窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

18年前の忠臣蔵

CSで1991年にNHKで放映された「大石内蔵助 冬の決戦」が昨日・今日と放映されていたので見る。

感想

浅野内匠頭が登場しないのは驚いたが、前編・後編あわせて3時間のドラマだから、そういう切り口もあるだろう。……と思ったのだが、じゃあどういう切り口だったのか、今ひとつよくわからず。りくがナレーションをしていたので、大石の妻の立場からの物語かと思ったがそうではないし。

見終わって思ったが、やはり忠臣蔵吉良上野介が悪役でないと盛り上がらない。見ている人が、なんという憎たらしい爺さんだ、あんな奴はやられて当然だ、と思うようでないと、討ち入りが正当化されない。本作の吉良は別に悪人ではなく、「さっさと引退していれば、あのような事件を引き起こすこともなかった」とか、「あの一言が浅野の恨みをかったのか、悪いことをした」とか、むしろいい人である。

上野介はよい政治を行なって地元の庶民から慕われていたことがわかってきており、また、内匠頭は今でいうヒステリー気質だったのではないかと言われていて、史実しては、上野介を一方的に悪人に仕立てるのは難しい。吉良の血を引く人が生きていることもあり、いくらドラマだとしても、あまりに史実とかけ離れた中傷はしにくいのだろう。

本作でも赤穂浪士たちは片手落ちの裁断をくだした幕府にその恨みを向けているのだけど、だったら吉良を討つのは筋が違うという話になってしまう。城の明け渡しを求めてきた幕府の使者と一戦交えて散ればよかったのだ。

赤穂浪士は、私怨によるテロリズムである。老い先短い老人を、47人の男が寄ってたかって殺したのである。結構ひどい話なのである。それをひどい話ではなく美談にするには、吉良が強烈な悪人でないとドラマツルギーが成立しないのである。