登美子が自分の意思で再婚したと思っている人が多いようだが、そんなわけはないと思う。出入りの三河屋さんと仲良くなって、二人で出奔したわけではないのだ。登美子個人に再婚相手を探す力はない。
夫が亡くなって困り果て、寛に相談した時、嵩はわしが預かっちゃる、おまんは嵩を置いて再嫁せえ、わしがいい相手を探しちゃると言い含められたと考えるのが自然だ。
「カムカムエヴリバディ」でも、稔が亡くなった時に千吉は安子に同じことを言った。安子は従わなかったが、その代わりに、るいを連れて夜逃げする羽目になった。当時の女は「無能力者」で家長の言うことは絶対。嵩にとってもおまんにとってもそれが一番ええがじゃ、と言われたら逆らえない。
登美子が嵩にも千尋にも、亡き夫にも強い思いを残していることは第一話で伝わって来た。望んだ結婚ではないだろう。とはいえ家の中のことは千代子がおり、外で働くこともできず、居場所がなかったのも事実だ。登美子にできたのは、日一日とずるずると先延ばしにすること。しかし、いつまでもそれではダメだ、前を向かなければと、あの日、決意をしたのだろう。
朝田家の場合は全く事情が違う。仮に釜次が同じように考え、羽多子をどこかに再嫁させたら、たちまち一家が困窮することは火を見るより明らかだ。だからそんな話にはならない。
釜次らは登美子を、子どもを置いて再婚なんてと揶揄していたが、上流家庭には上流階級の、釜次には見えない問題があるのだ。

