まだこの作品を観たことのない人は、この機会に観るべきだ。15年前、劇場で観た人も、もう一度観るべきだ。DVD(ビデオ、ブルーレイ)を持っている人は、ディスクを持つくらいこの作品が好きなら、ぜひ劇場で観るべきだ。誰かれ構わずそう言いたくなるくらいの超A級作品。再び劇場で見られて、3Dさまさまである。
事件が起きたのは1912年4月14日だったんですね。ちょうど100年前だ。
題名 | タイタニック(原題:Titanic) |
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監督・脚本 | ジェームズ・キャメロン |
出演 | レオナルド・ディカプリオ(ジャック・ドーソン)、ケイト・ウィンスレット(ローズ・デウィット・ブケイター)、ビリー・ゼイン(キャルドン・ホックリー、ローズの婚約者)、デビッド・ワーナー(スパイサー・ラブジョイ)、フランシス・フィッシャー(ルース・デウィット・ブケイター、ローズの母)、グロリア・スチュアート(ローズ・カルバート(101歳のローズ))、スージー・エイミス(ローズの孫娘)、ビル・パクストン(ブロック・ロベット、トレジャー・ハンター)、ルイス・アバナシー(ルイス・ボーディーン、ロベットの相棒)、キャシー・ベイツ(マーガレット・ブラウン、「不沈のモリー・ブラウン」・実在の人物)、バーナード・ヒル(船長:実在の人物)、ヴィクター・ガーバー(トーマス・アンドリュース、タイタニックの設計主任・実在の人物)、他 |
公式サイト | 映画「タイタニック」オフィシャルサイト 4月7日公開 |
制作 | USA(1997年12月20日、3D版は2012年4月7日公開) |
時間 | 194分 |
劇場 | 109シネマズ川崎(IMAX) |
粗筋
ローズは、家柄だけはあるが借金を抱えた貧乏貴族の娘。アメリカに着いたら富豪のキャルと結婚することになっている。だがローズはキャルが嫌いだし、このような堅苦しい上流階級の一員となって人生を過ごすことにものすごく閉塞感を持っている。とはいえ結婚は厭だと母親におずおずと言うと、ルースは「じゃあ私にお針子をしろというの? 家財を競売にかけろというの? わが家は家名だけはあります。あなたがホックリー氏と結婚するしか解決の道はないの」と娘に詰め寄る。家財を売り払い、お針子でもなんでもすりゃあいいじゃないかと思うが、それは現代の感覚であり、100年前の常識はまた別だろう。彼らがどこの出身でなんのためにアメリカに行こうとしているのかは不明だが、階級を重視するところから、イギリスの出身でアメリカに新天地を求めて移住しようとしているのか。それにしては荷物が少な過ぎるようだが、単なる旅行にも思えない。
ジャックは、ウィスコンシンの出身で、画家として一旗揚げようとパリに行ったもののうだつがあがらず、アメリカに戻れるものなら戻りたいと思っていた。ラッキーなことに賭けポーカーに買ってタイタニックの3等の切符をせしめることができ、友人のファブリッツィオとともに乗り込み、ここでローズと運命の出会いを果たすことになる。
発作的に身投げをしようとしたローズをジャックが助けたところから二人は知り合う。当初はローズの我儘で気の強い性格を扱いかねていたジャックだが、もともと絵の素養のあった(当時まだ無名であったピカソやモネを高く評価し、その絵を買い込んだりしていた)ローズがジャックのスケッチを見てから態度が変わる。その日暮らしのジャックの生活は、ローズからみればすべては新鮮。たちまち二人が惹かれあうのはお約束である。
そのまま船が無事にニューヨークに着いていたらどうなっていたかわからないが、4月14日に悲劇が訪れることになる。
物語は事件の84年後、トレジャー・ハンターのブロック、ルイスらがタイタニックの捜索を行ない、失われた宝石「碧洋のハート」を探すところから始まる。ジャックが描いたローズの肖像が見つかり、それをテレビで見たローズ(101歳)が「あれは私だ」と気づいて彼らに連絡を取る。そして、彼女の回想によって1912年の物語が始まる……というスタイルなので、視聴者は、ローズが生き残ることはわかっているのだが、それでもハラハラする。
