第一部・完。非常によくできた話だったし、終わり方も良かった。もしかしたら、やろうと思えばあと1~2回はできるが、きりがいいからここで終わりにした、とかだったりするのだろうか。予告編がちゃんとできていたから。
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あらすじ
1560年5月18日、大高城、松平元康&菊丸
今川から離反し織田に味方するよう説く菊丸に対し、元康は「松平軍が織田軍に合流したとして、今川の大軍に勝てるのか、自分は部下に勝ち目のない戦を強いることはできない。駿府には妻子を残してきているが、この者たちの命も保証されぬし、自分は生涯、裏切り者の烙印を押されるだろう」と言って撥ねつける。
5月19日、4:00
元康が丸根砦を攻撃。
6:00
清須城で、梁田正綱が信長に、元康が調略に応じなかったと報告。信長は家臣たちに籠城策を取ると告げ、「敦盛」をうたう。今川軍は20,000以上というが、駿府にも6~7,000残してきているはず、鳴海城に3,000、鷲津砦に2,000、大高城に2,000とすれば、……今川本軍はどのくらいかを調べ、善照寺砦に報告に来るように梁田に指示。自分も向かうと。先ほど籠城だと指示したのは、清須にも今川の手の者が入り込んでいるだろうから、それを欺くため。
信長は帰蝶に、会わせたい者がいると言って赤子に引き合わせる。吉乃(きつの)が生んだ、奇妙丸、自分の子だと。この10年、自分は帰蝶を頼りにしてきたし今もそうだ、しかし自分たちには子がいない、家中にはそれを心配する者もたくさんおり、それで側室を持った。自分が死んだらこの子を育ててほしい、尾張を任せると告げる。
8:00
丸根砦陥落。鷲津砦も陥落(鷲津を攻めたのは朝比奈泰朝)。その様子を睨みつつ、信長出陣。善照寺砦へ向かう。
9:00
今川義元、沓掛城を出て大高城を目指す。
光秀、清須に到着、帰蝶に会う。帰蝶は珍しく気弱な顔を見せ、来てくれたのは嬉しいが、殿は出陣してしまった、もはや打てる手は何もない、なぜもっと早く来てくれなかったのかと恨み言を述べる。光秀も善照寺へ向かう。
10:00
善照寺砦。信長軍は丸根・鷲津から逃れてきた者を含めて3,000。今川軍は7~8,000。もう少し敵の数を減らす手はないか検討。
10:30
大高城、凱旋して帰城した元康を鵜殿長照が褒めそやす。そして、朝廷より沙汰があり義元公が三河守に任じられたと告げる。いつかは元康が三河をというかすかな希望が断ち切られる。信長軍が出陣したので成海城へ行くように指示。元康は、戦から戻ったばかりで疲れ切っている、ゆうべは大高城へ兵糧を運び込んだため一睡もしていない、明朝まで待ってほしい、せめて一時休ませてほしいと答えるが、聞き入れられない。
桶狭間、今川本軍が休息を取っている。そこへ中島砦から織田軍がやってきたとの報が入る。鷲津を落とした朝比奈泰朝の軍を向かわせようとするが、まだ戻って来ていない。どうやら乱取りに精を出している様子。義元は怒り、本隊から1,000を向かわせることに。
雑感
- この物語では(これまで)瀬名姫が出て来ないので、駒ちゃんとの恋物語を描くためにいないことにしているのか? と下世話な想像をしていたが、冒頭で元康はいきなり妻子持ちであることを告白していた。
- 「わしの子じゃ」と言って奇妙丸に引き合わされた時の帰蝶の表情が絶賛を浴びているが、嫁いで10年経っても子ができないのに、聡明な帰蝶が何も手を打たなかったのだろうか? 養子を迎えるか、側室を持つよう帰蝶が薦めるべきだった(自分の親類なり侍女なりを紹介すればコントロールもしやすかろう)。また、たとえ側室の子といえどそれが跡継ぎなら自分が育てなければならぬ。それがわからぬ帰蝶ではあるまい。自分の夫に隠し子がいた! とショックを受けるのは現代的感覚だと思うが、わかっていてなお複雑な女ゴコロ、というところだろうか。なおこの時は既に信雄も徳姫も生まれていたはず。さすがに三人もいるとは言えなかったのか。
- 元康が鵜殿の指示(鵜殿によって伝えらえた義元の指示)に従わなかったのは、もともと義元には逆らえないので従っているものの、義元は倒さねばならない敵だと思い続けてきたこと、義元が三河守に任じられ、義元に従っている限り三河は自分のものにはならないとモチベーションが切れたこと、が主な理由であろうが、三河の兵を人間扱いしない今川方のやり方に腹を立てたためもあろう。ただし義元にしてみれば、三河軍がうしろから織田軍を攻めてくれれば、挟み撃ちにされた織田は滅び、この戦に勝てたはずなので、指示は必ずしも間違っていなかった。鷲津を攻めた朝比奈泰朝が乱取りを行なっていて戦線復帰が遅れたことを義元は激怒していたが、泰朝軍も事情は同じで、鷲頭を攻め落としたばかりなのだから、少し休みたかったのが本音ではあるまいか。戦況がそれを許さなかったわけで、三河軍だから格別にひどい扱いだったというわけでもなさそうだ。とはいえ、いくら理不尽な内容でも命令違反に変わりはなく、今川が勝っていたらあとで大問題になったと思うがそこは元康はどうするつもりだったのだろうか。
- 大軍と言われているが喧伝されているほどの人数はいないはずと分析し、さらに戦力を分断させる手を打ち、決して運に頼らず桶狭間を戦った今回のドラマは実に見応えがあった。ここ最近は帰蝶の軍師ぶりが目立ち、信長が操り人形のように感じられる時もないでもなかったが、今回は帰蝶の思惑を飛び越し、信長自身の準備と判断、決断力で勝ち取ったわけで、その点も爽快だった。
- 駒が駿府を離れる前に芳仁という老人に会いに行くのだが。このオッサンは何者なのだろうか。恐らくこれが今生の別れとなるはずで、全く意味がわからないのだが、これがあとで何かの伏線になっているのだろうか。
- これまで、光秀の前ではいつも強気でエラソーだった帰蝶が、はじめて弱気な顔を見せる。また、片膝をついていたが、光秀にこの姿勢は初めなのでは。浪人とはいえ、もはや斎藤家の家臣(立場的に自分より下)ではないからか?
雑感追記(2020/6/15)
- 合戦の時に織田勢が槍を使用していたのはとても良かった。毛利新介が仕留めたのも槍だったし。ただし今川軍が刀だったのはいただけない。本当は今川軍も槍で、しかし織田の槍の方が長くて有利だった……という展開であれば最高だったが、いわば(合戦はチャンバラという)様式美というか伝統美を守ったということか。
- 光秀は信長の一時間後に清須を出ているので、善照寺から桶狭間へ出陣する時は余裕で間に合ったはずだが、従軍しなかった。戦が終わるまでどこぞで戦況を見守っていたのだろう(信長と会う場所で本当にようやく追いついたのなら結果を知らないはずだが、勝ったことを知っていた)。光秀は、あくまで信長を見守るだけで、命を懸けて一緒に戦う義理も必要もないということか?
- 越前を出た時は左馬助と二人だったが、信長と会った時は光秀一人だった。左馬助はどこで消えた……。