異色の快作「イン・ザ・ヒーロー」

こんな面白い邦画は初めて! ってわけでもないけど、最近観た邦画の中では出色の出来。

題名イン・ザ・ヒーロー
監督武正晴
出演■下落合ヒーローアクションクラブ(HAC)/唐沢寿明(本城渉、HAC代表/ドラゴンレッド)、黒谷友香大芝美咲、HACメンバー/ドラゴンブルー)、寺島進(海野吾郎、HACメンバー/ドラゴンピンク)、日向丈(森田真澄、HACメンバー/ドラゴングリーン)、草野イニ(真鍋満、HACメンバー)、他
■映画関係者/福士蒼汰(一ノ瀬リョウ、若手人気俳優)、小出恵介(門脇利雄、一ノ瀬リョウのマネージャ)、イ・ジュニク(スタンリー・チャン、ハリウッド映画「ラストブレイド」監督)、加藤雅也(石橋隆生、「ラストブレイド」日本側プロデューサー)、松方弘樹(本人役)、他
■家族関係/和久井映見(元村凛子、本城渉の元妻/薬局経営)、杉咲花(元村歩、本城渉の娘)、他
公式サイト映画『イン・ザ・ヒーロー』絶賛★上映中
制作日本(2014年9月6日公開)
時間124分
劇場TOHOシネマズ日本橋

内容

本城渉はこの道25年のスーツアクターブルース・リーに憧れ、いつか顔を出して映画に出演する、という夢を持ちつつ、今日もドラゴン戦隊の中の人や、格闘ゲームのCGのモデルなど、精力的に仕事をこなしている。ある時、役者としてのご指名がかかり、喜んだのもつかの間、お偉いさんからの一言で、若手人気俳優・一ノ瀬リョウにその座を奪われてしまう。

その上頼み込まれて、一ノ瀬リョウのアクション指導をすることになる。当初は生意気な一ノ瀬を嫌っていた本郷だが、一人娘が一ノ瀬の大ファンであることが判明。さらに、接する時間が長くなるにつれて、一ノ瀬は一ノ瀬で大きな夢があり、それに向けて必死になっていることがわかり、だんだん好感を抱くようになる。

この一ノ瀬が出演したいと願い、オーディションを受けていたハリウッド映画「ラストブレイド」は、監督が独自のこだわりから、ワイヤーもCGもなしで撮影したいと言い出し、あまりに危険なため、出演予定のアクション俳優が役を降りてしまうという事態に。そして本郷に出演オファーがあった。危険なアクションに周囲は反対するが……

雑感

映画の出来については言及しない。この作品を観て、いくつか気になったことがある。

その1

ウルトラQ」に登場したケムール星人は、細身の長身で独特の走り方をする。あれは「ケムール走り」といって幼い頃、真似をするのが流行った。そのスーツアクターを務めた古谷敏は、次作「ウルトラマン」ではウルトラマンの中の人に抜擢される。スペシウム光線を放つ時の腰の入った前傾姿勢や、指先を少し反らせるようにピンと伸ばしてクロスさせるポーズは、歴代のウルトラ戦士の中でも一際カッコいいもので、古谷はスーツアクターとして日本テレビ史上に燦然とその名を残したと言える。こういうことは目標にならないのだろうか?

古谷自身、次作の「ウルトラセブン」でもウルトラセブンの中の人を期待されながら、顔の出ない役を続けることに疑問を感じ、顔が出る役がやりたいといってウルトラ警備隊のアマギ隊員になっている。僕はアマギ隊員は好きだが、率直に言って役者としてはあまり注目されず、この作を最後に役者を引退している。こうしたことを含めて、スーツアクターとして一流になることを夢見る若い人が大勢いても不思議ではないと思うのだが、そうではないのだろうか。

その2

唐沢寿明が若い頃、スーツアクターだったのは有名だが、寺島進も、スーツアクターだった過去があるそうだ。となると、大勢ではないかも知れないけど、スーツアクターから普通の役者になり、一流として認められていく人もいるわけである。劇中では、そういう人が一人もおらず、一人でも道を示さないと、スーツアクターをやる人がいなくなる、本城が危機感を持っているが、これは事実に反するのではないだろうか。

その3

一ノ瀬リョウ君は自分が出演することになったドラゴン戦隊の映画を「ガキ向け」(ジャリ、って言ったかな?)とバカにしていたけど、これがわからない。亡き児玉清さんのエッセイにはこんな話が出て来る。……児玉さんが若い頃は、怪獣ものやSFヒーローものなどは「子供向け」と一段低く見る風潮があり、喜んで出演する人は少なかった。誰だって(出演できるなら)青春ドラマ、恋愛ドラマに出たいと思っていた。が、当時人気を博したそうしたドラマも、今では知る人もほとんどいない。ところが児玉さんの孫は、ウルトラシリーズの怪獣の名前を全部言えるそうで、こんな風に何十年にもわたって語り継がれるとは想像もしなかった、と――

そう、僕らはウルトラマンが、ウルトラセブンが、仮面ライダーが、ゴレンジャーが、生誕後何十年も経ってもいまだに人気が衰えず、続編や後継作品が次々に発表され、親子二代にわたって(もしかしたら、そろそろ三代にわたって)見られ、語り継がれているのをよく知っている。「ドラえもん」だって「くれよんシンちゃん」だって、作者が死んでもなお続編が制作されているのを知っている。役者としてのキャリアを考えたら、子供向けの戦隊ヒーローものに準主役で呼ばれるというのは、大きなことだと思うのだ。

だからリョウが戦隊映画をバカにする理由がわからないのだが、現実には子供向けの作品は今でも一段低く見られていたりするのだろうか? でも今年一番のヒット作品は、明らかに子供をメインターゲットにした「アナと雪の女王」だしな……

その他

  • 元村凛子が母親に「いくつになった」と訊かれて「38になりました」と答えるシーンがあるが、失笑してしまった。それはサバの読み過ぎでしょうと(和久井映見は43歳)。

配役

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