窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

「カムカムエヴリバディ」(12)/第三週-火

放送日

  • 2021年11月16日

概要

美登里は安子をじっと見つめ、たちばなの娘さんね? と確認すると、注文した品を持って帰ってくれ、代金は払うと言ってお札を何枚か安子に渡し「二度と稔に近づかないで」と言い放つ。

放心状態の安子は、家族には配達を間違えたとだけ伝える。心配した金太が話しかけても「私が間違えたんですごめんなさい」と繰り返すだけ。

「稔さんに会えた?」と訊いてきたきぬちゃんに首を振り、もう連絡はないと思うと答える……。

事情を知ったきぬは、ディッパーマウスの前で張り込み、稔を見かけると声をかける。このお金は安子ちゃんが困っていたので、私が預かりました、私が稔さんと会うことは安子ちゃんは知りません、返します、さようなら。そう冷たく言って帰ろうとするきぬを稔が呼び止める。意味がわからない、事情を説明してくれと。「そうやねえ」と答えたきぬは、メロンソーダを一気に飲み込む。

きぬから聞いて事情を知った稔は、慌てて家に帰り、「いったい何の真似ですか!」と美登里を怒鳴りつける。美登里はしれっと、「あの子はお金目当てなのよ」と動じない。言い争いをしているところに千吉が帰宅。事情を察した千吉は、美登里に「つまらないことをするんじゃない」と叱りつける。

「父さんと母さんがなんと言おうと、僕は彼女と結婚します!」と宣言する稔に、千吉は「そこまで言うなら好きにすればいい」と言う。お許しが出たかとほっとする稔に、千吉は言う。それなら、この家を出て、雉真の名を捨てろ。菓子屋の婿になれと。予想外の話に戸惑う体の稔だが、「それしか方法がないのなら」と肯定すると、千吉が叱る。甘ったれたことを言うなと。菓子屋にせよなんにせよ、商売というのは大学で勉強したからと言ってどうこうなるような生易しいものじゃない。雉真の名を捨てて、お前は惚れた女をどうやって食わせていくつもりなのか。

自分の甘さに打ちのめされた稔は、安子に会う。事情を説明しようとするが、言葉が出ない。そして、「戦争が終わったら、僕が大学を出たら……」と言う稔に、安子は「そう言ってくれるのは嬉しい。でも、そもそもが間違いだったんです。英語の番組が終わったら英語を忘れてしまった。稔さんのことも、忘れられます」と言って、稔からもらった英語の辞書を押し付ける。稔は呆然と立ち尽くす……

雑感

先週までは、稔のカッコよさ、誠実さをこれでもかと描き、安子はもちろん、橘の家の人たちも、視聴者も、理想の男性だと稔に惚れ込んだはずだ。それが、今週に入って、稔の甘さ、情けなさが浮き彫りになっている。持ち上げておいて落とす。藤本有紀は、なんて残酷な人なのであろうか(褒めてます)。

美登里は怖かった。安子に対して怒鳴ったり騒いだりするのではなく、静かに、冷たく話すところが、より美登里の気持ちを際立たせていた。恐らく美登里は資産家の娘で、千吉が「政略結婚」したのだろうが、これまでにも何かあると金の力で解決を図ってきたのだろう(あるいは、そうする親を見てきたのだろう)。商家の娘を見下すところも筋金入りだ。

そして安子の気をくじく最も効果的な方法を(本人がそれと意識していたかどうかはともかく)採った。それは「和菓子を突き返すこと」だ。安子のアイデンティティは「橘の餡は絶品」である。それを貶されることは、自分の悪口を言われるより堪えたはずだ。まあ、人としてやってはいけないことだと思うが。

千吉は、さすがに会社の経営者ということか、あまり差別感情もなく、フェアな人という印象を受ける。手切れ金を渡そうとした妻を叱り、菓子屋だって経営は大変だ、大学で成績がよくても通用する世界ではないと、商家に対してもリスペクトを見せる。

稔はしっかりした青年だが、親の庇護のもと、ぬくぬくと育ってきたボンであることは間違いない。安子に英語の辞書をプレゼントしたのも、ディッパーマウスのコーヒーをご馳走できたのも、急行に飛び乗ることができたのも、すべては雉真の家から与えられた豊富なお小遣いがあってのこと。自分で稼いだお金ではない。確かに父の指摘するように、「甘い」し「覚悟ができていない」のだ。まあ、大学二年生の若造にそこまでを求めなくてもと思うし、お前にできるのは会社の利益になる女子と結婚することだけ、というのもひどい言い方だが、ここで(稔が大東亜銀行の娘と結婚して融資を受け)ビジネスを拡大すれば、稔が後を継いだ時に好きな商売ができるだけの資金が残せる、というのは本音だろう。これは暗に、その時に安子を囲えばいい、と言っているのだろうか?(当時はそう珍しいことじゃないしな)

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