窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

笑って泣いて、……そして哀しい「31年目の夫婦げんか」

題名31年目の夫婦げんか
監督デヴィッド・フランケル
出演メリル・ストリープ(ケイ、妻)、トミー・リー・ジョーンズ(アーノルド、夫)、スティーヴ・カレル(医師)、他
公式サイト映画『31年目の夫婦げんか』公式サイト
制作USA(2013年7月26日日本公開)
劇場TOHOシネマズ シャンテ

内容紹介

結婚31年目の夫婦。二人の子供たちも家を出、今は二人暮らし。愛人がいるわけでも、喧嘩をするわけでもないが、なんのときめきも感じられず、ろくな会話もなく、寝室も別にしたままの生活に疑問を感じたケイは夫婦でカウンセリングを受けることを提案するが、アーノルドは現在の生活に何の疑問も持っておらず、カウンセラーというのは夫婦に危機感を呷って金を巻き上げるだけの詐欺師だという。

ケイは嫌がる夫を強引に連れ出すが……

雑感

冒頭はケイが年齢に似合わぬ(?)かなり大胆な夜具を着て、ドキドキしながら化粧をするシーンから始まる。そして夫の寝室へ行き、「今晩は一緒に寝たい」という。アーノルドはきょとんとした顔で「エアコンが壊れたのか?」と尋ねる。(爆笑)

「そうじゃなくて、あたなと、その……したいの」「ああ、なるほど……。しかし今日はちょっと体調が」「もういいわよっ」と物別れに終わる。こういうシーンはよく漫画やドラマで描かれるが、見ていると猛烈に腹が立ってくる。セックスと言うのはペニスをヴァギナに入れること(だけ)ではないだろう。妻にこう言われたら「おいで」といって隣に寝かせ、肩を抱き、髪を撫ぜてやればいいじゃないか。ケイが求めているのは、そういうことではないのか。

と同時に、こうした夫婦のセックスレス問題は、日本に限らずアメリカでも多いのかと妙に驚いた。少なくともこうした映画が作られるということは、単なるギャグではなく「あるある」と受け入れられる下地があると制作者が判断してのことだろうから。

それにしてもメリル・ストリープの演技力には舌を巻く。序盤、夫婦の会話だけで、つまり彼女の学歴も職業も、周囲の人の彼女に対する態度もわからない段階で、彼女はかなり知的レベルの高い、教養ある夫人であるということが見て取れる。ついでに恥ずかしがり屋でシャイな人であることも。それは目つきであったり、話し方であったり、化粧の仕方であったり、そうした(わずかな)ものから感じるのだ。まあ、家の中はそれなりに贅沢な作りなので、貧しい家ではないことはわかるのだが。

そういう人である、ということを観客に最初に理解させてこそ、このストーリーが生きると思う。言葉でいうのは簡単だが、それが体現できる女優は少ないのではないか。

映画の制作方法として、「おとなのけんか」を思い出した。あれに比べれは主人公は移動するし、豪華なレストランで食事をしたりもするが、基本的にはカウンセリングルームとホテルの室内で話が進む。セットは簡単、ロケは必要なし、登場人物も極めて少ない、だからこそ役者の演技力が命という作り方だ。そしてさすがはメリルとトミー。見事に演じ切った。

音楽

劇中で「Let's Stay Together」がかかって仰天した。これは(僕の敬愛する)paris match(パリスマッチ)の5枚目のアルバム「♭5(フラット・ファイブ)」(2004)に収録されているもので、てっきり彼らのオリジナルだと思っていたのだ。調べてみるとオリジナルはアル・グリーンが1971年にリリースした曲で、ビルボートのシングルチャートで1位を獲得している(イギリスでは7位)。その後1983年にティナ・ターナーがカバーしてビルボードで26位、イギリスでは6位と、これまた世界的にヒット。その後数多くのかばーバージョンがリリースされ、paris matchもそのひとつ、というわけ。知らなかったよ。

今日の英語

  1. It works.(大丈夫だ)
  2. My turn?(話しても?)

どちらも英語会話かなにかの語学番組で「今日の表現」になりそう。ちなみに1はトミー、2はメリルのセリフ。

過去記事

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