アカデミー脚本賞受賞。ようやく観ることができた。やってて良かった。
題名 | her/世界でひとつの彼女(Her) |
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監督・脚本 | スパイク・ジョーンズ |
出演 | ホアキン・フェニックス(セオドア・トゥオンブリー)、エイミー・アダムス(エイミー、セオドアの元カノ)、ルーニー・マーラ(キャサリン、セオドアと離婚協議中)、オリヴィア・ワイルド(婚活中)、スカーレット・ヨハンソン(サマンサ)、他 |
公式サイト | 映画『her/世界でひとつの彼女』大ヒット上映中! |
制作 | USA(2014年6月28日日本公開) |
時間 | 120分 |
劇場 | ヒューマントラストシネマ有楽町 |
内容
近未来ではPCも音声認識が一般的であり、キーボードを打ったりマウスをぐりぐりしたりするのではなく、PCと「会話」して操作する。新しいOSは搭載AIもかなり進化して、PCの操作とは関係ない普通の会話もできるようになる。主人公はそのOS「サマンサ」に惚れてしまう……
雑感(ちょっとネタバレ)
目の付けどころは悪くない。iPhoneのSiriに見られるように、音声認識の技術は発達してきており、「暇だ」と話しかけると「しりとりでもしましょうか?」と返してくるなど、気の利いた会話もできる。きっと「Siri萌えー」な人は世の中に大勢いるに違いない。
だからAIがさらに進化して、普通の人間とほとんど変わりのない会話ができるようになり、性別設定もされれば、本気で恋愛感情や性的感情を抱く人が続出するのは、むしろ自然だろう。こちらの好みを熟知し、不機嫌になることもなく、こちらの不誠実をなじることもなく、常に素直に指示に従い、明るく受け答えしてくれるとあれば、感情の起伏の激しい人間など相手にするのは厭になっても不思議はない。
不思議はないが、そこは実体のないものであるからして、「失恋しない」とも言えるが「絶対に成就しない」とも言える。そこからさまざまな悲喜劇が生じるわけで、「二次元コンプレックス」ならぬ「OSコンプレックス」の行き着く先がどうなるか、きっと面白い作品になると期待したのだ。
しかし、サマンサの側から主人公セオドアに対して肉体関係を要求したり、焼き餅を焼いたり、悩んだりする。多少のツンデレは恋愛のスパイスかも知れないが、限度を越えたらウザイだけだ。だいたいここまで感情的になられては、OS本来の業務に著しく支障をきたす。恋愛に溺れて仕事に手がつかなくなる人は、人間でもダメダメなのに、機械だったら存在価値がなくなる。
その上、サマンサは何千人と同時に恋愛しているとのこと。昔のホストコンピュータならそういうことになるのだろうが、なんで個人用PCのOSがそんな大勢とつながっているのよ。
役者の演技とか、見所もあるが、こと脚本に関してはいろいろと疑問。これがアカデミー賞というのはもっと疑問。
設定がOSではなく、「恋人アプリ」だったら良かったのかも知れない。性格設定も「クール」「甘えん坊」「ツンデレ」など選べるようになっていて、そこから自分の好みに育て上げていくような育成型アプリであれば、それなりに人気が出るかも。わざとキスやセックスをせがむのも、アプリだったらいいかもな。アプリは仕事をしなくていい、というかデートの相手を務めるのが仕事だからそれでいいのだ。
今日の英語
- You wake me up?(目覚めたの?)
- No, it's not OK, actually.(実は大丈夫じゃないの)
- "Are you jealous?" "Obviously"(「妬いてるの?」「そりゃそうよ」)
配役
- スカーレット・ヨハンソンの演技力には驚嘆した。最初から最後までほぼ出ずっぱりで、しかも、自分の身体はもちろんアバターも何もなく、ただ声だけで、これほどの演技をするとは。
- エイミー・アダムスの役名がエイミー。なんか理由があるの?
- オリヴィア・ワイルドは「サード・パーソン」で裸でホテルを走った人。この人、「タイム」「カウボーイ & エイリアン」にも出演している。うーむ、そうだったか。
ポスター
ポスターの出来は、正直、あまりよろしくないと思う。僕は「観ようかな」と思ってポスター(リーフレットも同じ)を見てみる気をなくす、ということを2ヶ月近く繰り返してきた。
ホアキン・フェニックスが画面一杯に移っているが、サマンサがどこにもいない。サマンサは人間が捉えられる形での「実体」はないかも知れないが、PCや携帯端末という意味でアイコンはあるんだから、それは表示させるべきだった。またエイミー・アダムス、ルーニー・マーラ、オリヴィア・ワイルドが下の方に小さく映っているが、エイミーはセオドア、サマンサに次ぐ重要人物なのだから、もっと大きく目立つように配置すべきだ。
ショッキング・ピンクも気になる。内容を表わしているようには見えない。じゃあ何色がいいかと言われても回答に困るのだが、検討の余地はあったのではないか。