窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

「ばけばけ」1~2週概括

10話まで見たが実に面白い。事前に不安に思っていたのはどこへやら、名作の予感がビンビンする。いや、既に名作である。

これまで通して見た朝ドラ作品は「カムカムエヴリバディ」「舞いあがれ!」「らんまん」「ブギウギ」「虎に翼」「あんぱん」とわずか6作だから、朝ドラの伝統とかパターンとかはわからないが、かなり斬り込んだ作品ではないかと思う。

オープニングロールが動画・アニメではなく静止画(写真)というのは初。昔はこれが当たり前だったのだろうが、今の時代は一回まわって斬新だ。

ナレーションというのは、登場人物のセリフだけでは伝わらない背景説明などをするために必要なのだが、今回のナレは、そうした解説もすることはするが、自らも観客として声援を送ったり、不安を口にしたりする。「朝ドラ受け」を番組中にやっちゃっているのである。これはかつてなかったのではないか。自分はちょっとうるさく感じるけど。

一話目で主人公の家族を描いたと思ったら、二話目でいきなり北川景子堤真一を投入する。初週は福地美晴の愛らしさでつかんだと思われたのに、わずか4日で切って高石あかりを出す潔さ。怒涛の展開である。

本作にはあちこちに「怖いこと」が仕込まれている。怪談仕立てだからだろう。

フミがお見合いの席で転んで勘右衛門にお茶を引っかけてしまったとか、チラと顔を見ただけの人と結婚しなければいけないとかの話は、作中の人物が「怖い」と声を挙げるのでそれと知れる。が、それ以外にもさまざまある。

トキが遊郭に売られそうになるのは、司之介がアホなことをやって借金を背負ったからだが、雨清水家の工場で働く女性はみな没落士族の娘で借金を背負っているとサラリと明かされた。うさぎの販売などといった怪しげな商売に手を染めなくても、結局は借金を負うことになるのだ。怖い話だ。

明治19年にもなって家に武士が二人もいることも怖い。武士武士といいながら、他人の家の障子は破く、柱に鉄砲をかます、商売の牛乳を盗むのも怖い。こうしたことを家族は知っていて誰も咎めない。これも怖い。司之介は横領がバレて来週あたりクビになるのではないか。

雨清水家で三之丞が透明化されているのも怖い。傳とすれ違っても傳が目を合わさなかったことがあった。ひとことくらい声をかけてやればいいのに。女工におやつをふるまったりするくらい優しくて気の回る傳なのに、なぜ三之丞を無視するのか。武家の三男とはそんなものといえばその通りなのだろうが、何か理由があるのか。

第9話で、傳とタエにトキが抱きつくのを見た氏松が、「そんなことをしている場合か……」とつぶやくシーンがあった。あれは当初、近くにいた三之丞に対して「遊んでないで手伝え」と言ったのかと思ったが、視線は三之丞ではなく両親に向かっているから違うだろう。血がつながっているとはいえ、今ではよその家の子なのに、あんなに可愛がって、という嫉妬か? それとも、雨清水家は今大きな問題を抱えていて、トキの見合いなどにかまけている場合ではないということか? 後者だとすると、裕福に見える雨清水家も内情は厳しいのか?

長男と三男は登場するが、次男が登場しないのも不思議。

怪談というのは、たとえば毛むくじゃらで牙が生えている物の怪が目の前にいたら怖いけれど、あるはずのものがない、いるはずの人がいない、というのも十分に怖いものである。誰もいないはずなのに気配がする。気配がするけど何も見えない、というのも。

雨清水家と松野家の関係、特にトキの出生については当初から謎であったが、これは第10話で一端が明かされた。

来週も「怖いこと」が散りばめられていくのか、それとも謎が解けていくのか。目が離せない。
(2025-10-15 記)


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