窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

毛利攻めが終わったら桜を見に行きましょう/「軍師官兵衛」第27話「高松城水攻め」

粗筋

  • 高松城は湿地に囲まれた天然の要塞だが、それを逆手にとって水攻めという奇想天外な策を官兵衛が進言する。突貫工事の指揮は石田光成。
  • 勝ち目がないと悟った毛利は恵瓊を通じて和睦を申し入れてくる。秀吉の条件は5ヶ国(備中、備後、美作、伯耆、出雲)と清水宗治の命。一計を案じた官兵衛は小早川隆景に会いに行き、宗治に毛利を裏切って織田につくよう進言。そうすれば宗治の命は助かると。宗治を死なせたくない隆景は、宗治に毛利を裏切るよう説得したが、宗治は、それならば自分は死ぬ、そのあとで秀吉と和睦してくれと伝える。
  • 明智光秀安土城を訪れた徳川家康の饗応役を命じられた。最上のもてなしをすべく、料理は京風の薄味にしたが、信長から家康の面前で叱りつけられる。家康の好みに合わせよと。
  • 勝利を確信した秀吉は、信長に助力を依頼する。主君以上の手柄を立ててはいけない。最後の詰めは信長にやらせた方がいいとの判断だ。
  • 秀吉から援軍の依頼を受けた信長は、光秀に、饗応役は他の者にやらせるから秀吉のところに行くよう指示。自分もあとから駆け付けると。さらに、光秀の領地である近江・丹波を召し上げるつもりだと聞かされ、光秀は青ざめる。信長は「単なる国替えだ」と言うが、替える先は毛利からぶんどった領地だと言われては、空約束に等しい……
  • さらに光秀は、信長から「この国に王は二人いらぬ」と聞かされる。これを聞いた光秀は、ついにある決心をするのだった。

雑感

  • 突貫工事の指揮を執るのは石田光成。近所の村から土嚢を買い取るのに少々散財してしまいましたが、と、かかった費用を打ち明ける光成に、秀吉が青くなって「おぬし、わしを破産させる気か!」「負けたら銭をいくら持っていても何もならぬと」「誰がそのようなことを言ったのじゃ!!」「官兵衛様が」「……官兵衛の言う通りじゃ」。いつも通りのベタなコメディだが、これはこれで面白い。秀吉がなぜ官兵衛をここまで贔屓にするのかは、よくわからないが。
  • 土田御前が突然、信長に対する態度を反省する。お濃は、義母様を連れて花見に行きましょうと。毛利攻めが片が付いたらいくらでも連れて行ってやると。こういうわかりやす過ぎるフラグは好きじゃない。でも知っているからフラグとわかるので、そうでなければ感動するところかなあ。母里武兵衛がお国と結婚の約束をした時は、まさか死ぬとは思わなかったから驚いたもの。
  • ところで、肝心要の水攻めと毛利との交渉の場面だが、ここが「見応えがあった」という声が多いけど、僕はチンプンカンプンであった。秀吉勢が堤防を築いている間、高松城の面々は何をしていたのか? まさか水攻めとは思わず、何をしているのか見当がつかなかったとしても、自分らの領内で勝手なことを(しかも大規模な土木工事を)しているのだ。妨害工作は当然と思うが、矢の一本も飛んでこなかったのはどういうわけか。清水宗治といえば毛利配下随一の豪将と言われるが、僕には呑気な間抜けにしか見えない。堤防を築いている二週間の間、高松城の人たちはいったい何をしていたのか、その説明がほしい。
  • この時、毛利本体は遠方にいて、高松城に援軍を送ったが間に合わず、それまでに高松城が落とされてしまった、ということかと思っていたが、官兵衛がさくっと隆景に会いに行ったということは、会いに行かれるだけの近くにいたということである。まさか隆景が手勢だけでいたわけもなく、何千か何万かの軍を率いていたんだろうから、なぜ宗治に加勢しない。毛利が上月城を攻めた時は、秀吉軍だけでは対抗できなかった(から、尼子が滅びるのを指をくわえてみているしかなかった)のに、なぜ今の毛利は、この秀吉軍と相対することすら避けようとしているのか。とにかく毛利の弱さ、脆さばかりが描かれ、とても西国に覇権を築いた大大名とも思えないのだ。
  • 光秀が信長から、饗応役を解任され、秀吉を助けるように言われたあと。秀吉としては面白くないかも知れないが、とにかく指示があった以上、素早く行動を起こさなければ、さらに怒りを買うだけだろう。饗応役を解かれたならもう安土にいる理由はない。さっさと国元に帰っていくさ支度をするべきである。支度が出来たらさっさと戦場へ向かうべきである。が、その後何日も安土に留まり、吉田兼和と会ったりし、領地を召し上げられるという噂を耳にしてそれを信長に確認に行ったり、……とぐずぐずしていて動こうとしない。信長ならずとも、この愚図の光秀には腹が立つ。また、料理の味がちょっと薄いだけで怒鳴りつけた信長が、肝心の戦支度に取りかからない光秀を叱らないのも不思議である。
  • 倫(光秀の娘)が登場し、光秀から(新しい)婿殿はどうじゃ、と訊かれるシーンがあるが、誰と結婚したのかは明かされない。

配役

  • 家康がいきなり黒かったなー。このドラマの登場人物は、ほとんど演技が一本調子で、それは脚本・演出のせいかとも思っていたが、こんなに「腹で何を考えているかわからない」曲者は初登場だ。喋り方はゆっくりと落ち着いているが、不気味で、恐ろしい。寺尾聰の、役者としての素晴らしさを改めて実感した。強いて文句を言えば、信長(役の江口洋介)よりはるかに年長の役者をアサインしたことだ。本来、この時代の家康は、もっと若く、もっと軽かったはずなのだ。

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