感想
久しぶりに緊迫と迫力のドラマで、高得点を与えたい。だから、たった8話で終わりとはあまりにも物足りない。スペシャル版はまだDVD化されていないようだし……。
「5年前の事件」は、次のようなことだったらしい。
真里谷は一般人2人を殺した後、仲間と立て籠もり、桐沢・木崎・墨田・長谷部の交渉班が対応に当たるが、交渉は失敗、機動隊が突入し真里谷以下を確保するも機動隊員一人が死亡。この機動隊員がウサギ玲子の父であった。真里谷に殺されたのだ。
と、思われていたのだが、実は一般人を殺したのは真里谷の仲間であって、真里谷は友情のため、罪をかぶったもの。つまり、3人を殺した凶悪殺人犯と思われていた真里谷は、一人も殺していない。また、玲子の父は、真里谷に殺されたのではなかった。
真里谷の仲間が一般人を殺した拳銃は、とある刑事がうっかり置き忘れたもの。警察の不祥事であり、高林警視正はもみ消すことにした。玲子の父は、公開すべきだと考えていたため、どうやらそれを危険視した内部の人間に、事故を装って始末された可能性が大だ。
片山管理官は、犯人から回収した拳銃を現場で別の拳銃にすり替えるなど、もみ消しに協力し、事件の真相をうすうす知っていたが、これまで沈黙を守って来た。交渉班も、現場で拾った音声から、玲子の父を撃ったのは真里谷ではないとほぼ確信を持ちながら、これまた沈黙を守って来た。
真相を知っているのは恐らく高林警視正のみで、他の人は詳しい事情は知らないながらも、触れてはいけない事件として蓋をしてきた。そこへウサギがやってきて「あの事件の真相を知りたい」などと言いだして周囲の反発を買っていたわけだ。
しかし、これに関してはわからないことだらけで、すっきりしない。
真里谷が仲間の行為をかばって自分が罪をかぶったのはわかるが、玲子の父を撃ったのは恐らく警察の人間だろう。それをかばういわれはないはずなのに、なぜ自分が撃ったと認めたのか。
この事件は「交渉が失敗し、警察の死人を出した」ことで交渉班の汚点とされ、上司の不信をかう要因になっていた。が、交渉班としては、いわれのない汚名をきせられたわけで、なぜ名誉挽回で真相の解明に乗り出さなかったのか。仮にどこからかストップがかかったとしても、不名誉に感じる必要はなかったはず。また、玲子の父の死の真相を知る高林警視正は、それを理由に交渉班を蔑視する必要はないはずなのに、なぜ交渉班を目の敵にしているのか。
「5年前の事件」の真相に気付きかけた玲子が高林警視正に詰め寄ろうとすると、桐沢がそれを止め、「今は耐えろ!」という。なぜこんなことを言ったのか。当初は、実は桐沢も高林に内緒で真相解明に動いており、ここで玲子に騒がれては台無しになるから……かと思ったが、そうではなかった。なぜ玲子に我慢を要求したのか、理由が不明。
片山は最後、高林のたくらみを阻止する方向で動くが、彼は第一話でも、自分に都合の悪い証拠は平気で隠滅をはかる人間。桐沢も同じ。もともと腐っているのだ。その片山が蓮見に、「人間として正義を全うしたいか、警察官として出世したいか」と訊く場面は、ちょっと似合わない気がした。その上、蓮見がどう答えたのか不明なまま。
留美子が入院中の甘利を見舞い、真相を知ってなお「あなたは上から期待されているってことでしょ、出世する人は好きよ」といってキスする場面はむしろわかりやすかった。いい子チャンばかりではツマラナイ。
澪の変化は、ちょいワルだった女が、本気で人を好きになって変わった。でも、恋する相手は、自分を利用しようとするだけの凶悪犯だった。というだけの設定だったようだ。
全体として、「踊る大捜査線」「羊たちの沈黙」「アンフェア」などを彷彿させる場面設定・筋書きがあちこちにあったのはアレだが、ここまでハードなドラマは僕はあまり知らない。ぜひ続きが見たい。