窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

「鎌倉殿の13人」(18)

題名

  • 「鎌倉殿の13人」第18話「壇ノ浦で舞った男」

放送日

  • 2022年5月8日

概要

苛烈さを増す源平合戦。必死の抵抗をみせる平宗盛率いる平家軍に対し、源頼朝義経に四国、範頼に九州を攻めさせ、逃げ道をふさぎにかかる。しかし範頼軍は周防で足止めをくらい、義時・三浦義村らが状況の打開に奔走。一方の義経軍も、後白河法皇の命により摂津から動けずにいた。そんな中、梶原景時の献策を一蹴した義経が……。(NHKオンデマンドの解説より)

義経の連戦連勝に沸く鎌倉だったが、「強過ぎる」義経を危惧した頼朝は、総大将を梶原景時に変更し、義経には戦に出ないよう指示を出す。が、現地では、義経を引っ込めるわけにいかず、参戦。壇ノ浦では船から船へ飛び移る奮迅ぶりで平氏を圧倒。ついに勝利するが、安徳天皇も神器も失ってしまう。

頼朝は義経を鎌倉に呼び戻す。義経を手放したくない後白河法皇は、検非違使の身分のまま、罪人である平宗盛を連れていくという名目で鎌倉に派遣する。が、腰越で足止めを食い、ついに追い返される……。

雑感

回を追うごとに面白さが増してくる。いろいろ複雑に絡み合っているので、簡単にまとめるのは難しいけれど。

壇ノ浦は、前半のクライマックスになる(ぐらい派手に描かれる)かと思ったが、あっさり終わった。今回は源氏の側から描いているため、平氏側の内情は描かれない。見ている立場からしたらこんなものだったかも知れない。勝っても全然嬉しさが涌いてこない。こんなに盛り上がらない壇ノ浦もなかったのではないか。もちろんこれは視点と力点の問題で、今回はこれでいいのである。

毎回「いい人」から順番に殺されていく。今回は壇ノ浦だから大勢死ぬのだが、白眉は平宗盛だ。この人はとかく暗愚に描かれることが多く、このドラマでも初登場で清盛に怒鳴られていて、ちょっと抜けている感があったが、実はすごくいい人だった。

壇ノ浦を生き延びて義経軍に捕らえられると、堂々と「死は恐れない」と言いつつ「首は何処かに晒されようが、せめて胴体は息子・清宗と一緒に葬ってもらえないか」と訴える(義経は鎌倉についたら頼朝に掛け合ってやると答える)。その後、義経は宗盛に、兄と関係がうまくいっていないと「悩み相談」。宗盛は、自分は兄とは信頼し合っていたと言い(維盛とはいろいろあったと思うが、平氏一門は結束が固かったのは確かだ)、文を書いてはどうかと提案する。義経が文は苦手だと言うと、代筆を持ちかける。

この手紙に、頼朝の官位を誤解した部分があって、それが頼朝をいっそう怒らせるのだが、宗盛はそれを狙ってわざとしたのではなく、結果的にミスはしたが、最後に少しでも義経の役に立とうとしたのだろう。小泉孝太郎の顔はそう語っていた。引き渡しの前日、義経は清宗を連れてきて、親子で対面させる。今宵は語りあかすがよかろう、と。

まだ宗盛は処刑されていないが、処刑は決まっており、これが最後の出演で、以後の登場シーンはないはずである。宗盛を「いい人」に描くドラマも異色だが、いい人に描いておいて(生が)終わりとはなんと残酷な脚本であろうか(褒めている)。

非戦闘員である船の漕ぎ手を狙って矢を射るなど、戦に勝つには手段を選ばず、非情な人間に見えた義経も、兄との関係に悩み、宗盛に人情味あふれるところを見せ、以前腰越に来た時(第8話)に芋煮を振舞ってくれた藤平太らにお礼の芋をプレゼントする……。

芋煮を食べさせてもらったエピソードはすっかり忘れていた。

戦のあと、海辺に大勢死体が転がっているのを見た時、ああ、五十嵐がこんなにおおぜい頑張っている……海辺で死ぬのは大変だろう、今は寒いし、と思った。死体に感情移入したのは初めて。
(2022-05-09 記)



映画ランキング