これぞザ・戦国! という、ゾクゾクする回だった。
あらすじ
前回、上洛の意思を固めた朝倉義景は、前祝の宴を開く。そこには光秀も呼ばれていた。光秀に招待の意を伝えに来たのは山崎吉家。山崎は光秀に次のように伝えていた。「上洛の件、わしは何があろうと殿に従う所存だが、上洛には莫大な金がかかる。大勢の兵を京に滞在させるとなると、いったいどれほどの兵糧を用意すればよいのか……家臣の中には反対する者も少なくないのだ。そのことをわきまえていてほしい」と。
宴では、義景が上機嫌で「我が子、阿君丸に、京が見たいと言われてはのう」と上洛の決意を語るが、朝倉景鏡はそれにつっかかる。上洛と簡単にいうが、いったいどのような勝算があるのか。上洛すれば三好と戦になる。織田、上杉、六角ら連合であたるというが、上杉は武田の脅威があって動けず、六角は三好に通じている。あてにはならないのでは、と言い、諸国の事情に通じておられる明智殿のご意見は? と光秀に振って来る。
義景が「構わぬ、本日は無礼講じゃ、思うことを申してみよ」と促すと光秀は、景鏡様の言う通りだという。そして戦への備えが何もできていないことを指摘し、「上洛? はっ、論外かと!」と吐き捨てる。
その後光秀は美濃へ行き、信長に、単独で上洛すべきと進言し、信長はこれを受け入れる。三淵には、織田さまは決めたら早いが、朝倉さまはまだ家中をまとめ切れていない、この二人は共同歩調は取れないと伝える。しかし、だからといって義昭を今、越前から美濃へ行かせたら義景の面子は丸つぶれになるから、何としても阻止されるだろう。
そこで三淵は、本当は上洛したくない山崎吉家、朝倉景鏡とひそかに善後策を練る。その結果は、阿君丸の毒殺だった。
我が子を失った義景は、上洛の意欲も失い、美濃へ行く義昭にも厭味を言うだけ。そして舞台は美濃へ移る……
雑感
子供が死ぬのはつらい。まして阿君丸は、ややわがままなところもあるが、聡明さも感じられ、何より義景が目の中に入れても痛くないほどの溺愛ぶりであったから、ショックだったが、よくよく考えてみると……
越前で平和に暮らしているのに、上洛などしたら、お金もかかるし、三好と戦になれば命を失うかも知れない。そんなことはやりたくない。阿君丸と毒見女は気の毒であったが、それ以外の誰一人命を失うことなく話が収まったのである。戦の回避策としてはすぐれた方法であった。
何年か前に、二言目には「戦は嫌でござります」という人物が主人公の大河があったが、戦を回避しようと思ったらこの程度の手は打つものなのだ。それが戦国時代なのだ。田渕久美子、見ているか?
なおこの奸計に明智光秀、細川藤孝は関わっていない。妙に正義感の強いこの二人には、真相を知らせない方がよいという判断だろう。事後、全く何も知らない二人が、お気の毒なことになりましたな、などと言い合っているのも(事情を知っている視聴者からすると)なかなかよかった。なお二人は、子どもがともに六歳になったそうである。地道にフラグを立てるなあ。