窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

「カムカムエヴリバディ」(52):決意

第11週「1962-1963」(金)

放送日

  • 2022年1月14日

概要

ジョーは言う。もしコンテストで優勝できたら、東京で暮らすことになると思う。だから一緒に東京に来てほしい。サッチモちゃんと一緒に生きていきたい、と。るいも同じ気持ちだが、額の傷を気にして受け入れることができない。

コンテストが近づいているのにジョーの調子が上がらない。るいから返事がないのが気になるのだが、視聴者にはそれがわかるが小暮もベリーもわからず、気を揉んでいる。ベリーは、小暮が外へ出てジョーと二人になった時に、サッチモと何があったの? 私には聞く権利があると思う、と切り口上で尋ねる。

ベリーは竹村クリーニング店を訪ね、るいを連れ出す。せっかく譲ってやったのに、ジョーからプロポーズされて返事もしないとは何事かと。るいは答えに詰まり、額を押さえる。ベリーは、何とか言いなさいよ、とつかみかかろうとした時に髪の隙間から額を見てしまう。それで事情を察した。るいがジョーを嫌いなわけではないこと、でも、これを気にして受け入れられないこと。「でも、返事だけはしてあげて。このままやったら、ジョーは勝てない」と言い残し、静かに去る。

翌日は雨。ジョーが演奏会用の衣装を買いにダブラスへ行くと、店の前にるいがいる。一緒に買い物をしようと待っていたのだ。るいは、これまでの奥床しさが嘘のように、陽気にしゃべり続ける。ジョーが口を挟もうとするが挟ませない。とにかく一式を選んで、試着するように言う。ジョーが着替え始めると、試着室の前でるいは話す。大月さんなら優勝できる、東京へ行っても成功する。アメリカへ行っても……そうしたら自慢します。私は大月錠一郎の演奏を生で聞いたことがあるんだぞ、って……。るいは別れるつもりでここへ来たのだ。

着替えを済ませた大月を見て、少し派手だから別の衣装にしようを選び始めるるいを、今度はジョーが追い詰める。逃げ場をなくして試着室に入り、カーテンを閉めるるい。そのカーテンをジョーは開ける。るいはジョーに背を向けている。が、正面に鏡があり、二人は鏡越しに見つめ合うことに。るいは髪をかき分けて額を見せる。それを見たジョーはそっとるいに近寄り、手を下ろさせ、自分の方に振り向かせ、髪を元のように整える。そしてハグをした。るいは今度は逃げない。さらに唇を寄せようとして――ダグラスの店員がじっと注目していることに気づき、カーテンを閉める。

今日のベリーと小暮

「久しぶりやなベリーちゃん。なんや、学生みたいなカッコして」
「当たり前や、学生なんやさかい」
「えー」
「単位取って、来年こそは卒業せんとあかんねん」

今日のジョーとるい

「なんで僕じゃあかんの」
「あたし、東京なんかに行きたくないんです」
「なんで」
「遠いから」
「もうすぐ夢の超特急ができるよ」
「おじさんおばさんとも離れたくないし」
「僕とは離れてもええの?」
クリーニング屋の仕事もやめたくない」
「僕のシャツ、洗ってほしい」
「いややわ。毎日毎日ケチャップべったりついたシャツ」
「もうホットドック食べるのやめるよ」

雑感

久しぶりにきゅんきゅんする話になった。いい終わり方で週末を迎えられてよかった。

ジョーの気持ち

ジョーが傷を気にしないのはわかっていたけど、どう気にしないのかはずっと気になっていた。

片桐は、何も言えなかったけど、もし何か言うとしたら、「僕は気にしないから」とかになるのではないか。ジョーも何も言わなかったが、戦災孤児のジョーは、目に見えるところに傷はないけれど、彼もあちこちに傷を持っているのではないか。ジョーがもし何か言うとしたら、「僕も傷だらけだよ。一緒に傷を抱えて生きて行こう」とかになるのでは……。でもそこは、いちいち説明しなくても共鳴したってことだ。

38話との対比

るいが安子に額を見せて I hate you と言った時と意図的に同じ展開になっている。

どちらも雨が降っている。るいは自分で扉(カーテン)を閉める。額の傷を相手に見せつける。

あの時、安子は、閉めた扉を開けてくれなかったけど、るいは本当は、扉を開けてほしかったのだと思う。るいが本当に「母親から捨てられた」と思ったのは、扉を開けてくれなかった時ではないだろうか(安子には酷な言い方だけど)。ジョーは開け、るいを受け止めてくれた。生まれる前からるいを見てきた者としては、ジョーにありがとうと言いたい。

衣装選びをるいに頼んだ理由

るいが店に配達で来た時に、小暮は、ジョーの衣装選びを手伝ってくれないかとるいに頼む。ジョーと気まずいるいは、もちろん断わるのだが、この時小暮はなぜるいに頼んだのだろうか。僕は、こういう時こそベリーの出番ではないかと思った。贅沢を知らないるいよりも、明らかにベリーの方がファッションセンスはあると思うから。それにジョーが買えない高価な服もプレゼントしてくれるかも知れないし。

ネットで、るいはジョーの服をすべて知っているから、という指摘があり、なるほど、と思った。確かにるいは全部知っているし、全部知っていることを小暮は知っている。それでか。が、今再度視聴してみたところ、ジョーの不調の原因がるいにあることは小暮はわかっていて、衣装選びにかこつけて二人で会う機会を作り、何の話か知らないけどちゃんと話てすっきりしなさい、と言いたかったんだろうと思った。

その他

  • ずっと二人をチラチラ窺っていたダグラスの店員が今日のMVP。気付かれた途端に、あさっての方向を向いてごまかそうとするところとか。でも狭い店内であんな派手な痴話げんかをしていたら、気にするなという方が無理。
  • ジョーは優勝に自信ありげだけど、関西には他にめぼしいトランペッターはいないのか? もしトミーとジョーが優勝候補なら、Night & Dayも相当なレベルの店だということになる。まあ、コンテストを開催するくらいだから、関西のジャズバーの中ではそれなりのポジションなんだろうなあ。

(2022/01/15 記)


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