テレビ版からさらにスケールアップした展開で、十分に堪能した。予習をしておいて良かった。本作を愉しむためにはテレビ版を知っておいた方がいいのではないか。
題名 | ストロベリーナイト |
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原作 | 誉田哲也「インビジブルレイン」 |
監督 | 佐藤祐市 |
出演 | ■テレビ編からのレギュラー/竹内結子(姫川玲子、警視庁捜査一課捜査十係主任)、西島秀俊(菊田和男、姫川班)、宇梶剛士(石倉保、姫川班)、小出恵介(葉山則之、姫川班)、丸山隆平(湯田康平、姫川班)、生瀬勝久(井岡博満、所轄の巡査部長)、渡辺いっけい(橋爪俊介、警視庁捜査一課管理官)、高嶋政宏(今泉春男、警視庁捜査一課捜査十係係長)、遠藤憲一(日下守、警視庁捜査一課捜査十係主任)、武田鉄矢(勝俣健作、警視庁捜査一課捜査五係主任)、田中要次(小峰薫、警視庁鑑識課主任)、津川雅彦(國奥定之助、監察医) ■映画編のみ/大沢たかお(牧田勲、龍崎組若頭補佐)、金子賢(川上義則、牧田の弟分)、石橋蓮司(龍崎神矢、龍崎組組長)、鶴見辰吾(藤元英也、龍崎組若頭)、染谷将太(柳井健斗、漫画喫茶勤務)、横山美雪(柳井千恵、健斗の姉)、田中哲司(長岡征治、刑事部長・警視監)、三浦友和(和田徹、捜査一課長)、今井雅之(宮崎真一郎、組対四課係長)、柴俊夫(片山正文、組対四課主任)、他 |
公式サイト | 『ストロベリーナイト』公式サイト |
制作 | 日本(2013年1月26日公開) |
劇場 | 新百合ヶ丘:ワーナー・マイカル・シネマズ |
粗筋
広域暴力団・龍崎組の末端の構成員である小林充の死体が発見された。既に龍崎組の構成員が2名殺されていることから、暴力団同士の抗争が有力であると判断。捜査一課の姫川班と日下班、そして組対四課が合同で捜査に当たることに。
捜査線上に柳井健斗の名が浮上。が、その名前に触れるなと上層部から圧力がかかる。納得の行かない玲子は単独で捜査を始めるが……
雑感
ドラマファン、特に菊田ファンにとっては全く納得のいなかい話だ。まさかあれで幕切れとは。最後に一芝居あると思ったのに……フラストレーションたまりまくりである。
玲子の恋
これまで男を寄せ付けなかった玲子が恋をする!? 菊田との三角関係は? というのは上映前から盛んに喧伝されており、本作の見せ場のひとつだ。大沢たかお扮する牧田のことが好きになるのだろうことは、だから事前にわかっていたのだが、ここまで激しい濡れ場が演じられるとは驚いた。この映画はPG12指定で、それは死体がグロいからか? と思っていたのだが、このシーンがあるためか。
これは、玲子にとっては良かったことだと思う。玲子のために喜びたいと思う。かつて暴行を受け、心身に深い傷を負っていた玲子は、恐らくこれまで男と付き合ったことはなかったのだと思う。男と付き合うこと、特に性行為に関して恐怖と嫌悪感が先立っていたはずだ。しかし、一生そのままでいいはずがない。だから、自分から望んでそういう行為をした、できたというのは彼女がトラウマを克服する重要な第一歩であり、素晴らしいことだと思うのだ。
これまでテレビ編からずっと姫川玲子を見てきて、玲子に対しそれなりの気持ちを抱いていた自分としては、菊田というより井岡に近い気持ちで、「玲子ちゃわ〜〜ん〜〜〜」と思いながら彼らの行為を客席から眺めていたわけだが。ま、観客の自分らはいい。二人の行為を目の前で見せつけられた菊田の心境はいかばかりか。
菊田、あるいは姫川班の末路
全編にわたって雨が降り続けた本作だが、最後の最後にカラッと晴れ、気持ちのいい青空が広がる。事件は解決し、一部の上層部が隠蔽しようとした事実も明らかにされ、ハッピーエンドを迎えるかと思いきや、恐らくは上司の指示を無視して勝手な捜査をしたかどで、全員所轄に配置転換、姫川班は解散となってしまう。
菊田の思いが通じない、永遠の片思いであっても、そして牧田との行為を見せつけられるようなことまでしても、何らかの形で玲子が構ってくれる限りにおいてはそれはプレイの一環だ。そうであればM男君の菊田には耐えられる。でも別れ別れになってしまい、縁も切れるのだとしたら、それは耐えられないことだ。
だから玲子に何か言ってほしかった。「絶対捜一に返り咲いてやる。菊田! そん時はアンタも呼び戻すから、そのつもりでいなさいよ!」とか、「所属が別々になっても、アンタの手を借りたいと気が出てきたら連絡するから、その時は私の頼みごとを優先的にやりなさいよ」とか。陳腐なセリフだな……。もっと気の利いた言葉があると思うが、要するに、これで縁が切れるわけじゃないよ、私はアンタのことを忘れないよというメッセージだ。
しかし、何も言わずそのまま歩いて去ってしまった。これでよかったのか……多くの人が不満に感じたに違いないラストシーンだ。ただ、映画作品としては、あの晴れ間は印象的だし、その晴れ間の中で彼らにとって絶望的な宣告が下るというアンバランスさは絶妙。