窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

進路を決めるということ

親戚の叔父さんに会う機会があり、面白い話を聞いた。

叔父さんの年齢は暢子の15歳ほど上なので、やや上の世代であるが、地方育ちで、四人兄弟という点は似ている(比嘉家とは違い、女一人・男三人で、叔父さんは次男)。入社試験を受けるのに夜行列車に乗ったというあたりで、地方度が想像できる。

両親とも健在であり、周囲に比べて叔父さんの家だけ特に貧困ということはなかったはずだが、時代が時代であるから、贅沢はできないし、欲しいものもなかなか買ってもらえなかった。家に枇杷売りがやってきて、親父に挨拶する。枇杷を買ってくれるのかな、と思って期待するが、挨拶だけして買わない。桃売りのおばちゃんがくる。旦那、安くするから買ってよーと言われうんうんと頷いている。これは買ってくれるかと思うが、結局買わない。だから、早く働いて独り立ちしたかった。働いて、給料をもらって、枇杷でも桃でも好きなだけ買ってやる、とずっと思っていた、という。

高校を卒業して建築会社に入った。ここはどういう理由で決めたのか、自分に向いていると思ったのか、と尋ねてみると、親父がこういうところがいいんじゃないかといい、学校から紹介された会社を受けたら受かったからそこに入ったという。入ったはいいけれど、この仕事は自分には向いていないかも知れない、みたいなことを考えたことはなかったか、と重ねて訊くと、仕事のことが少しずつわかってくると、だんだん面白くなっていった。だから、会社は途中で何度か変わったけど、この仕事を辞めようとは思わなかった、とのこと。

このような話を聞いて、とても深く頷いたのだ。恐らく、当時のごく一般的なやり方だと思うが、非情に真っ当な進路決めである。つまり、どういう仕事が向いているか、ということより前に、「早くお金を稼ぎたい」なのだ。そこをすっとばして、向いているかどうかで悩まないと思う。

見るのをやめた今となってはどうでもいいけど、比嘉家の子の考え方は、理に適っていなかった。



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