NHKの公式サイトによると、「花燃ゆ」のドラマの見所は次の4つ。
- 幕末のホームドラマ
- 幕末の学園ドラマ
- 女たちの戦いのドラマ
- 男たちの命がけのドラマ
ポスターには「幕末男子の育て方」という言葉が入っている。そして主人公の文は、志士たちのマネージャー的な存在なのだそうだ。なんだそれは。
番組が始まる前、twitterのTLには、今年の大河は見ようかどうしようか迷ったり、来年の「真田丸」を楽しみにするといった、要は今年は期待しない(できない)意味のつぶやきがあふれていた。まあ寅次郎の妹が主人公というのは微妙としても、なんでみんなそんなに期待値が低いんだろうと不思議だったが、その理由がよくわかった。
僕自身は、歴史に詳しいと自信を持って言えるほどではないし、大河ドラマも、ここ数年は皆勤賞だけど、それ以前に遡れば見ていない回の方が多く、自慢するほど優良の視聴者とはいえないかも知れない。しかし世間の平均よりは熱心に見ている方だろう。そしてtwitterでは毎年コンスタントに大河ドラマを見て意味のあるコメントをつぶやいている人を何人もフォローしている。そういう人にとって、上記のようなキャッチは、見る気が起きるどころか、見る気を萎えさせるもの以外の何者でもないのだ。
ここ数年、思うように視聴率が取れず、躍起になっていることが影響しているのだろう。僕はそもそもNHKがなんで視聴率をそんなに気にしなければいけないのか全く理解できない。そして、目先の視聴率を追いかけるあまり、どんどんおかしな方向に走ってしまい、結果的に、ますます人気の低迷を生む悪循環に陥っているように思える。
歴史ドラマは、見る側にある程度の素養がないと、ちんぷんかんぷんに陥りかねない。そのため敷居が高く、昔ながらの作り方ではコアなファン以外になかなか広まらない。今の大河は、歴史ドラマに慣れない人でも気軽に見られることを目指しているのだろう。そういう試みのすべてが悪いとは言わない。時代が変われば歴史ドラマのあり方も変わって当然である。ただ、いずれにしても、歴史ドラマ好き、大河ドラマ好きな人たちが本当に唸るような作品を作らない限り、将来はないのではないか。ホームドラマや、学園ドラマや、恋愛ドラマの要素が入っていても構わない。構わないけれど、歴史ドラマなのだから、まず歴史をきちんと描いて欲しい。望んでいるのはそれだけなのだが。
第一話「人むすぶ妹」では、冒頭でいきなり文がおにぎりを作って松下村塾の塾生たちに配るシーンが映された。まさに運動部のマネージャーそのもので、上記のキャッチを知っていた人は、「ああ〜」とため息をついたことであろう。ただし、タイトルバックのあとの本編は、意外にも? 真面目な作りになっていた。
視聴率は16.7%で、これは史上3番目の低さだそうである。この視聴率は中身の出来とは無関係である。出来が悪いから視聴率が低かったわけではない。いいも悪いも、見ていない人にはわからないのだから。ひとえに事前アナウンスの問題だろう。「幕末男子の育て方」で大河に人は集められないことを、NHKは肝に銘じるべきだ。そして、見なかった人には、スイーツの香りを漂わせつつ、中身は割に硬派だったということを伝えておきたい。
(2015/1/12 記)
過去記事
- ドラマの評価軸(2013/01/01)
- 太河ドラマに期待すること(2014/08/28)
- 太河ドラマに期待すること その2(2014/09/11)