いったん家族の目から逃れ、ジャックと船内逃避行をするローズだが、船が沈むかも知れないと知り、かつ、多くの乗客がそれを知らないため、家族に逃げることを促すため家族のもとに戻る。ジャックは宝石泥棒の汚名をきせられ(実は嵌められたのだが)捕らえられて船倉につながれる。しかしキャルと逃げることを拒否したローズはジャックを助けに船倉に向かう。
ジャックとローズの熱愛ぶりを見せつけられたキャルは本気で怒り、二人を殺そうとするが(ジャックを殺してローズを取り戻そうとした、のではなく、二人を殺そうとしたんだよね?)、辛くも二人は逃れて再び(浸水が始まっている)船倉へ。そこから苦労してデッキに出るが、もちろんボートに乗れるわけもない。船は二つに折れたり、船尾が跳ね上がったりして、それに巻き込まれた多くの人が海に落とされたが(あの高さから落ちたら、いくら下が水でも即死だろう)、ここはジャックの機転で切り抜け、静かに海面に脱出。
流れてきた戸板にローズを乗せるが、一人で満杯。水をかぶったまま寒風にさらされれば、いずれローズも長くは持つまいが、零下2〜3度という海面に首まで浸かったジャックは、ほどなく凍死。ジャックの死を確認したローズは、自分もと思いかけるが、死の直前に、「何があってもあきらめない」ことを約束させられたローズは、最後の力を振り絞って助けを呼ぶ……
感想
最後の方、夜の海に投げ出されたジャックとローズが見上げた夜空の星が、やけにきれいで印象的だった。海上の悲惨な事故と、天空の美しさの対比が鮮やか。
3時間15分という長い作品は経験がない(15年前に本作を観た時以来だ)。「リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド」は3時間28分だったけど、途中で5分のトイレ休憩があった。近年、とみに集中力が衰えているので、飽きずに見られるかどうか、若干の不安があったが、結果的に、全く時間を気にせず見入ってしまった。「アバター」などもそうだが、ジェームズ・キャメロンの「一瞬たりとも飽きさせない」作り方は驚かされる。ただし、3D眼鏡をかけ続けるのは少々疲れた(IMAXの眼鏡は軽いと思うが、それでもちょっと疲れた)。
15年前に観た時は、その少し前に知人が観に行っていて、「絶対にハンカチを忘れないように!」と強く言われていた。その人は妙齢の女性だったため、泣くかも知れないけど、恋愛ドラマでいちいち泣くかあ? と思って観ていたところ、クライマックスのシーンでは涙が止まらなかった記憶がある。今回は、既にストーリーを知っているからさすがに泣くことはないだろうと思っていて、実際ジャックが死ぬ場面は感動的ではあったけれど泣くほどのことはなかったのだが、ローズが生還し、その後の人生を駆け抜け、101歳に戻ったあとでもうひと場面、時計の前で待っているジャックにカメラがローズの視線で向っていき、ジャックが振り向いて手を差し伸べてくれるシーンではやられた。最後にこんな場面を持ってくるなんて、ひどい。いや、嬉しい。
話はよくできている。もし事故に遭わず、船が無事にニューヨークに着いていたらどうだっただろうか。途中で船内駆け落ちをする二人だが、食事もしなければならず、着替えも必要で、いくら広いとはいえ逃げ切れたとは思えない。到着まで逃げ切ったとしても、船を降りる時にどうしたってつかまる。
その問題を仮に乗り越えたとして(乗り越えられないと思うが)、ジャックは恐らくその日の夜も泊る場所の当てのない身である。一人なら橋の下に寝てもいいだろうが、ローズと二人、そんな生活は何日もできない。お嬢さん育ちのローズが耐えられないだろう。こういう言い方は身も蓋もないが、事故に遭い、ジャックが死んだことで、二人の愛は昇華したのである。
101歳のローズが、「ジャックはあらゆる意味で私を救ってくれました」という。この「あらゆる」という意味は重要だ。もともと、船から身を投げようとしたローズをジャックが「君が死ぬなら僕も一緒に」と言って止める。事故が起きると「死ぬなら一緒に」といって行動をともにするのだが、ジャックが死んでもローズは死なない。それは、死ぬ直前のジャックが、「何があっても諦めるな。最後の最後まで生き残る努力をしろ。約束してくれるね?」と言って「わかった」と言わされたからだ。それがなかったら、ローズのその後の84年の人生もなかったことになる。
