名探偵は格闘技の達人「シャーロック・ホームズ」

今年8本目。今年は同じ映画を何度も観ることが多いが、重複を除いても5本目。過去3年間で観た映画は36本、月一ペースであったことを考えると、今年は多い。それでも、「恋するベーカリー」とか「バレンタインデー」とか「しあわせの隠れ場所」とか、見逃して残念に思っている映画は何本もある。

題名シャーロック・ホームズSherlock Holmes
監督ガイ・リッチー
出演ロバート・ダウニー・Jrシャーロック・ホームズ)、ジュード・ロウジョン・ワトソン)、レイチェル・マクアダムスアイリーン・アドラー)、エディ・マーサン(レストレード警部)、ケリー・ライリー(メアリー・モースタン)、ジェラルディン・ジェームズ(ハドソン夫人)、マーク・ストロング(ヘンリー・ブラックウッド卿、映画オリジナルキャラ)、他
公式サイト映画『シャーロック・ホームズ』オフィシャルサイト
制作英国(2010年3月12日公開)

いわゆる小説の映画化ではなく、オリジナル・ストーリーである。小説も、後年の作家が膨大な「ホームズもの」のオリジナル・ストーリーを発表しているが、それらは一般に「ワトソン博士の未発表手記が発見された」という体裁を取っている。そう明示されていなくても、そういう前提で書かれている。つまり、正典(キャノン:ドイル自身が書いた60編のホームズもの)に連なる作品という位置づけである。

この映画は、それとは違って、パラレルワールドと考えた方がいいのだろう。確かに、舞台はビクトリア朝時代のロンドンであるし、ホームズ、ワトソンをはじめ、おなじみのキャラクターが次々に登場する。が、ワトソンが婚約者のメアリー・モースタンをホームズに紹介し、その時が初対面だったというのだから、「四つの署名」事件の設定は無視されている。そもそもホームズやワトソンのキャラクター(性格設定)が原作とはまるで違う。

まるで違うけれど、意外にマニア心をくすぐる設定が細かいところに施されている。ワトソンが来客と話をしていると、突然音と振動に見舞われる。驚く客に、「友人が絵をかけるため、壁に釘を打っているのでしょう」とごまかす。が、この時何が起きているのか、僕は半ば想像がついた。客が帰ったあとホームズの部屋に入ったワトソンは、壁に拳銃で「VR」と撃ち抜かれた跡を発見する……。このVRは「泣かせるエピソード」のひとつである。

原作よりホームズははるかに自堕落で情けない性格になっている一方、ワトソンは聡明で、しっかりしていて、強い設定になっており、結婚を機にベーカー街を出ようとする彼にハドソン夫人が「あなたがいなくなると困ります」と訴えるシーンもある。

僕はホームズ物が好きだが、シャーロキアンというより、どちらかといえばワトソニアンである。そして、ワトソンファンは世界中に多いはずだ。ホームズよりもワトソンの聡明さを強調した方が、視聴者は満足すると思われる。僕自身がそうだし。*1

ミステリーものというよりはアクションものに分類されるが、荒唐無稽に思われた犯罪者の手口が、超自然の力でもなんでもなくただのトリックだと最後に暴かれるところは爽快だ。もっとも、死刑が執行された後も実は生きていた、というのは、いくらなんでも無理だろうと思うのだが。

リンク

*1:ホームズもののパスティーシュでベストセラーとなった「シャーロック・ホームズ氏の素敵な冒険」(ニコラス・メイヤー)は素晴らしい作品だが、この作品の優れている点のひとつは、ワトソンが(特に前半で)非常に素晴らしい男として描かれており、ホームズ自身が「ワトソンに命を救われた」と認めるところにあると考えている。みんなワトソンが好きなのだ。