窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

「怨み屋」という商売

「怨み屋」のビジネスを考えた時に、いくらやられても仕方がないような悪い奴が相手とはいえ、冷酷な「処理」を眉ひとつ動かさず、冷静に実行できるか、という点はともかく……その点をスルーすると話が始まらないような気もするが、それは仮定しないとほとんどすべてのミステリーが成り立たなくなるので、とりあえずそれはできるとする。

この商売の最大の問題は、如何に顧客を見つけるか、だろう。非合法なことをやっているわけだから、大々的に宣伝するわけにはいかない。裏社会の中だけで動くならやりようはあるのかも知れないが、ドラマの「怨み屋」は(これまでのところ)常に素人(一般市民)を顧客としている。ドラマの中では、強い怨みを感じた人がふと気付くと、身の回りに怨み屋の名刺が落ちている。「怨み屋」にどんな霊感が働いているのかはわからないが、顧客候補を敏感に感じ取り、その人に営業をかけて回っているということだろう。

また、ビジネスをする上で「過去の実績」というのはとても大切だ。実績が積み重なって高い信用が得られれば、それが口コミで顧客を呼び寄せることにもなり、金額その他の条件も有利に運べる。が、この商売は、商売をする側も顧客も、絶対に秘密を守らなければ身の破滅なのだから、実績を公表することができない。なんの実績もないのに、何百万あるいは何千万という金額を提示してすんなり払ってもらえるのは疑問だが、ドラマではこのあたりはスルーしている。

こうした点、「ゴルゴ13」はよくできているなあと思う。基本的に顧客は国家機関や大富豪である。だから調査能力も強力で、仕事の「成果」をいちいち宣伝して回らなくても、顧客の方がよく知っていて不思議がない。そもそもデューク東郷のようなプロのテロリストを育成できるのは国家機関もしくはそれも準ずる組織だけだろうし、そうなれば利用するのも彼らになる、ということか。

民間で「怨み屋」のような商売を、一般市民相手に行なう、というのは、何重にも不可能の壁があるように思う。だからこそドラマになるのかな。