窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

今回は面白かった。「花燃ゆ」第4話「生きてつかあさい」

今回は面白かった。このクオリティが続くなら、ずっと観続けていたい。長塚京三の神回、と言いたい。

粗筋

寅次郎は黒船に乗ってアメリカへの渡航を企てるが、失敗。当時、海外渡航は国禁を犯す重罪だから、どのような処分が下されるか周囲は戦々恐々としていたが、アメリカからの依頼もあり、江戸では特に処罰を受けることなく長州へ送り返されることになった。長州藩は寅次郎を野山獄送りとする……

雑感

今回面白いと思ったのは、寅次郎が日本脱出を企て、黒船に乗り込む様子がかなり詳しく描かれたこと。櫓杭(ろぐい)がないため櫓が漕げず、ふんどしで縛り付けた話もちゃんと描かれて満足度アップ。こうした歴史的事件を細部まで描いてこそ、歴史ドラマたりえるのである。

また、寅次郎を心配する周囲の人の様子がちゃんとドラマになっていた。

兄の梅太郎は、先週わざわざ江戸にまで足を運び寅次郎を諌めたにも関わらずこのような事件が起きてしまったことで自分を責め、深夜、一人懐剣を取り出し、自分が腹を切ってお詫びするしかないのだろうかと(恐らく)悩む。夫のその様子を悟った亀が、また絶妙のタイミングで声をかけ、梅は自決を思いとどまる。

伊之助は寅次郎の助命に走り回るが、このような重大事を事前に打ち明けてくれなかったことに対し、忸怩たる思いも味わっている。が、滝から「寅次郎は伊之助様のことを本当に大切に思っているのですね」と言われて気づく。もし事前に伊之助が知っていれば、同じく罪に問われる。嫁を取り、子供も生まれた伊之助を巻き込むわけにはいかない。だから敢えて寅次郎は黙っていたのだ、と。

皆があわただしく走り回っている時も、百合之助は淡々と畑仕事に励む。結局、お咎めなしという知らせが届くと家族は浮かれ、安堵するが、百合之助は一人、別のことを考えていた。いくらお咎めなしとはいえ、これだけの騒ぎを起こし、誰かが責任を取らないわけにはいくまい。それは自分しかいないだろう、と。文は父の覚悟に敏感に気づき、どうか死なないでくれと泣いて訴えるが、そういうわけにはいかないのだと文を諭す。

そこへ梅太郎が、藩命を持って帰宅した。百合之助は今後とも寅次郎の監視に勤めるように、と。「父上の切腹願いは却下されました」──

このあたりは、長塚京三の見事な演技を堪能するしかない。ゴタゴタに背を向けて、一人畑仕事にいそしんでいるように見えて、静かな決意を固めるくだりは号泣ものである。

ただし、なぜ黒船に乗ろうとすることが重罪なのか、なぜ家族も巻き込む騒動になるとわかっていて、それでも寅は黒船に乗ろうとしたのか、そのあたりの説明がさっぱりなかったのは残念だ。これは先週、説明されているべき部分だ。そりゃー国使としてやってきた船に一介の武士が乗ることが失礼なのはわかるし、当時は鎖国をしていたことも多くの人は知っているであろうが、ここはもう少しこの時の情勢に照らし合わせて、ていねいな説明があるべきだ。

ラストシーン、野山獄では女の指先だけが画面に映る。名前の紹介はなかったが、もちろん彼女が高須久子であろう。ぞくぞくするラストだった。

その他

  • オープニングロールのトメは北大路欣也
  • 1854年8月、寿は男の子を出産。小田村家の長男・篤太郎である。
  • 文之進が梅太郎に、「わざわざ江戸まで行って、なぜ寅次郎を止められなかったのだ!」と怒鳴りつけるシーンがあるが、それは無茶というものだ。寅次郎を止められる人は誰もいない。幼い頃から寅次郎を教えてきた文之進が、一番わかっているだろうに。
  • 長州に戻ってきた寅と金子くんだが、身分が違うため別々の獄に入れられた、と言われた。あれ? 金子くんは戻ってくる途中で風邪をこじらせて死んでしまったのではなかったか?

1854年における年齢

役柄   役者  
杉文 11 井上真央 27
杉寿 15 優香 34
吉田寅次郎 23 伊勢谷友介 38
小田村伊之助 24 大沢たかお 46
金子重之輔 23 泉澤祐希 21

(2015/2/1 記)

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