窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

「カムカムエヴリバディ」(09)/第二週-木

放送日

  • 2021年11月11日

概要

夜になっても安子が帰ってこないので両親ともに心配しているところへ安子が稔とともに帰宅。

稔、安子、金太、小しずの四人での話が始まる。……ところに、杵太郎、ひさも参戦。最初はギャグパートで、雉真さんはよく家のお菓子をお買いいただいていますが、という杵太郎に、稔は、父は大事なお客様には橘のお菓子を出すと決めている、決め手は餡です、と答え、杵太郎はニヤニヤする。店の職人さんたちも廊下でこっそり聞き耳を立てている。

金太から、どういう付き合いかと訊かれた稔は、昨年お店で知り合い、以後、手紙のやりとりをしていると答え、安子さんとの交際を認めてほしいと申し出た。

雉真のご長男であれば、それに相応しい縁談もあろう、あなた一人で決めることはできないのでは、と尋ねる小しずに、稔は、自分はこれまで二代目としての教育を受けてきて、それを疑問に感じていなかったが、安子さんと出会って変わった、親の決めた相手ではなく安子さんに一緒にいてほしいのだと言う。

しかし金太は、家にはもう安子しかいない、安子を橘から出すことはできないと答える。そして、居住まいを正し、今日は安子がご面倒をおかけしました、と深く一礼すると、稔も、夜分に失礼しましたと言って帰る。

家を出た稔を追いかけた安子は、私も稔さんと一緒に、ひなたの道を歩いていきたいと告げる。

急遽自宅に泊まった稔は、父に、これからお菓子などはどうなるかと訊くと、砂糖が食用としては手に入らなくなるから、小さな菓子屋は潰れるだろうと答える。

勇は兄に、自分もずっと安子のことが好きだったのだと告げる。

今日の稔と橘家の人々

稔「雉真稔と申します。大阪商科大学予科に通うとります」
ひさ「雉真いうんは、あの雉真繊維さんですか」
杵太郎「あの足袋と学生服の」
金太「なんなら。寝とったんじゃねえんか」
杵太郎「騒がしうて寝とれるか」
稔「おっしゃる通り、雉真繊維の経営者、雉真千吉は僕の父です」
ひさ「やっぱり。お見掛けしたことがありますけど、あれは立派なええ男ですうふふ」
稔「恐れ入ります」
杵太郎「よううちの菓子を注文してくださって」
稔「はい、父は特に大事なお客様には、橘さんのお菓子と決めておるようです」
杵太郎「いやあ、それはそれは。御父上は、なにゆえそのように気に入ってくださるのですか」
稔「やはり、餡子が決めてかと」
杵太郎「いやあはは。さすが、よくわかっておられます。で、特にどの菓子が」
稔「おはぎが」
杵太郎「いやあ……二番目は」
金太「なんの話をしよんなら。……それで、安子とはどないな付き合いですか」
稔「はい、去年の夏にこちらのお店で知り合うてから、手紙のやり取りをしよりました」
金太「そいで」
稔「僕は、正式に安子さんとの正式なお付き合いを認めていただきたいと思うております」
金太、小しず「……」
稔「今日、突然、安子さんが大阪に僕を訪ねてきました。映画を見たり、食堂に行ったり、川を眺めたり。安子さんはずっと笑いよったけど、どこか様子がおかしかった。急行で岡山まで追いかけて、事情を聞きました。砂糖の生産会社の息子さんとの縁談が進められよること、それを受け入れると決めて、最後に僕に会いに来たこと。無礼を承知で言います。砂糖の会社と手を組んだところで、店の経営はようはなりません」
金太「なんでじゃ」
稔「大阪に暮らしておると、岡山にいるよりもずっと戦況を肌で感じます。今後、菓子そのものが贅沢品とされて、製造に規制がかかるかも知れません」
金太「そげんこと、にわかに信じれるか」
稔「すみません、差し出がましいことを言いました」
小しず「あの、安子とお付き合いしてえいうのんは、本当なんでしょうか」
稔「はい」
小しず「そげんことができるんですか。雉真繊維のご長男じゃったら、それに相応しい縁談がきっとあるはずじゃのに、あなたの一存で決めれることなんですか」
稔「僕は子供の頃からずっと、雉真繊維の後継ぎとして生きてきました。常に父の教えに従い、学問に打ち込み、後継ぎに相応しい教養と品格を身につけようと努めてきました。いずれ、親の決めた相手と結婚するじゃろうということにも、何の疑問も持っておりませんでした。ですが、安子さんに出会うてから、僕の目に映る景色は一変しました。安子さんは言いよられました。甘うておいしいお菓子を、怖え顔して食べる人はおらん。怒りよっても、くたびれとっても、悩みよっても、自然と明るい顔になると。親の決めた相手じゃのうて、安子さんとともにおりたい。安子さんとともに生きたい。安子さんにそばにおってほしい。それが、嘘偽りのない僕の気持ちです」
金太「あんたの気持ちはわかった。あんたがええ加減な人間じゃねえのも、ようわかった。じゃけど、安子を橘から出すわけにはいかん。もう、うちには安子しかおらんのんじゃ
稔「……」
金太「今日は安子が面倒をかけました」
稔「夜分にお邪魔しました」

雑感

金太が家長としてしっかりしてきた分、杵太郎とひさがすっかりギャグ要員と化したが、今回はいい仕事をした。あれで座を暖めたからこそ、稔の告白がスムーズに行った面はあるだろうと思う。この二人がそれを意識してやったかどうかはわからないが。

とにかく稔の話は見事の一言で、その場にいた人は皆、「安子ちゃんの相手としてあなたほど相応しい人はいないよ!」と思っただろうが、だからといって素直にはいと言えないのが結婚というもの。金太は断わったが、仮に金太がよしと言っても、雉真のご両親の許しを得るのは簡単ではなかろう。

実際、いきなり橘を訪ねて話をした稔は、実家に帰って両親にこの話をするのかと思ったが何も言わなかった。折を見てと思ったか。話が簡単ではないことを稔もわかっているのだ。しかしこうした話は一刻も早く伝えた方がいい。ぐずぐずしていると、断われない縁談が降ってくるぞ。

ところで勇は、昨年の夏で二人は終わったと思っていたんだと思う。兄が大阪へ帰ることを安子に伝え、夏休みは終いじゃと言ったのは、二人の住む世界が違うことを悟らせるため。まさか安子が見送りに行くとは思わなかっただろうし、それがきっかけで二人が文通を重ね、会えない時間に愛を育てていたとは知らなかったはず。

が、しばらくぶりで帰省した兄が、やたらに菓子屋のことを心配するのを見ていて、ああ安子のことをまだ好きなんだなと気づき、だったら兄には自分の気持ちを話しておこうと思ったのだろう。

ところで、小しずも金太も「ら抜き言葉」をしゃべりますね。昭和初期に既にこういう言い方があったのか?

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