撃を仕掛けていればよかったのだ。そのあたりがさっぱりわからないので、小早川隆景の「清水宗治の死を無駄にするつもりか」というセリフだけが浮いている印象である。ダイジェスト大河と揶揄される所以である。

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