窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

今年のハイライト/「軍師官兵衛」第28話「本能寺の変」

出演

  • 柳下大(小寺氏職)←政職の息子、幼名いつき
  • 須賀貴匡(辰蔵、長谷川宗仁の家臣)

粗筋

本能寺の変勃発。明智勢が大挙して信長を襲う。信長勢も奮戦するが多勢に無勢。本能寺に火が放たれ信長は喉を切って自死を遂げる。

播磨で高松城を囲んでいる官兵衛のもとに長谷川宗仁からの文が届く。使者は辰蔵。信長の死を知った官兵衛は動揺するが、ある決意をする。

その後、秀吉に信長の死を伝える。号泣する秀吉に官兵衛が言葉をかける。

「分かりますか? 分かりますか? 分かりますか? 殿のご運が開けたのですぞ。開けました。ご運が開けました。今は亡き竹中半兵衛様の思いをお忘れか? 半兵衛様は殿が天下に名乗りを上げるのを待ち望み、それがしが軍師で支えるよう言い残して逝かれました。今こそその時でございます。上様の死を毛利に悟られる事なくすぐさま京に引き返し、誰よりも早く謀反人・明智光秀を討つのです。それこそが亡き上様のため、そして、天下のためでございます!」

官兵衛、深夜に恵瓊を呼び出し、早急に和議を結びたいと申し出る。今なら本領安堵する、と。

雑感

これまでの中で一番面白い回だったのは間違いない。

本能寺での活劇はそれなりによく出来ていた。信長が獅子奮迅の活躍だが、最初は矢で、弓の弦が切れると槍で、槍が折られると大刀で、と少しずつ武器のレベルが下がって行く演出はうまかった。もっとも、どの武器も破壊力に差がないという欠点もあったが(そのため追い詰められていく感があまりなかった)。

本能寺には濃姫が泊まっていた。信長は「逃げろ。光秀も女には手荒な真似はすまい」と言ったが「どこまでも上様のおそばに」と言い放ち、戦いに加わる。これが強い強い。弓を取っては敵の鉄砲隊を何人も撃ち、最後は小刀で大の男を何人も倒していく。なんともカッコいい濃姫で、僕は本作で内田有紀を起用した理由が初めて理解できた。これまで濃姫はこれといった見せ場もろくなセリフもなく、内田有紀の無駄遣いだと思っていたのだが、このアクションシーンは内田有紀でなければ務まらない。最後の最後にこのアクションをさせるがためのお濃=内田有紀だったわけですね。

森蘭丸もよかったなあ。「上様! ここは我らにお任せを!」って、任せられるような余裕のある状態じゃなかったけど、だからこそ、早く引っ込んでくれないと、いつまでもは持たない。もちろん逃がすことを考えていたわけではないだろう。信長が敵の刃でやられるようなことがあってはいけない。信長に相応しい死を、それができる時間を確保するために、今自分がここで死ぬことにいささかの躊躇も感じていない覚悟の決まった顔だった。信長の側近ということで、宿老たちに偉そうな言動に及ぶこともあったが、この覚悟があってこそだったのだね……と、短いけれども極めて印象的な存在だった。こういう、蘭丸のような存在に弱い(今も、この文章を書いているだけで涙腺が……)。

信長、本能寺ときたら敦盛なわけだけど、以前江口洋介の舞った敦盛があまりにひどかったためか(?)ここでは謡わず、舞わず、歌詞を読み上げるだけ。この修正は評価されるべき。実際、最後にお濃と睦言をかわすために時間を使ってしまったから、さらに舞っている時間はなかっただろう。

ただし、弥助が出てこなかったのは拍子抜けした。本能寺で出てこなければ二度と弥助が登場することはないわけだが、だったらなんで25話で弥助を出したのか? 振りだけあって回収のない、不思議な脚本だ。

一方の播磨だが、官兵衛は政職と再会する。瀕死の病人で、見舞いに行った官兵衛の目の前で行きを引き取る。なんで今さら政職? と疑問の声もあるようだが、政職というより氏職のことを回収しておこうということだったのだろう。政職の死後、官兵衛が氏職の面倒を見たのは史実のようである。

本能寺の変を知った官兵衛が秀吉に告げるシーン、正直言うと秀吉の態度があまりにも子供じみていて、とても数年後の天下人にはおもえないのだけれど、官兵衛のセリフはさすがに力がこもっていた。岡田准一はこのセリフが言いたいがためにこの役を引き受けたのだそうで、ここ一週間くらい、そういう記事があちこちに踊っていた。どこまで本当かはわからないが、確かに迫力のあるセリフだった。

しかし、その後の恵瓊との深夜の密談、毛利にだけは知られてはならなかったはずだが、なぜバラしたか。

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