窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

「カムカムエヴリバディ」(109) あと4回!

第23週「2003-2025」(火)

放送日

  • 2022年4月5日

登場人物

概要

錠一郎とるいが控え室で準備を進める中、ひなたは弟の桃太郎と一緒に、ラジオでアニー・ヒラカワのインタビュー番組を聴くことに。磯村吟からの質問に通訳を介して英語で答えていたアニーですが、途中から突然日本語を話し始め……(NHKオンデマンドの解説より)

アバンでは推定57歳のひなたが、「KIBINOJO」の企画書を書き、外国人とオンラインミーティングをしているところと、NHKの小川未来と打ち合わせをするシーンが描かれた。ひなたがキャスティングディレクターをしていること、40を過ぎて留学したこと、そのことが何かの雑誌に大々的に紹介されたこと(なおその雑誌には、ブン・イガラシというアクション監督のことも華々しく紹介されていた)。そして未来は小川澄子の孫らしいこと(ひなたは澄子を知らないが視聴者はみんな知っている)。未来はひなたに、2024年に開講するNHKの英語講座の講師にひなたを起用したいと語る。

雑感

アニーがラジオで衝撃の告白。シアトル生まれの日系人としてきたが、日本生まれの日本人であること。1939年(昭和14年)に大阪にいて、のちに夫になる人と黍之丞映画を見たこと。そして……。そのラジオを聞いていたるいは「お母さんだ」と悟り、ひなたはアニーをつかまえるべく走る……

というのが本編のあらましで、涙なくしては見られない展開である。

アメリカでは雉真安子であることを捨て、新たな人生を歩むつもりで名前も経歴も変えたのだろうが、稔と一緒に見た映画のことを訊かれては、ごまかすことはできないと思ったのだろう。かつてロバートに英語でたぎる思いをぶつけたように、外国語の方が本音を話せることもある。今の安子にとっては日本語は第二外国語だからこそ、話せたということもあるだろう。標準語から、るいの話をするに及んで岡山弁に変わっていくところが見事。るいの名を口にする時の絞るような声も見事。

なのであるが、自分としてはいろいろと気に入らなかった。

アニーが登場した時から、安子か? 安子なのか? と次々と思わせぶりな態度を取らせ、結局安子でした、では何のひねりもない。裏の裏をかいたつもりなのかも知れないが、彼女が安子だというなら初めからわかっていたことで、詰まらない結論だなあと思う。

控室でひなたがラジオを聞くのも唐突である。この部屋はトミーら一行の専用で、他の出演者はいないのかも知れないが、ひなたは出演者でもなければスタッフでもない、出演者と親しいだけの部外者である。それが、ジャズフェスとは何の関係もない番組を聞き始めるのは、普通に考えればずいぶんと迷惑なことなのではないか。「すみません、映画の番宣をするので、ここだけ聞かせてもらっていいですか」と断わってから聞くとか(でもアニーの出演は知らなかった様子)、るいが極度に緊張しているのを見て、「おかあちゃん、いつものラジオでも聞いて落ち着き」と言って点けるとか、もう少し必然性がほしかった。

ジャズフェス自体は(出演者が多いせいで)昼から開始しているらしいが、トリを務めるであろうトミーらが、なんでこんな早朝から会場入りしているのかも謎である。夕方に会場入りすれば十分のはず。ここからアニーに会いに行き会場に連れてきて出番に間に合う時間、を逆算して決めただけのように思えてならない。

こうした杜撰さが目に付くため、るいがアニーのラジオでの告白を聞くことも、ご都合主義だと感じられてしまう。

以前、安子が再登場するなら演じるのは上白石萌音以外あり得ない、と書いたが、それは訂正する。安子が安子のままである前提で、例えば宮崎美子(のような、上白石萌音に似た役者)を使うのはおかしいと思うのだが、アニーは安子とは別人だった。本人も別人になろうとしたし、実際、渡米して50年以上経つのだから、安子の面影がどこにもなくても当然。だから、敢えて安子を感じさせない森山良子の起用は正解であった。

重要な部分が演じきれていない、本職の役者を使うべきだったという意見も散見するが、僕は「この人、役者の経験があるのか?」と驚いたほどうまく演じていたと思う。それに、あと三日、森山良子を起用した理由がわかるシーンがあるのではないだろうか?

「2003-2025」というのは、時系列にそって進むものと思い込んでいたがどうやらアバンで2022-2025を進めるのか? とすると、本編ではこのクリスマス・ジャズフェスティバルがクライマックスになる? この進め方は斬新だ。



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