窓の向こうに

月に数回映画館に通う程度の映画ファンです。自分が見た映画やドラマの感想を書いています。

「大河への道」

題名大河への道
原作立川志の輔
脚本森下佳子
監督中西健二
主題歌「星路」(玉置浩二
出演■現代編:中井貴一(池本保治、千葉県香取市役所総務課主任)、松山ケンイチ(木下浩章、総務課員)、平田満(和田善久、総務課員)、田中美央(吉山明、総務課員)、和田正人(各務修、総務課員)、溝口琢矢(山本友輔、総務課員)、岸井ゆきの(安野富海、総務課員)、北川景子(小林永美、観光課課長)、立川志の輔(梅さん、ラジオ相談室)、西村まさ彦(山神三太郎)、草刈正雄(千葉県知事)、橋爪功(加藤浩造、脚本家)
■過去編:中井貴一高橋景保)、松山ケンイチ(又吉、高橋景保の助手)、平田満(綿貫善右衛門、測量隊員)、田中美央(吉之助、測量隊員)、和田正人(修武格之進、測量隊員)、溝口琢矢(友蔵、測量隊員)、岸井ゆきの(トヨ、下女)、北川景子(エイ、伊能忠敬の三番目の妻)、立川志の輔(梅安、医師)、西村まさ彦(神田三郎、幕府の隠密)、草刈正雄徳川家斉)、橋爪功源空寺和尚)
制作日本(2022年5月20日公開)
時間112分
劇場イオンシネマ港北NT(スクリーン5)

粗筋

千葉県香取市。市役所の総務課に勤める池本保治は、市の観光振興策を検討する会議で意見を求められ、苦し紛れに大河ドラマ制作を提案。思いがけずそれが通り、郷土の偉人、伊能忠敬を主人公とする大河ドラマの企画が立ち上がってしまう。ところが企画を進めるうちに、日本地図を完成させたのは伊能忠敬ではなかった!? 彼は地図完成の3年前に亡くなっていた! という驚きの事実が明らかに……。江戸と令和、2つの時代を舞台に明かされていく日本初の全国地図誕生秘話。そこには地図を完成させるため、伊能忠敬の弟子たちが命を懸けて取り組んだとんでもない隠密作戦があった――。(公式サイトより)

感想

いいものを見た、と思った。邦画の面白さを堪能した。

二つの物語が流れていく。ひとつは、市の観光事業振興のため、大河ドラマを作ってもらったらどうかと奮闘する人たちの物語。もうひとつは、その題材となる、初の日本地図を完成させようと奮闘する人たちの物語。こんな話なら書けると、脚本家の加藤浩造の提示したあらすじを演じて見せるという入れ子構造になっている。また、主要な登場人物はすべて、現代編と過去編を一人二役で演じている。その二役は、立場は似ているが、性格設定は、草刈正雄松山ケンイチのように一致する人もいれば、中井貴一北川景子のように正反対の人もいる。このやり方は見事だと唸らされた。

過去編はユーモラスな描写もあるが、基本的にシリアスな展開で、安っぽい言葉を使えば号泣必至。一方、現代編は基本はコメディであり、事実、何度も笑わせられた。ただし、普通に考えたら、まず無理だろうと思われることを、必死でやり遂げようとするという点で同じ物語になっている。この共鳴のさせ方もうまい。さすがは森下佳子だ。

強いて言えば、中井貴一はプロデューサーに徹し、主演は遠慮した方が良かったのではないかな。「後進を育てる」という目的にもかなう。60歳の中井は、過去編において「若様」と呼ばれるのはいささか滑稽だし、現代編においては、市役所は定年を過ぎた年齢である。37歳の松山ケンイチも、粗忽者を演じるには老け過ぎてはいないか。松山に主役をやらせ、松山の演じた木下および又吉は、もっと若い役者にやらせた方がよかったのではないだろうか。もっとも池本は、55歳から測量を開始した伊能忠敬を模しているから、あまり若い人でもいけないのか。

余談

本当に大河で伊能忠敬を取り上げてはどうか。加藤浩造は「伊能忠敬を主役の大河はできない」と言っていたが、伊能忠敬の波乱万丈の人生は普通のドラマでは描き切れまい。ぜひ50回かけてじっくり描いてほしいもの。35回くらいで死んでしまい、あとを弟子が受け継ぐ……でよいのではないか。

(2022-05-26 記)


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