第八週「1951-1962」(月)
放送日
- 2021年12月20日
概要
勇の求婚に安子は返事ができず、何日も過ぎた。食卓で、算太は店舗にする手頃な物件が見つかったこと、あとは信用金庫の貸し付けが通ればたちばなが再建できると千吉に報告。千吉は、信用金庫に行くなら身なりが大切と、背広を算太にプレゼント。安子と勇は気まずい。
千吉にもらった背広を着た算太。そのお直しをする雪衣。算太は雪衣に、ここを出る時に一緒についてきてほしいと話す。雪衣は答えない。
安子はきぬに相談。きぬは勇との再婚を薦めるが、そこへロバートが通りかかり、ロバートを見る安子を見て、またしても何事かを察してしまう。きぬは安子に、今日は店に来なくていいと言い、自分が何がしたいのかはっきり決めるように伝える。
安子はロバートとDippermouthへ行き、自分は日本語がわからない人にもたちばなのお菓子を食べてもらいたい、日本の良さを知ってもらいたい、そういう生き方をする自分をるいに見てほしいとロバートに話す。ロバートは、安子には敬服したと言い、花を買ってプレゼント。ところがその様子を通りすがりの勇に見られてしまう。
その夜、安子は千吉に話をする。たちばな再建の目処が立ったから、自分はこの家を出て行くと。千吉は、るいと別れることになるがいいのかと問う。安子はるいを連れて行くというが、千吉は拒否。るいは雉真の子として生きるのが一番いいのだと諭す。
その頃勇は一人で飲み、店の人に喧嘩を吹っ掛け……
今日のるいと千吉
「るい、しいたけが嫌えて英語でなんと言うんじゃ」
「I hate mushroom.」
「かしけえのう」
今日のきぬと安子
「これまでが不自然じゃったんじゃ。再婚もせんと雉真の家におって、おはぎを売りながらるいちゃんを育てるじゃなんて」
今日のきぬと安子とロバート
「ヤスコ! ハイ!」
「ロバートさん」
「……なるほど」
今日の安子とロバート
「Take care, Robert.」(初めてロバートを呼び捨てにした)
雑感
安子の気持ち
自分の周囲には、ロバートがぐんぐん安子との距離を縮めてきているとか、ロバートは稔にどこか似ているとか言う人がいたが、僕はロバートは安子にとってただの「いい人」であって、それ以上の気持ちなどないと思い込んでいた。毎回のように回想で稔が登場し、ひなたのセリフを繰り返すのだから、安子の中は稔でいっぱいで、他の人が入る隙などないと思ったのだ。
考えてみたら、ロバートは安子の作るおはぎをおいしいと言い、おはぎ作りにどれだけ心を込めているかに興味を持ち、それを褒めたたえた。また英語の技能を認め、英語のテキスト作りを依頼し、その力を発揮する場を与えた。安子にとっては、自分が一番知ってほしいことを知っていてくれる人であり、自分の力を高めてくれる人である。
対して勇は、進駐軍との野球の試合に勝ったら安子に結婚を申し込もうと勝手に決めていたが、もとより安子は野球などに興味はない。安子がおはぎを売ることは認めているものの、小豆を煮ている時に平気で話しかける、英語にも興味がなく、というよりむしろ兄を殺し、自分も死ぬ思いをした敵国の言葉を忌み嫌っているようだ。これでは安子といい夫婦になれるはずがない。
それにしても、きぬから「勇ちゃんのことは好きでしょ」と訊かれて「好きだけど……」と答えた顔と、ロバートから声をかけられた時のパアッと花が開くような明るい笑顔とではまるで違う。きぬちゃんじゃなくても、誰が見ても安子の気持ちは明らかだった。
それにしても、これまでが不自然だったときぬが安子にズバリ言ってくれてよかった。それを安子に言えるのはきぬだけなのだ。
結局、安子は家を出る決意をするが、ここのところがよくわからない。
大阪から岡山に戻ってきたのは、るいを雉真の子として育てるため。それは、安子も納得したはずだ。だから、るいと一緒に暮らすためには、安子も雉真にいるしかない。るいを連れて家を出るなどということが許されるはずがないのは火を見るより明らかではないか。たちばなの再建とかいうことはどうでもいいのだ。勇の求婚を受け入れられない以上、この家にはいられないと考えてのことだろうが、美都里がおかしかった時に、どんなに意地悪をされても我慢するからこの家に置いてくれと言ったくらいなのだから、勇ときまずいくらい我慢できないことはないだろうと思うのだが。
安子は、口ではるいが一番だと言うが、こういう重大な決意をする時、るいのことを一番に考えていない。雉真の家から出るのも、るいが残って母親だけ出て行くのも、るいの幸せではないだろう。千吉は、そういう安子をもどかしく感じているのだろうなあ、と思う。