浜辺美波の司会はとてもよかった。橋本環奈もよかったが、二人出る意味がわからない。どちらか一人で十分ではないか。最近の紅白歌合戦は、視聴率稼ぎのためか、なんでも大勢出しておけばいいという空気を感じるが、一人分が薄くなるだけだ。長丁場だから、何人かいないと持たない、というのはあるだろうが……
自分の目当てはなんといっても伊藤蘭。1977年以来46年ぶりの出場。46年ぶりとはいっても本人が長く歌手活動をしていなかったからであるが、2019年にソロ歌手としてデビュー、以来アルバムを二枚出し、精力的にライブ活動も行なっているので、出場は順当と思うが、歌ったのがキャンディーズメドレーだったのはがっかりだ。ソロ歌手・伊藤蘭としての手持ちの歌を歌ってほしかった。まあ伊藤蘭自身は大人だから、自分が何を期待されているのかもよくわかっているだろうし、嫌がらずに受けたのだと思うが。
特別企画「テレビが届けた名曲たち」に薬師丸ひろ子と寺尾聡が出演するのは知っていたが、ポケットビスケッツ&ブラックビスケッツが25年ぶりに復活したのは驚いた。懐かしいといえば懐かしいが、千秋の歌唱力は悲しいほど衰えていた。加齢のせいもあるが、現役ではないことが大きいのだろう。ポケットビスケッツはバラエティの企画が生んだグループだが、音楽で生きていく気はない(才能もない)内田やウドと、歌手として希代の才能を持った千秋のすれ違いが当時から哀れだった。バラドル扱いはいいから、もっともっとあの歌声を聴かせてほしかった。伊藤蘭や、そのあとに歌った薬師丸ひろ子が、年齢を感じさせない歌唱を聴かせてくれたので、よけいに目立った。それにしても伊藤蘭は、もう68なのに、なんで20代の時と同じ声が出るかね。
もうひとつの目当ては、あいみょんの「愛の花」だ。もう時代はブギウギで、らんまんのことは記憶の彼方だったが、歌を聞いたらたちまち当時の感覚が蘇ってきた。司会の浜辺美波も涙ぐんでいた。これは演技ではないだろう。それだけ「寿恵子」に入り込んでいた証左だろう。