窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

「麒麟がくる」第二十回「家康への文」

次回で中断に入るが、桶狭間まで終わりそうだ。よかった。

出演

あらすじ

十兵衛に命じられて尾張まで出張してきた左馬助は、今川は尾張の領内に出城を築くまでになっており、尾張に攻め込むのは時間の問題と説明する。今戦えば織田方に勝ち目はない。何か手はないかと思案する十兵衛は左馬助に「今川方に一番近しい松平の者といえば誰だ?」「竹千代殿が人質として……」「それだ!」そして帰蝶へ文を書き、再度尾張へ行くよう左馬助に命じる。

戦に備えて駿府では今川義元を囲んで軍議が行なわれている。義元は、この戦は自分も出るという。先鋒は誰に任せるか、三河者がいいだろうとのことから松平元康の名が挙がる。

松平元康(竹千代)は東庵と将棋を指してようやく勝つ。通算成績は5勝98敗。元康は駒に、自分と祖母は長い人質暮らし、こたびの戦では先鋒という危険の高い役割を押し付けられたと愚痴るが、駒に励まされ、必ず生きて帰ってくると約束する。

尾張では、重臣たちが軍議を続けるがこれといった策は出ない。なにしろ味方3000に対して今川軍は2万5000以上、初めから勝負にならないのだ。そんな中、出かけようとする帰蝶を見咎めた信長は、どこへ行くのか聞くと、熱田へ行くという。熱田へ何しに行く、神頼みでもするのかと重ねて聞くと、熱田には竹千代の母・於大の方とその兄・水野信元がいる、殿も一緒にくるべきだと。

竹千代を調略しようというのだな、いい考えだ。誰の知恵だ? と聞くも、帰蝶は答えず、いい考えかどうかはわかりませんが、打てる手は打っておかないと、と答える。信長は嬉しそうに、「想像はつくがな」と言う。十兵衛が左馬助に託したのがこの作戦だったのだろう。

熱田で於大の方と水野信元に会った信長は、三河の国に野心を持たないことを条件に、元千代を翻意させることを水野に約束させる。於大の方は、16年も会っておらず道ですれ違っても顔もわからぬ愚かな母だが、それでもそなたが戦で死んだと聞いたら嘆き悲しむだろう、と手紙を書き、菊丸に託す。菊丸は元康に手紙を届け、今川についていたら100年経っても三河三河者の元には返ってこない、ここは織田につくべきだと説く。

十兵衛は、いよいよ家計が逼迫してきたため、朝倉家に仕官しようとするが、蹴鞠に興じる義景を見て失望し、信長を救出すべく左馬助とともに尾張へ向かう。

登場人物の満年齢(1560年)

氏名 誕生日後の満年齢 役者の年齢
明智十兵衛 32 42
煕子 30 32
織田信長 26 27
帰蝶 25 25
松平元康 17 36
源応尼 68 68
於大の方 32 36

今日の煕子&十兵衛

「(米がないので、駒から送られてきた薬草を半分売りたいと告げ)かような話、申し上げるべきではないと存じますが、……申し訳ございませぬ」
「そうか、このままではいかんと思っていたが、……」

雑感

桶狭間で桁の違う大軍を相手に信長が勝ちえたのは、正面から戦わず、大軍ゆえに兵站が伸びたところを見定め、全戦力をもって大将首を狙ったからだ。それをこのドラマでは、先鋒の元康が裏切ったからだということにしたいようだが、これは史実と相当に乖離しており、個人的には気に入らない。

煕子がいよいよ切羽詰まって、十兵衛に「食べるものがない……」と訴えるが、そりゃ働き盛りの男が二年も無職でいれば生活も苦しかろうよ。それでも煕子が謝らなければいけないのか。ちょっとあわれ。

あわれといえば、駒が布や薬草を送ってくれて、皆で喜ぶのだけど、生活が逼迫しているからこうした差し入れは実際に嬉しいのだろうけど、駒がなぜこんなに親切にしてくれるのかというと、もちろん十兵衛の父が駒の命の恩人だから、なのだが、駒が十兵衛のことを好いていた(恐らく今でも)ことを煕子が知らないはずがなく、本当は面白くないのではないだろうか。

東庵と元康の将棋の勝負は東庵の圧勝である。元康も、かつて織田信勝に手加減をしたほどだから、弱くはないと思いたいが、いくら人質とはいえ、松平家の当主として大事にされてきた身である。そんなおぼっちゃん将棋が、百戦錬磨の東庵に勝てるわけがない。信勝に手加減をしたくだりは、元康が強いのではなく、信勝がどうしようもなく弱かった、というだけの話なのではあるまいか。

その元康は、駒に好意を寄せているようで、愚痴を漏らしたり、生きて帰ってくると軽々しく約束したりしているが、彼は既に瀬名と結婚し、この一年前には信康を授かっているのである。物語に登場しないからいい気になって駒と仲良くしているけど、「おんな城主直虎」を見た視聴者は、菜々緒の顔をちゃーんと思い浮かべて、「おいおい」と思っているのである。
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十兵衛が蹴鞠に興じる義景に失望するシーンも引っかかるところ。かつては武士の蹴鞠といえば軟弱というイメージが一般的だったが、「おんな城主直虎」を見たわれわれは、蹴鞠は時に軍事力よりもはるかに強い力を持つことを知っている。これは、十兵衛にはまだそれがわからない脳筋者だということを言いたかったのか。

於大の方から元康への手紙の主旨は、生き延びてほしいということだった。菊丸は織田につくべきと力説したが、3000対25000の戦いである。生き残ることを考えるなら25,000に付いた方がよいのは明らかだ。おまけに視聴者には知らせていないけど瀬名と信康が駿府にいるわけで、裏切ったら殺されるに決まっている。だから瀬名と信康を登場させなかったのか……?

過去記事

水野信元はきっと再登場するだろうという勘が当たった。


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(2020/6/5 記)