窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

「ばけばけ」(012)

  • 第03週「ヨーコソ、マツノケヘ。」

放送日

  • 2025年10月14日(火)

概要

トキが働く機織り工場が、景気悪化で資金難に。社長であり親戚の雨清水傳が金策に繰り出し、その間、雨清水家の三男・三之丞が社長代理を務めることになった。トキやチヨ、せん、女工たちにも不安が広がっていく。一方、松野家では勘右衛門による銀二郎への跡取り教育が過熱していた。そんなある日、金策中の傳が倒れてしまう。(公式サイトより)

感想

松野、雨清水両家の歪みが露呈してきた。

冒頭で傳が「工場の経営が厳しいとわかった今、わしは金策に走らねばならぬ」と言う。してみると、これまで工場の経営が厳しいことをわかっていなかったのだ。そんな経営者がいるか。氏松は父に相談もできずに苦しみ、追い込まれてしまったのか。

傳は三之丞に工場の管理を任せる。三之丞は父が自分の名前を憶えていたことに驚いていたくらいだから、よほど長い間会話をしていなかったのだろう。それでいきなり任せると言われても、任された方は困る。傳は「大変だろうが、頑張ってくれ。お前ならできると信じている」ぐらいのことを言ってやればいいのに、「氏松は出奔、竹松はこの世にいない、お前しかいないだろう」と身も蓋もない言い方をするだけ。あわれ三之丞は番台に黙って座るのみ、女工たちから「今までお味噌にされてきたから、何をしていいかわからないのよ」と言われる始末。

松野家では勘右衛門が朝から銀二郎に剣を厳しく指南する。慣れぬ仕事で疲れているだろうに……。その上、単に未熟だというだけでなく、「格の低さが身に付いてしまっている」などと酷いことを平気で言う。「すべてにおいて格の高い武士としてのふるまいをせい」と叱るが、そのその銀二郎は、貧しいくせに武士にこだわる父親が嫌で家を出たのだ(11話)。しかも自分の家を格が低いとディスられ、いろいろ言いたいこともあるだろうが、ぐっと我慢して飲み込み、勘右衛門に従う。

一日が終わり、若い夫婦がひととき、並んで座って怪談話をしようとするが、銀二郎はもっと離れて座るようにトキに言う。勘右衛門からの指示で、くっついて座るのは格が下がるからダメなのだそうだ。そんなの格に関係あるか!

勘右衛門と銀二郎が、「何か言いたいことがあるなら申せ」「ありません」と言い合うシーン、銀二郎とトキが「もう少し離れて」「このくらいですか?」とやり合うシーンは非常にコミカルで笑えたが、実はかなり酷いやりとりである。銀二郎の心が折れないか心配だが、われわれはごく自然に松野家の婿に対する態度を批判的に見てしまうが、これ、男女が逆であれば、世の中の多くの「嫁」がごく普通に体験して来たことではないのか。「嫁」を「婿」にしたことで、うまくあぶり出している作劇だ。

傳は金策に走るがうまくいかず、ストレスと過労で倒れてしまう。雨清水家は、女中の給金が払えず全員に暇を出した。そのため、タエは初めて襖を自分の手で開けることになった。これまで一人で襖を開けたことがなかった! スゴイ!

そして傳のため、タエ自ら粥を作ろうとするが、作り方を知らない。一度に全員に暇を出さず、一人残して、これまであなたたちのやっていたことを私に教えてちょうだい、と言えばよかったのだろうが、タエとしては女中に頭を下げることなどできなかったのか。

傳が胸を押さえて倒れるシーンは、「あんぱん」の寛先生を彷彿させる。傳さん死なないよね!?



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