ローズが部屋に飾っている若い時の写真を見ると、馬にまたがった勇ましいシーンがある。馬に乗るというのはジャックが薦めたことである。キャルは本当にローズのことが好きだったようだし、キャルも生き残るのだが、二人が結婚しなかったのは事情が不明である。ジャックの手がついたローズをキャルが嫌ったのか、今度こそローズがはっきりと断わったのか。生死の境を越えて、ルースもさすがに娘に不本意な結婚を押し付けるのは諦めたのかも知れない。いずれにしても、ローズ自身も生き方を変えたのだ。そのきっかけはジャックだったということだろう。
それにしても、今この映画を見ると、15年前には決して考えなかったことを、始めから終りまで考え続けてしまう。恐らくほとんどの日本人が同じことを思い浮かべたと思うのだが。
頑丈に作ってあるから決して沈まない、と作った人も、乗っている人も思い込んでいて、救命ボートは人数の半分しかないし、緊急時の連絡系統も、ボートの遣い方も、何一つ訓練されていなかった。氷山があると警告も受け取ったのに、船長はそれを軽視した。こうしたことが被害を大きくしたわけだが、どこかの国の原子力発電所と同じだなあ、と。だから僕らは「危機意識が薄かったんだねー、100年前だから仕方ないけど」という感想を持つわけにはいかないのだ。
101歳のローズがいい味を出している。ロベットが「思い出したことだけでいいですから、教えてください」と頼むと、「あら、全部聞きたくないの?」と言い返す。聞き終わったと、「ジャック・ドーソンなどという人物のことは初めて知りました」と言うと、「当然よ。初めて喋ったんだもの」と答える。なかなかどうして食えない婆さんである。
モリー・ブラウンもいい味を出していた。成り上がり者でゴシップ好きと、他の人からは疎まれているが、ジャックがキャルから食事に招待されると、服は持っているのか気遣い、息子の服を貸し与えたり、フォークの遣い方を教えたり。若いローズにはそこまでの気が回らないだろう。ボートに乗り移ったあとも、「まだ空席がある、溺れている人を助けに行こう」といい、他の人に無視される(態度で反対される)と「溺れているのはあなたがたのご主人なんですよ!」と怒鳴ったり。結局多勢に無勢で救出は叶わなかったけれど、カッコ良かった。
3D
タイタニックの概観が映しだされた時の大きさ、甲板から下を覗き込んだ時の高さなどを実感させられるという点において、3Dの意味があった。観客席に向かってものが飛んでくるとかいう虚仮おどしよりも、こうした使い方こそが本来の3Dの意義なのかも知れない。
Academy Award
第70回(1997年)アカデミー賞において、作品賞、監督賞、撮影賞、主題歌賞、音楽賞、衣裳デザイン賞、視覚効果賞、音響効果賞、音響賞、編集賞の11部門受賞。主演女優賞ではケイト・ウィンスレットが、助演女優賞ではグロリア・スチュアートがノミネートされたが受賞に到らず。
配役
ケイト・ウィンスレットはその後名前を聞かないなあと思ったが、「愛を読むひと」(2008)でアカデミー主演女優賞を獲得したのをはじめ、各種の賞を総なめしている演技派女優として高名らしい。僕が見たことがないだけだった。しかし、世間的には一番有名なはずのこのローズ役、本人は気に入らないらしく、タイタニックの音楽を聞くと今でも吐き気がするらしい。残念だ。
過去記事
- ジョージ・ハリスンを描いた大作「リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド」(2011/12/14)
リンク
- 『タイタニック 3D』 (2012) / アメリカ(Nice One!! @goo、2012/04/24)
- 『タイタニック3D』を観て(水今novels、2012/04/26)
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