スーパー超A級のサスペンス・パニック映画「キャプテン・フィリップス」

二日前に「ザ・コール」を観た時、近年で一番、これを超える作品はそうはない、と思ったものだが、前言撤回。凄い作品だ。来年のアカデミー賞にいろいろ絡んでくるのではないだろうか。

題名キャプテン・フィリップス(Captain Phillips)
監督ポール・グリーングラス
原作リチャード・フィリップス、ステファン・タルティ「キャプテンの責務」
出演トム・ハンクス(リチャード・フィリップス、マースク・アラバマ号船長)、キャサリン・キーナーアンドレア・フィリップス、リチャードの妻)、バーカッド・アブディ(ムセ、海賊リーダー)、ファイサル・アメッド(ナジェ、海賊)、マハト・M・アリ(エルミ、海賊・操縦係)、バーカッド・アブディラマン(ビラル、最年少の海賊)、ダニエル・アルバート(オブライエン看護師長)、他
公式サイトキャプテン・フィリップス |オフィシャルサイト
制作USA(2013年11月29日日本公開)
劇場109シネマズ川崎

内容紹介

ソマリア(アフリカの一番東側の国)沖で2009年に実際に起きた「マースク・アラバマ号」乗っ取り事件(米船長人質事件)の映画化。

アメリカのコンテナ船マースク・アラバマ号は、インド洋を航海中、ソマリア沖で4人組の海賊に襲われる。フィリップス船長は船にある現金3万ドルを渡し、これで引き上げるよう説得するが、こんなはした金では帰れないと嘯く。

船員が機転を利かせて海賊リーダーのムセを捕獲。解放の条件として、脱出艇で帰ることを約束させるが、フィリップスが操縦法を説明している隙に海賊はフィリップスを捕まえ、人質としてソマリアまで連れて行くことに。船を乗っ取れなかった代わりに高額な身代金を要求する腹だ。

事態を重く見たアメリカは、海軍特殊部隊であるSEALsに出動を命じる……

雑感

アラバマ号 vs 海賊、海賊 vs アメリカ海軍は常に一進一退を続け、どう転ぶか最後までわからない。このスリル、このサスペンスは出色で、サスペンス映画として一級品。

主人公のフィリップ船長が無敵のヒーローではなく、誇りや責任感で自分を支えてはいるものの、実は弱い人間である、弱い人間だけど、必死で自分を支えて事件を解決に導く姿を描く。これが加わって超A級。ただしここまでは「ザ・コール」と同じ。

本作にうならされたのは、それに加えて社会的背景をきちんと描き、敵役の海賊も単なる悪人にしなかったところだ。ムセはもともとは漁師なのだという。しかし近頃は魚が取れなくなり、漁師では生活できない。なぜかといえば、先進国が最新の技術を投入してソマリア海域の漁業資源を根こそぎ取って行くからだ……。

彼らは私利私欲のために海賊行為をするわけではなく、背後にある「組織」に半ば強制されていること、海賊で奪った金品は自分たちのものにならず、組織に吸い上げられてしまうことも描かれる。なるほど3万ドルの現金では満足できなかったはずだ。彼らの行為は肯定できないとしても、彼らもかわいそうな人たちなのだ。

ムセが「アメリカに渡って自動車を買い、ニューヨークに住む」と夢を語ったり、傷ついたビラルを気遣ってフィリップが手当てをしてやったり、フィリップが「水がほしい」とつぶやくとビラルがそっと飲ませてやったり、パニックになったナジェがフィリップに暴力をふるうとムセが「アイリッシュ(フィリップのあだ名)を傷つけるな」と制止したり、かすかに敵味方を越えた心の交流が芽生えかけたことを暗示するシーンもあった。

だからこそ最後のシーンの悲惨さが際立った。どのような事情があろうが、あの時点ではああせざるを得ないことは(少なくとも我々には)理解できるが、それで真の解決がなされたわけではないこともわかるわけである。こうした事情を「付加」した分、ドラマに深みが増している。ここまで描かれたものがなかなかお目にかかれない。

ラストをだらだらと続けず、一瞬でカットアウトした処理も見事。

配役

キャッチフレーズ

「乗組員を救った感動実話が完全映画化」。なんで自分から「感動」なんて押し付けがましい言い方をするのかな。このキャッチには全く感動できない。

今日の英語

  1. "Are you OK?" "Yeah, I'm OK." "You don't look OK."(「大丈夫ですか?」「ああ、大丈夫だ」「そうは見えないわ」)